トヨタ自動車は11月7日、東京・水道橋の東京本社で2020年3月期第2四半期(2019年4~9月)の連結決算(米国会計基準)説明会を開催、売上高が前年同期比4.2%増の15兆2855億円、営業利益が同11.3%増の1兆4043億円、当期純利益が同2.6%増の1兆2749億円と「増収増益」になった発表した。中間決算で過去最高の売上高、当期純利益を上げた。昨年から投入したRAV4やカローラなどの新型車が日本だけでなく、北米、欧州などで好調な売れ行きを見せたからだ。(佃モビリティ総研・間宮潔)
年次決算時に「トヨタは大丈夫というのが一番危ない」と豊田社長が発言したことに触れる
決算説明会に臨んだ河合満副社長は「ベター、ベターの精神で取り組んできたことが、多くのお客様にトヨタの車を選んでもらえた。形になって表れた」と指摘、「少しは、我々が継続的に体質強化に取り組んだ成果が表れたと思う」と評価する一方、豊田社長が年次決算時に「トヨタは大丈夫というのが一番危ない」と発言したことに触れ、「大変革時代に立ち向かうために、危機感を共有し、価値観を向上させ、未来に向かってプロ集団をつくることが大変重要である」と指摘、改めて現場主義、徹底した原価改善に取り組む姿勢を強調した。決算の詳細は同席した近健太執行役員が説明した。
上期の連結販売台数は前年に比べ22万台多い463万9000台(前年同期比5%増)となった。日本では114万台(同10.6%増)、北米では144万6000台(同2.5%増)、欧州では52万4000台(同6.3%増)、アジアでは82万9000台(同2.2%増)、その他市場では70万台(同4%増)と増えた。グループ総販売台数(小売りベース)も同3%増の545万4000台となった。
ただ市場別営業利益をみると、日本が8278億円(前年実績に比べ761億円増)、北米が2226億円(同853億円増)、欧州が706億円(同87億円増)と共に増益を図ったが、アジアでは2307億円(同455億円減)、その他市場で473億円(同165億円減)となった。とくに中国事業は小売り台数が77万台と前年比12.2%増と好調だったにもかかわらず、営業利益は同13.5%減の785億円に低下し、元安による影響が大きかった。
減益を原価改善や営業面の努力などでカバーし、前期実績を1425億円上回る
営業利益の増減要因では、為替変動による減益要素を900億円とした。輸出入に伴う為替差損は対ドルで400億円、対ユーロで300億円、その他通貨で900億円と合計1600億円、また海外子会社の営業利益換算差で200億円の減益としたが、これを外貨建て引き当てなどにより圧縮した。他の減益要因には労務費の増加、研究開発費などを挙げ、1200億円の減益としたが、これを原価改善や営業面の努力などでカバーすることができ、前期実績を1425億円上回る1兆4043億円を計上した。
通期業績見通しは税引き前利益で増額としたほか、売上高29兆5000億円(前年実績比2.4%減)、営業利益2兆4000億円(同2.7%減)、当期純利益2兆1500億円(同14.2%増)とそれぞれ据え置いた。ただ前回見通しに比べ、営業利益は為替変動による減益影響が3500億円から3800億円に膨らむ見通しで、加えて労務費など諸経費も300億円増える見込みため、これらを原価改善や営業努力でカバーする方針だ。
なお通期の連結販売台数は、期初に比べ、5万台少ない895万台(前期比0.3%減)に下方修正した。日本は期初に比べ3万台多い224万台(同1.4%増)としたが、北米は269万台(同2%減)、欧州も103万台(同3.6%増)と期初見通しに据え置いた。アジアは163万台(同3.2%減)で期初に比べ10万台下方修正した。その他市場は136万台(同2.5%増)で2万台上積んだ。
「大変革時代の人づくり」で河合満副社長がスピーチ
現場たたき上げの副社長として2017年4月に就任し、今年4月から総務・人事本部長に就いた河合満副社長(71)は決算説明会で、「大変革時代の人づくり」でスピーチ、現在の取り組みを以下のように語った。
生産現場は毎日、何が起こるか分からない。設備故障や部品の欠品など、まさに現場は生きている。即断即決、時には人海戦術でバックアップしてきた。トヨタは問題が起きると、まずラインを止める。問題を顕在化し、原因を追究し、再発防止に努め、カイゼンを繰り返していきている。今日のベストは明日のベストではない。毎日進化して欲しいと訴えてきた。次に新しい大きな波がきても、このカイゼンの精神がそれに順応できる体力となる。
現場は生産性、原価目標といった分かりやすい指標がある。カイゼンが即結果に表れるのに対して、事務系や技術系の職場では業務の細分化で自分たちの仕事の成果が見えづらい。カイゼンを日々、繰り返す風土が薄いのが現状だ。
今春から「創意くふう」の呼び名で、業務改善を提案する制度を再徹底している。労使交渉の場でも協力を要請しているが、部下だけでなく、上司の役割が大切だ。例えば、部下が6時間の工数低減を図ったら、これを上司は付加価値をどれだけ、つなげられるか。多くのカイゼンの積み重ね、これを改革につなげ、会社に貢献していくことが上司の役割だ。
生産はここ数年1000万台レベルで安定しているが、将来のために開発費を捻出するには徹底した原価低減をやり続ける覚悟だ。CASEの時代、トヨタはアライアンスを発表、競争力を高め、戦っていこうとしている。やはり大事なのは人です。東京モーターショーで豊田社長はキーワードをヒューマンとしたが、現場を預かるおやじとしてよくわかる。会社と会社が一緒になったら強くなるわけでなく、人と人が助け合い、一体感を持ってやるから強くなる。
昨年、グループ14社で「オールトヨタおやじの会」くぉつくり、電話一本で助け合える関係を作った。保全要員の育成など共通課題を話し合い、自然災害への対応、設備の復旧などの場面でも生きてくると思う。
アライアンスの時代、それぞれの企業文化の中で、異なる仕事のやり方をしてきた人たちが率直に意見を交わし、何ができるかを探っていく。そのためには一人ひとりがプロ人材にならないといけない。即断即決できる専門性、メンバーを束ね、即実行できる人間力を兼ね備えたプロ人材が必要だ。
「自ら考え、行動できる人財」「新分野に自ら挑戦し、やり切る、タフな人財」「職位はゴールではない、成長し続ける人財」を育成するため、拡大期にできた教育、人事制度を大きく見直していきたい。この変革期に、3割近い幹部職、基幹職、組合員が変わり切れていない人がいるのが実態だ。
年齢や資格に関係なく、頑張っている人を正しく評価できる「おてんとう人事」を進める。常に目指す人(先輩)を超える努力をし、自分を超える後輩を育てる風土を作っていきたい。
だからこそ、今のトヨタに現場主義を取り戻したいと考えている。大変革期を生き抜くためには、もう一度、創業期に立ち返り、全員が変化に立ち向かうプロになる必要がある。社員手帳を新たに配布したのも、豊田綱領やTPS、原価低減を従業員一人ひとりが深く理解し、業務に遂行して欲しいからだ。
どのような時代になっても、モノづくりにお中心は「人」です。トヨタが持続的に成長してくため、人財育成に全力で取り組んでいきたい。