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2022年4月12日【サブスク】

トヨタ、初の量産BEV「bZ4X」をKINTOで提供

松下次男

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トヨタ自動車、初の量産BEV「bZ4X」を国内に投入

 

トヨタ自動車は4月12日、初の量産BEV(バッテリー電気自動車)「bZ4X」の国内投入を個人向けは定額制のサブスクリプションサービス(サブスク)「KINTO」で提供すると発表した。この狙いについて、トヨタは「売り方を変える」「販売ビジネスの構造転換に挑戦する」取り組みと位置付ける。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

bZ4Xはスバルと共同開発したBEV専用プラットフォームを採用した量産EVモデルの第1弾で、国内では5月12日から発売する。
初年度の生産、販売計画は5000台。車両価格は前輪駆動車が600万円、4四輪駆動車が650万円。

 

 

だが、国内向けは車両の売切りを行わず、すべてリース販売する。このうち、個人向けはサブスクのKINTOで提供し、最長10年間の専用プランを設けた。
4月12日に開いた新車発表会で前田昌彦副社長はこの狙いについてまずユーザーの「不安を払拭する」のが大切とし、佐藤康彦国内販売事業本部本部長はEV投入を「今までの売り方を変える」きっかけにしたいと述べた。

 

 

個人向けBEVはサブスク「KINTO」で提供へ

 

ここへきてEV投入(計画含む)が各社から相次ぐものの、まだ日本では急速充電器のネットワークが未整備で、再生可能エネルギーの普及も低い。
加えて、中古車の下取り価格や使用バッテリーの劣化など、新しい車種ならではの問題もある。

 

このため、日本では「まずは台数を追い求めるのでなく、お客様の不安を取り除く」ことが大切とし、中古車下取り、電池性能保証などのリスク補填を盛り込んだサブスク、リース販売とは相性が良いというわけだ。

 

 

小寺信也KINTO社長はbZ4Xに設けた10年プランについて「4年間は補助金の関係から継続が必要」としたうえで、10年間の期間を設定したのはクルマの生涯を「我々がケアする」ためと強調。
EVを普及させるためには「多く売るのでなく、保有台数をふやすことが重要」とし、このためにはEVユーザーが再びガソリン車に戻すのではなく「EVは良いな」と思えるサービスを提供することが大切だと話す。

 

ビジネス構造の転換」挑戦し、「販売のあり方を変える」

 

また、EV普及に向けて、販売店のビジネス転換も求めた。佐藤本部長は「今までのようにメーカーが開発、生産し、販売店が販売、整備する。車を売る」ビジネスから、中古車になってもアップデートで最新の技術、安全が担保できる仕組みへ、体制への移行を掲げ、メーカー、販売店、中古車事業者がそれに向けて一緒に取り組むべきだと訴えた。

 

 

さらにサブスク販売となっても販売店とユーザー―とのつながりは継続するという。小寺社長はサブスク販売の車両について「トヨタから仕入れるのではなく、販売店から仕入れる。サービス活動も販売店に委ねる」と述べ、サブスク販売による販売店の収益低下の懸念を否定した。

 

むしろ従来のような新車販売後、年数の経過とともにサービス入庫が低下していたような現象が、サブスク販売により好転する可能性を示唆する。このためにも販売ビジネス転換の必要性を訴えた。

 

 

BEVへの「不安払拭」と「サブスク」は相性が良い

 

今や世界的にEVシフトが叫ばれているが、現状のEV普及率は特定の地域を除くと極めて低い。前田副社長は海外のEVの使用事例として「短い市街地走行は問題ないが、長距離輸送には燃料の不安が低いエンジン車を選ぶという話も聞く」と述べ、EV普及には充電インフラの整備とともに、エンジン車の燃費に相当する電費の重要性を示した。

 

bZ4Xは1キロメートル走行当たり128ワットアワー(Wh)と高い電費性能を発揮し、1充電当たりの走行距離は559キロメートルに達する。
それでもEV普及に向けては急速充電器ネットワークや再生可能エネルギーの普及拡大などのインフラ整備を並行して進めることが欠かせなく、自治体をはじめ様々な機関との連携も不可欠だ。

 

 

トヨタを皮切りに量産BEVの投入が各社から相次ぐことで、わが国でもEV普及の可能性が高まるだろう。あわせて、EV市場は販売手法などのビジネス構造転換の動きが強まりそうなことがトヨタの動きからも読み取れると言えそうだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。