トヨタ自動車株式会社は11月28日、来る2018年1月1日付の新役員体制を発表した。新任副社長にデンソー代表取締役副会長の小林 耕士氏、現専務役員の友山 茂樹氏、吉田 守孝氏が昇格する。なお副社長体制は現4人から6人体制となる。また常務役員に生え抜きの女性を登用した。(坂上 賢治)
今回の体制刷新の要諦としては「グループ会社の力を結集、また社内外を含め、高度な専門性を有する多様な人材を適所に配置」「副社長の役割刷新、フェローポストの新設、執行役員体制の変更時期前倒し等、役員自ら役割・意識を変革し、執行のスピードアップを図る」「よりお客様・現場の近くでの意思決定が可能な体制への変更」を掲げている。
副社長の新任内容はは先の通りで、主に「Mid-size Vehicle Company(President)」として中型車を担当していた吉田守孝専務役員(60)は、同業務責任の継続と併せてTNGA推進部の責務も担う。
友山茂樹専務役員(59)は副社長として、新たにTPS本部(本部長)・事業開発本部(本部長)となり、新規事業開発の責務を担う。またデンソーの小林耕士副会長(69)も新たに副社長就任となった。
永田理副社長(60)は取締役は継続しつつ副社長職は退任となる。さらに役員ポストに高度な専門性を持つ「フェロー職」を新設。米国の人工知能(AI)子会社のギル・プラット最高経営責任者(56)が同職に就任する。
その他、三井住友銀行から福留朗裕常務執行役員(54)を新任常務役員に招聘。販売金融並びにトヨタファイナンシャルサービス社長を兼務する他、13名の常務役員を新任した。なお同ポストに生え抜きの女性社員として初めて、高級車のレクサス部門の加古慈氏(かこ・ちか)Lexus International Co.(チーフエンジニア・50)を充てた。加えて大西 弘致専務執行役員は、同じく1月1日付けでダイハツ工業の専務執行役員ブランドユニット担当に就任する。
トヨタでは、2011年に「地域主体経営」、2013年に「ビジネスユニット制」を導入、2016年4月にはカンパニーを設置するなどで従来の「機能」軸から「製品」軸で仕事を進める体制に大きく舵を切った。
2017年も、9月に電気自動車の基本構想に関して他社も参加できるオープンな体制で技術開発を進めるための新会社(EV C.A. Spirit)を設立する等、「仕事の進め方変革」に積極的に取り組んできた。
また、役員人事についても、2015年に初めて日本人以外の副社長を登用、2017年には初めて技能系出身の副社長を登用するなど、従来の考えにとらわれず、多様な人材を適所に配置する取り組みを進めてきた。
今日、自動車業界は「電動化」「自動化」「コネクティッド」などの技術が進化し、異業種も巻き込んだ新たな「競争と協調」のフェーズに入っている。そうしたなか同社は、グループの連携を強化し、これまで取り組んできた「仕事の進め方改革」を一層進めるためとして、来年1月の役員体制変更及び組織改正を実施する。
同社では「現在のトヨタを取り巻く環境変化はこれまでに経験したことがないほどのスピードと大きさで進行しており、一刻の猶予も許されない、まさに待ったなしの状況である」と述べている。
これを踏まえ、こうした認識のもと役員体制は、本年4月に実施した後も、6月、8月、11月と随時、変更してきており、来年についても従来の4月から1月に前倒しで実施することとなったと云う。
今体制変更について豊田章男社長は「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った。次の100年も自動車メーカーがモビリティ社会の主役を張れる保障はどこにもない。『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』という瀬戸際の戦いが始まっている。
他社ならびに他業界とのアライアンスも進めていくが、その前に、トヨタグループが持てる力を結集することが不可欠である。今回の体制変更には、大変革の時代にトヨタグループとして立ち向かっていくという意志を込めた。
また、『適材適所』の観点から、ベテラン、若手を問わず、高い専門性をもった人材を登用した。何が正解かわからない時代。
『お客様第一』を念頭に、『現地現物』で、現場に精通をしたリーダーたちが、良いと思うありとあらゆることを、即断・即決・即実行していくことが求められている。次の100年も『愛』をつけて呼んでもらえるモビリティをつくり、すべての人に移動の自由と楽しさを提供するために、トヨタに関わる全員が、心をあわせて、チャレンジを続けていく」と述べ、同社流・予てより同社固有の危機意識を原動力とした事業刷新に邁進する構えだ。
主な変更・改正のポイントは以下の通り