自動車事故・災害時の損害査定に特化する英国のAIスタートアップTractable(トラクタブル)は3月26日、自動車の損傷画像から損害査定業務を自動化する損害保険会社向けの新AIソリューションを発表した。(坂上 賢治)
トラクタブルは英ロンドンのみならず、米ニューヨークに加え東京にも拠点を構え、先の2月13日には東京海上日動と連携。視覚査定AIを利用した深層学習機能を使って、保険金の支払いに繋げていく独自技術で日本でも話題を集めた。今回の同社の新ソリューションも、損害保険会社内の専門家が実施する査定業務の一部を自動化出来る能力を持つ。
具体的には、自動車の損傷画像を元に車両のどの部位が、どの程度損傷しているか判定し、修理方法や概算修理金額等を手早く算定する仕組みだ。これにより保険加入者は、自動車事故時に保険会社に連絡している最中にスマートフォンで損傷画像を送信するだけで、数分以内に全損などの判定結果が手に取るように判る。
なおこの新ソリューションは、日本国内を含めた世界規模で展開していく予定で、既に英国の損害保険会社Ageas社では2019年にトライアル実証を終えて事業フェーズとして実装されている最中にある。
また将来的には、損害保険会社だけを対象にするのではなく、自動車修理工場やディーラー向けに画像を元に、多様な見積作成業務の一部を自動化させていくソリューションとして拡張展開していく予定だとしている。
この仕組みは、画像認識機能に何百万枚もの自動車の損傷画像と事例分析から学ぶディープラーニング技術を活用しているところにある。これまでフランス最大のCovéa社、ポーランド第2位のTalanx-Warta社など世界中の大手損害保険会社と損害額累計1000億円以上の損害査定業務を査定してきた。
この新ソリューションについて英損保Ageas社のロビン・チャランド損害サポート担当役員は「Tractableの最先端のAI技術により、これまでの損害査定業務を見直すことで、事故時の保険加入者の顧客体験のみならず、弊社の損害査定業務に劇的な変化をもたらすことが出来ると実感しました」と利用による成果の多様性について話している。
一方、トラクタブル社のエイドリアン・コーエン共同創業者は「我々の新たなソリューションは、保険業界にとってブレークスルーになると考えています。AIにより損害査定業務の一部を自動化することで、損害保険会社に対しては生産性改善を、保険加入者に対しては新たな顧客体験を提供します。引き続き、最先端のAI技術により、事故で困っている人を支援したいと考えております」と結んでいる。