——最近のEV転換はやや過熱気味だが、これをどう見る。
友山 欧州メーカーのディーゼル問題が拍車を掛けた格好となったEV転換だが、必ずしも全てがEV(電気自動車)だけに切り替わるということではないと考えている。
それは欧州勢も同様であり、ベンツやポルシェなどもEV一辺倒ということではなく、いかに内燃機関の熱効率を上げるかの手綱を緩めている訳ではない。
日本国内市場に於いてもマツダさんは内燃機関の進化に心血を注いでいる。これに対してトヨタも、電動化戦略の一環としてEVの商品化に取組んでいるなかで、他方いかに内燃機関の燃焼効率を上げていくかという目標についても、高い指標を掲げて精力的に取組んでいる。
EV化に関しては、英仏政府の国策や中国の国策は承知している。実際、フランスのように地震などの影響が比較的少ない地域性を踏まえ、安定した原子力発電に依存していける環境があるのなら別だが、国土や国家の事情で火力発電に依存しているような地域に於いては、全部EVで行くということになるとエネルギーコストと環境負荷という両面で無理が出てくるケースもある。
エネルギー転換への道は永い視点で「環境負荷低減策」と「電動ユニット搭載車拡大」を両輪に据え、より環境に優しく進めていく道筋を辿っていく必要がある。
——いずれにしてもこの電動化、情報化、知能化の技術革新の中で自動車メーカーはどうあるべきなのか。
友山 クルマ自体の大変革期が到来しているのは確かだ。このクルマへの変革の波をしっかりキャッチアップしていくことで、目指す事業形態の姿も大きく変わっていく。
例えばトヨタもクルマを作って売ることから、グローバルでお客様とどのように接点を増やしていくのかが重要になってくるだろう。端的にいえば「製造業からサービス業へ」ということにもなろう。
電動化や自動運転の進化で、クルマの空間活用や移動の愉しさは無限の可能性を持つようになる
——最後にモビリティの未来をどう創造していくのか。
友山 モビリティの魅力は、移動する価値をどこに見いだすかということだ。電動化や自動運転の進化で、クルマの空間の活用や移動の楽しさは、さらに広がることになる。
以前、豊田社長からコネクティビティカンパニーとガズーレーシングカンパニーのプレジデントを兼務する内示を受けた際に「これからのクルマは絶対にITが必要だ。ITとレースの両方をカンパニーのプレジデントとして担うことでバランスを取れ」と言われた。
それは、技術の粋を追求しつつも「楽しく移動するモビリティ」の新たな形をトヨタが創造していくということだ。
今後はマニュファクチャラーとしての存在のみが注目されてきたトヨタからの脱皮も目指し、IoTの進化に合わせて「つながるトヨタ」の魅力創造へと飛躍していきたい。
*同コンテンツは、12月4日より一般書店で発売中の隔月刊誌「NEXT MOBILITY」からの転載記事となります。現発行号では「2027年の自動車」をテーマに、事業の枠組みを超えた多彩なキーマンを抽出。インタビューを中心とした構成で、未来を乗り越え、解決していくための方程式を読み解いていく展開としています。