自動車市場に「新たな産業革命」が押し寄せる中、トヨタ自動車で特に注目される事業部門が「コネクティッドカンパニー」だ。「コネクティッドカー」つまり、つながるクルマはIT(情報技術)からAI(人工知能)に、さらにあらゆるモノがネットにつながるIoT(インターネット・オブ・シングス)の進展と共に進化の方向にある。その事業の舵取りを担う「コネクティッドカンパニー」プレジデントである友山茂樹専務に、コネクティッド戦略からみるモビリティの方向性と課題を聞いた(前週11月4日のインタビュー前編を踏まえた後半となる。なお前半はこちら)。
——トヨタとして捉えるコネクティッド戦略の課題は。
友山 今後、自動車ビジネスはどんどん民主化していく。これは様々な意味での民主化と言うことであり、そこには「電動化」や「情報化」、「知能化」などの技術革新の動きに加え、多様な企業など、時代を塗り替えようとする人的リソースも加わってくる。
具体的な動きでは、自動運転やバリューチェーンの変化。ライドシェアといった自動車利用に関わる新たな動きに対してもそうだ。そうしたなか特にグローバルIT企業の存在は、伝統的な自動車産業にとっては脅威になるとの見方もある。
しかし我々は、これらをリスクとは捉えない。こうした時代の流れを我々は積極的にチャンスに換えていくべきあり、そのためにトヨタが今後、何を強みに、どのような事を成し遂げようとしているかが、ひとつの鍵となるだろう。
例えばその切り口として、我々は旧態の産業資本で云う「マニュファクチャラー」ではないということだ。
我々のトヨタのビジネスは、マニュファクチャラーとしての事業だけで語れるものではなく、「人から人へ」と製品の流通ネットワークを広げていくディストリビューターでもあるということを忘れてはならない。
つまりトヨタは、自らの手でものづくりを行って独自の製品を生みだし、さらにその製品の販売網を広域で持ち併せ、自らで全域をコントロールしているというところが大きな意味を持つ。
この他には代え難い、強みを活かすことができれば、グローバルIT企業とも手を組むことができるし、むしろ先進国など一部の国際環境に於いて成熟産業となった同市場を、改めて成長産業に切り替えていくことすらできると考えている。
——トヨタ自動車としてこれまで培った財産を強みにつなげるということか。
友山 クルマを作る人、売る人、整備する人など自動車ビジネスのバリューチェーンが、コネクティッドという技術と融合することでより確実に、一貫してつながってくる。そうした中バリューチェーンを広げていくためのコネクティッド戦略を、明日のトヨタの強みとしていかねばならない。