トヨタ自動車は2月6日、東京都文京区の東京本社に報道陣を募って、2020年3月期 第3四半期(2019年4月1日~12月31日)の決算内容について解説する説明会を実施。加えてディディエ・ルロワ副社長が「お客様に向き合った競争力強化の取組み」と題したプレゼンテーションを行った。(坂上 賢治)
まず冒頭で登壇した白柳正義執行役員は、9か月累計の売上高が前年同期比3546億円(1.6%)増の22兆8301億6400万円。営業利益は、前年同期比1208億円(6.2%)増の2億587億8300万円。税引前利益は、前年同期比7900億円(45.8%)増の2兆5157億7900万円。当期純利益は、前年同期比5897億円(41.4%)増の2兆130億1000万円となり、9か月累計の括りでは過去最高の数値を記録したと述べた。
その背景については、〝北米事業の収益回復が著しいこと〟とし、営業利益で前年同期比2倍の3285億円。売上高営業利益率も2倍におよそ相当する4.0%に到達したと述べた。この好成績の理由はふたつある。そのひとつは米国市場がセダン中心のマーケット環境から、SUV(多目的スポーツ車)や小型ピックアップトラックに消費需要がシフトした事にあり、同社は、これを察知しつつ販売の主力を消費需要の中核へと移すことに成功したこと。
併せてふたつ目は、比較的高価格帯である車両セグメントへの販路変更で、当地に於いて収益悪化の原因となっていたインセンティブ(販売奨励金)の支出が抑えられたこと。結果、前年同期に比べ、インセンティブを減らしながら販売台数を増やしていけたことで大きな収益改善に繫がったという。
米国に於ける今後の懸念としては、当地のサブプライムローンの行方にあるとされているが、同社は2020年の見通しについて、秋の大統領選を控えているなか米国内で2%前後の成長ペースが今年も続く見通しに賭けた格好だ(後述)。
その一方で車両の連結販売台数は、為替差損の影響を受けて前年同期比3.8%減の219万6000台の前年割れ。アジア地域でも同12.5%減の40万6000台となった。中国汽車工業協会の発表数値によると2019年の新車販売台数は前年比8%減の2576万9千台というから無理もないが、その結果、同営業利益は前年同期比3.2%減の6544億円の減益となっている。
これによって前年比での新車販売は落ち込んで3.3%減の7兆5445億円の減収。そうしたなかでもトヨタ自動車は、原価低減や経費削減などの力技で埋め合わせて税引前利益で9322億円、当期利益で7380億円という数字を計上している。
これを踏まえた通期の業績見通し予想では、中国・武漢に端を発した新型肺炎の影響を「まだ精査できておらず、20年3月期通期の業績予想には織り込んでいない(白柳正義執行役員)」として2019年の新車販売台数で162万700台・前年比9.0%増とした。
その数字が示す内訳は、車両販売台数で日本国内市場を超えた中国市場の胆力に期待を込めつつ、連結販売台数減を北米市場の活況でカバーする見込み(2020年3月期のトヨタ・レクサスを併せた世界生産台数が、米国市場を中心に19年11月時点の従来予測比で903万台と3万台増える見通しを想定)として、売上高を前期比2%減の29兆5000億円に据え置いた。
また今後の動向変化については「政府方針や部品の調達、物流状況を加味しながら判断していく(白柳正義執行役員)」と述べた。さらに為替変動や原価低減の有利に働くと見て、前回予想から3%の減益としていた営業利益は1000億円増の2兆5000億円(1%の増益)に上方修正。当期利益も2000億円増の2兆3500億円の見通しとしている。
同会見に同席したディディエ・ルロワ副社長は、記者からの春節(旧正月)休暇以降の新型コロナウイルス感染の拡大。合弁会社の現地工場の一時停止など懸念についての質問で「米中の経済摩擦の影響でアジア地域の車両販売は落ち込んだが、その一方で利益率の低迷が続いていた北米事業が快方に向かうなど、他地域がバランス良く補い合って安定的な成長を歩んでいる」と今後の業績推移に対してあえて前向きの見通しを示した。
加えて「今後は中国政府の意向が強く出る環境規制強化にうまく適合していけるかどうかが課題」とした。今後の車両生産計画について白柳正義執行役員は「生産部品の在庫確認を進めると共に、代替生産の可能性も含めて精査していく」と結んでいた。