トヨタ自動車(本社:愛知県豊田市、代表取締役社長:豊田 章男)傘下のトヨタ・ノース・アメリカ(Toyota Motor North America/以下、TMNA)は12月11日未明(米国時間 : 12月10日)、燃料電池大型商用トラック(以下、FC大型商用トラック)の最新プロトタイプを米国内に於いて初公開した。(坂上 賢治)
発表したTMNAによると同車には、先の日本時間の9日に発表された新型MIRAIに搭載された第二世代のFVシステムが採用されているという。これによって量産化の確立を前提に、力強い加速性能を実現させるなどパフォーマンスと使い勝手を大幅に向上させたと謳っている。
車両スペック自体は、荷重量が8万ポンド(約36トン)、航続距離は300マイル(約480km)以上として、米国当地に於ける幅広い商用トラックニーズに適応できる仕様とした。
車両そのものは、オレゴン州ポートランドで1912年に創業した貨物自動車メーカー「ケンワース(Kenworth)」の手になるボディコンストラクションをベースとしているもので、これに先代T680と同じくトヨタ謹製のFCシステムを2連装。キャビン後方に6本の水素貯蔵タンクを格納。より高性能化されたリチウムイオンバッテリーを介して動力モーターへの電力を整流していく仕組みを採っている。
そもそもトヨタは2017年から、ロサンゼルス港湾地域を舞台に商用FCトラックの可能性を検証してきた。これはロサンゼルス市港湾局(隣接のロングビーチ港も含む)が中心となって進める貨物輸送の〝ゼロ・エミッション化〟プロジェクト(ZANZEFF : Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project)に企業として参画しているもの。
このZANZEFFは、温室効果ガス排出量の削減、経済の強化、公衆衛生の改善を主目的に、カリフォルニア大気資源局(CARB)がロサンゼルス港へ助成金4千100万ドル(約42億7500万円)を投じて推進している地域プロジェクトを指す。
同港でCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)を務めるクリスキャノン氏は、「現在、当港(ロサンゼルス港)は16のゼロエミッション実証プロジェクトに取り組んでおり、この一環としてゼロエミッション貨物車の開発をサポートしています」と語っている。
一方でトヨタは、これまでの研究・検証の成果として今月、第一世代のFCシステムを搭載した車両(ケンワースT680FCEV)2台を米貨物運送会社へ納入する。これについて同プロジェクトを推し進めているTMNAのR&D部門(ミシガン州アナーバー)で電動車・先進技術部門チーフエンジニアを務めるアンドリュー・ランド氏は、「FC大型商用トラックの大規模な実証は、研究開発に1時間あたり約100万ドル(1億円超)規模のコストを投下し、貨物輸送のゼロ・エミッション目指す我々にとって重要なステップにあたります。
これまでの実証を通じて、FC技術が日常の貨物輸送に適していることは確信していますが、今後は、新型プロトタイプを追加することで、単に量産化するだけではなく、より長距離輸送のニーズに応えるなど、幅広い用途先を視野に入れていきます」と話している。
具体的な車両の納入先は、トヨタロジスティクスサービス(Toyota Logistics Services)と、カリフォルニア州の物流事業社のサザンカウンティエクスプレス(SouthernCounties Express)となっており、それぞれ最終的には車両8台を収め、各車両はロサンゼルス港とロングビーチの港に於ける港湾域輸送で使用される。
さらに2021年中には追加で同型トラック8台の納入も予定されている。この8台のトラックのうち3台は、港湾での運行に車両を供する予定の国際貨物輸送会社ユナイテッドパーセルサービス(UPS)へ。2台は米国の港湾域輸送でよく知られているトータルトランスポーテーションサービス(Total TransportationServices)へ。さらに3台はトヨタロジスティクスサービス(Toyota Logistics Services)が受け取る見通しとなっている。
なおトヨタ自動車は、「社会の低炭素・脱炭素化に向け水素利用が様々な形で進んでいる中、引き続き小型高効率で生産性を追求した新型のFCシステムを、トラック・バスなど社会を支えるモビリティにも活用し、水素利用の拡大に向けて貢献することを目指していきます」と結んでいる。