EVを中心に、電動車の普及スペースを5年前倒し。2025年に550万台以上を目指す
トヨタ自動車が電気自動車(EV)の市場投入を加速する。トヨタの寺師茂樹副社長は6月7日に東京都内で開いたEV普及に関する説明会で、電動車の普及ペースを5年程度前倒しする考えを明らかにした。
この目的達成を求めて協業領域を拡大し、EV普及のキーとなる電池調達先についてもすでに発表済みのパナソニックとの協業、PEVEに加え、中国のCATL、BYD、さらにGSユアサ、東芝などへ広げる方針を示した。
電動車の普及ペースを前倒しするのは世界的なCO2(二酸化炭素)排出規制強化や新たなモビリティサービスが急ピッチで進んでいるのに対応させるため。とくに寺師副社長はCAFE(企業の平均燃費)の強化を掲げた。
2020年から中国を皮切りに、自社開発EVを投入、日本では超小型EV
米カリフォルニア州のZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)や中国のNEV(新エネルギー車)政策は一定比率のゼロ・エミッション・ビークルのクリアーが求められるが、欧州、日本などの2030年燃費規制は現行の「半減、3割減」という厳しい規制値となっており、より高い電動化比率が迫られているためだ。とりわけEVは平均燃費低減へ大きく寄与すると見られている。
そこでトヨタは2017年12月に公表していた2030年の電動車の普及ペース、HV(ハイブリッド車)・PHV(プラグインハイブリッド車)450万台以上、EV・FCV(燃料電池車)100万台以上を5年程度前倒し、2025年目標として設定することにした。
特にEVについては自動運転技術と並行して進むMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)などの新たな領域で、インフラの役目を果たすコネクテッドとの「親和性が高い」車両としても推進する。
スズキ・SUBARUとグローバル展開専用ユニットを共同企画
具体的には、今年の上海モーターショーで公開した自社開発の量産型EVを2020年から中国で導入するのを皮切りに、順次、EVを本格的にグローバル展開する。2020年代前半だけで、10車種以上をラインナップする計画だ。
中国以外では、2017年の東京モーターショーで公開したコンセプトモデル「i RIDE」をベースにした超小型EVを2020年に日本で発売するほか、立ち乗りタイプや座り乗りタイプのパーソナルモビリティも2020年、2021年に投入する予定。
また、グローバル展開では6タイプのEVを共同開発する。このうち、ミディアムSUVではスバルとの共同開発を前日の6日に発表、コンパクトタイプではスズキ、ダイハツと協業する。加えて、スバルとは「e-TANG」と名付けた専用EVユニットを共同企画し、多様なサイズのEVに応用する。
キーとなる電池を、パナ合弁に加え中国CATL・BYD、GSユアサ・東芝からも調達
こうした中で、課題となるのがEV普及のかぎとなる電池の供給量だ。トヨタはPEVEに加え、すでにパナソニックと車載用角型電池の合弁会社設立で合意しているが、自動車業界では計画を上回るペースでEVをはじめとした電動化が急進展している。
そうした背景を踏まえてトヨタは、従来の協業をコアとしながらも、新たに中国や日本を含む世界の電池メーカーとも更なる協調を進める方針を表明した。全固体電池については「東京オリンピックまでに何らかの形を示したい」とした。
2025年の電動車普及ペース550万台の設定について寺師副社長は各国・地域の燃費規制を前提に「エイヤーと置いた数字」とし、実際の普及見通しや具体的なタイプ別電動車比率については最終的にユーザーが「選択するものだ」と述べ、明言を避けた。こうした中で、トヨタは「どのようなタイプの電動車でも選ばれ、提供できるようラインナップする」とし、これまで手薄だったピュアなEVを積極的に投入する方針を示した。(佃モビリティ総研・松下 次男)