これについて先のゲイリー・シルバーグ(Gary Silberg)氏は、「これは、今日の自動車メーカーにとって極めて複雑な問題を生じさせます。
なぜなら、自動車の開発において、従来の車種区分の方法論のみによって市場を区分化する手法では、すべてのユーザーのニーズを満たすことはできないからです。
百を超えるアイランドから得られる数十億にも上る個々の移動データの中から、適切な製品ポートフォリオを特定することのできる自動車メーカーだけが、将来、市場で成功を収めることになるでしょう」と畳み掛けている。
こうした調査により浮き彫りになった169のアイランド市場と、完全自動運転車並びに新たなモビリティサービス(MaaS: Mobility-as-a-Service)の誕生は、自動車市場の様相を一変させ、セダンを好んでいた層を中心に、自動車を所有したいという消費者の願望を低下させる。
この消費行動の変化をKPMG米国のインダストリアル・マニファクチャリング部門の戦略リーダーを務めるトム・メイヤー(Tom Mayor)氏は、「自家用セダンの所有意識の低下は、自動車メーカーが予想した以上に深刻な破壊を市場にもたらすことでしょう。
結果、複数の自動車メーカーが将来工場を閉鎖し、セダンの生産から撤退する可能性は極めて高いと考えられます。
自家用車を所有しない新たな消費者ニーズに応えるクルマが必要
こうした大規模な変化の結果、現在、米国市場に年間80万台以上のセダンを供給している自動車メーカー10社が、将来3~4社にまで減少すると我々は予測しています。
自動車産業のプロフィットプール(市場全体の利益の総和)は変化の過程にあります。
この変化に対して自動車メーカーにとっての好材料は、1兆ドル規模の新たな市場がモビリティを中心として生まれつつあるということです。
この潜在的な市場へのドアを開ける鍵は、アイランドごとの消費者のニーズを個々の移動ごとにより深く理解し、複数のアイランドにわたってデータを集計して規模の経済を見出すことです。
その上で自家用車を所有せず、配車サービスなどを移動手段として利用する消費者の移動ニーズに応える、新しいクラスの自動車を開発することに掛かっています」と結んでいる。
KPMGは、独立した別の組織として活動する国際団体
ちなみにこの調査を行ったKPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する国際組織である。
世界154ヵ国のメンバーファームに197,263名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しているが、KPMGネットワークに属する独立した個々のメンバーファームは、スイスの組織体であるKPMG International Cooperative(“KPMG International”)に加盟している。
つまりKPMGの各メンバーファームは、法律上独立した別の組織体としてそれぞれの地域で活動している。
これに倣い日本のKPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称として活動している。
その内容は、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる7つのプロフェッショナルファームによって構成されている。
そうした日本におけるメンバーファームは以下の通りとなっている。有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人。( MOTOR CARS より転載 )