今回トヨタが、車両電動化技術を通じた協調という新たな戦略を決断した理由について、同社の取締役・副社長の寺師茂樹氏は「ハイブリッド車など電動車普及の必要性を感じておられる多くの企業から、トヨタの車両電動化システムについて、お問い合わせを頂くようになりました。
そうしたことから、今こそ車両電動化について協調して取り組む時だと思いました。特にこれからの10年で一気に普及が加速すれば、電動車が普通の車になっていくでしょう。そのお手伝いをさせていただきたいと考えました」と話している。
ちなみに先にも一部記載したが、今回発表した特許実施権の無償提供の対象は、トヨタが20年以上にわたるHV開発で培ってきたモーター・PCU・システム制御等の車両電動化技術周辺の特許で約23,740件。
その内訳は、2019年3月末時点で、2015年1月より無償提供実施中の燃料電池関連を含むモーター約2,590件、PCU約2,020件、システム制御約7,550件、エンジン・トランスアクスル約1,320件、充電機器約2,200件、燃料電池関連約8,060件となり、提供期限は2030年末までとしている。
契約は、トヨタと具体的な実施条件等について協議の上で契約を締結する。
また先に記した特別な技術サポートの実施については、電動車の製造・販売を目的とした完成車メーカーが、トヨタが保有する車両電動化システムを購入する場合に、要望に応じて追加の技術提供を行う。
その技術サポートの内容は、製品化する車両特性に応じた燃費・出力性能、静粛性といった商品力を高いレベルで実現するための車両チューニングに関するアドバイスだとしている。
この領域は、例え基礎技術を無償で提供したとしても実現できない摺り合わせ技術の結晶であり、今回の特許無償化に隠された本来の目的は、こうした技術サポートを通して「トヨタの技術を共有してくれる仲間を出来る限り増やすこと」にある。これこそが同社が求める特許無償化戦略の真の理由である。
HVは孤高技術ゆえに競合他社は追従せず。技術のガラパゴス化が浮き彫りになりつつあるため、戦略変更へ