もとより二輪車というカテゴリは、エンジンフィーリングの魅力が四輪車より圧倒的に大きいため、これまではガソリンエンジンの開発能力に秀でた国内大手4社の独断場が続いた。
しかし今回、会見の登壇者が「電動化が進むと我々4社の優位性が脅かされる」と話すように旧来のガソリンエンジンから、持ち前のパワフル感が際立ち、製造コストも安い電動モーターへとパワーユニットが入れ替わる過程で、世界の勢力図が大きく塗り変わる可能性すらある。
実際、東アジア圏の新興国企業の台頭は特に目覚ましく、かつて本田技研工業傘下だった台湾メーカーのキムコは、電動スーパースポーツの二輪車「SuperNEX」を早くも商用化段階へと移しつつある。
加えて、今回とは直に比較の対象とはならないものの、かつての2009年、横浜で米・ベタープレイス社は「日産デュアリス」ベースの電気自動車を用いて大型バッテリーの着脱・交換システムを試行。
この試みは、大手企業や投資家から大規模な資金援助を受けて華々しくスタートしたものの成功せず、2013年5月に敢えなく会社を閉じている。
これを踏まえると大手企業の場合、一介のスクーターベンチャー企業としてスタートしたGogoroのように、まずは他社の力を借りるなりして小さく起業し、会社とサービスをじっくり育てていくという手段が取り難く、既に世界を制する存在となっている国内二輪4社の立場では、バッテリー着脱インフラへの挑戦はリスクが大きくなる。
つまり国内の大手4社による同じような取り組みであっても、既に4社が大規模量産車メーカーであるゆえに車両普及段階のインフラ整備で、地方の自動販売機並みの信頼感を保持する必要があるなど、コストの掛かる環境整備を求められる可能性が否定できないからだ。
投資規模が拡大すると、幾ら大手企業と云えども企業体力を奪う。そうした意味で、充電インフラ環境の整備コストで4社が協業するスケールメリットは活かせるだろう。
最後に代表幹事である本田技研工業・常務執行役員二輪事業本部長 の安部典明氏は「電動二輪車の普及には、航続距離や充電時間等の課題解決が必要であり、交換式バッテリーは有効な解決策と言えます。
お客様の使い勝手を考慮すると、交換式バッテリーの標準化や交換システムの普及が不可欠と考えています。
このコンソーシアムにおいて、まずは国内二輪4社で協働検討をすすめるとともに、この考えにより多くの方々に共感いただくことで、電動二輪車の利用環境が改善され、お客様の利便性を向上させる一助となればと思っています」とのコメントを残している。