一方トヨタの方は、自らが蓄積し続けて来た技術の積み重ねを糧に、HV・プラグインハイブリッド車(PHV)・電気自動車(EV)・燃料電池自動車(FCV)等の様々なタイプの電動車開発に応用できるコア技術になるよう丁寧に仕立て上げてきた訳だが、その反面、保有技術として良くも悪くも言わば「孤高の存在」となっている。
それゆえ、これに対抗・追従する競合自動車メーカーが殆ど現れず、特にHV技術でストロングハイブリッドに係る車両技術は、完全に同社だけのものとなった。
対して昨今の競合他社は、先の通りだが個々各国政府の後押しを得て、単独搭載のモーターを直接搭載するBEVの開発を急いでいる。今回のトヨタの技術公開は、こうした流れに伴う同社独特の危機感も現れとも映る。
事実トヨタのストロングハイブリッド由来の独自技術は、現段階ではトヨタグループ内の「閉じた技術」となっており、このまま行くと傘下の部品メーカーの開発・供給コストが一向に下がり難くなり、場合によっては将来的に慢性的な高コスト体質に繫がる可能性もある。従って未来のトヨタ自身の事業競争力低下に繫がるかもしれないのだ。
実はこれまで、トヨタ側の知的財産(特許)の取扱いについては、燃料電池車の技術提供時を例に、オープンポリシーを基本として第三者からの特許実施の申し込みに対し、適切なコストを請求することで特許実施権を提供してきた。
しかし今回は、その実施料そのものをオープン化する。そもそもトヨタでは「車両電動化技術について様々なタイプのEV開発に応用できる技術であることを鑑み、自らの技術が世界の電動車普及への貢献を果たす」としている。
ただ今日の段階で既に自動車マーケットで1、2位を争うVWを筆頭に、日本企業も含むルノー・日産連合などではBEV化が加速している。ゆえに少なくとも大手企業を中心とした自動車グループに関して、トヨタの技術を安易に採択するという可能性は極めて薄い。
いずれにしてもトヨタが、単独保有する知的財産は世界規模の「特許」として約23,740件あり、これらの実施権を無償で提供していくとしている訳だが、そのなかでも以下は同社が考える真の戦略の肝であろう。
それはトータルとして電動車開発に必要なモーター・バッテリー・PCU・制御ECU(以下、車両電動化システム)など、デンソー保有も含む核技術については、先の無償化とは異なる形の技術サポートを実行していく。つまり「蓄電池」と「半導体」に関する技術提供は決して無償ではないということだ。
約23,740件が対象。車両電動化システム活用の技術サポートも実施し、電動車普及に貢献していく構え