白物家電にはならない、トヨタは背景に時代に見合うモビリティサービス事業に移転していく。
——自動車の大変革の波は、クルマのコモディテイ(汎用)化を促す懸念も出ているが。
友山 我々の製品やサービスが白物家電のようにはならないし、またそうしたことであってはならないことだ。クルマは移動するものであって、ヒトは何世紀も前から自らの意志で移動したいという夢や欲求を持ち、その動機を意欲に代えて新たな時代を切り拓いてきた。
また数ある工業製品の中でも、「愛」がつくのはクルマだけと永らく言われてきた。クルマは誰もが愛着を持てる存在であり、そこから「愛車」という言葉が生まれた。
他方で、クルマもコモディテイ化するのでは、との見方があるのは判っている。今後は、ある意味で公共としての役割担う様な特定のカテゴリーに於いては、これまでとは異なる全く新しいクルマの利用方法が育まれ、新たな価値観とクルマの付き合い方が社会全体で共存される時代がやってくるのかも知れない。
しかし今後、未来に向けてコネクティッド化の進展により、クルマがより高度になればなるほど、その複雑化するメカニズムと信頼性を担保するためにメンテナンス(整備)はしていかねばならない。
むしろ、新しいクルマとの付き合い方が育まれれ、稼働が大きく上昇する様なことがあれば、それに見合う点検整備網を欠くことは絶対にできない。
先の通り、我々はマニュファクチャラーとしての役割を持ちながらも、現代の流通にも応えていかなければならないディストリビューターであるのだから、これを背景に時代に見合うモビリティサービス事業に移転していく。従って未来のクルマは、またトヨタのビジネスは白物家電にはならない。
——コネクティッド戦略に於けるサイバーセキュリティの問題については。
友山 これは未来を見据えた時、非常に重要な問題である。未来のクルマは確実に電子部品とソフトウェアの塊となってくる。それゆえに小さなウイルスが入り込む事自体が許される余地は微塵もなく、モビリティサービス事業を目指す我々企業の存続そのものに結びつくことになる。
外部からのアクセスは100%セキュアでなければならない。具体的に今後は極めて厳重かつ何重にもシステムをセキュリティ化していくことになる。この問題は、MSPF戦略上でプラットフォーマーとしてのビジネスを拡大させていくための最重要テーマとして捉えている。
——最近、地図メーカーであるヒアーとパイオニアが提携してテレマティックス保険を導入したが、トヨタとしては地図会社との連携は。
友山 地図情報による危機管理保険が、テレマティックス保険として米国では商品化され、日本でも地図会社ヒアーとパイオニアが提携したようだが、トヨタはオープンに世界各地域の地図メーカーと連動している。米国では2025年までに車両保険のうち、45%がこのテレマティックス保険になると言われている。