トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation/以下、TMF)は、下肢麻痺者の移動の自由に貢献する革新的な補装具の実現に向けたコンテスト「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」の最優秀作品として英国「Phoenix Instinct社」の自律制御電動車椅子を選定した。
TMFは、同社に対して作品の製品化に向けた活動資金100万ドルを授与し、支援を継続する。
2017年11月に開始された「モビリティ・アンリミテッド・チャレンジ」には、世界28か国、80以上のチームからアイデアが寄せられ、昨年1月には最終候補5チームが選定。ファイナリスト5チームは、同プログラムのテクニカルアドバイザーであるピッツバーグ大学人間工学研究所(*1)やNESTA(イノベーション推進に取り組む英国NPO/*2)、トヨタ自動車の関連部門等からの製品化に向けたアドバイスを受けながら、試作品の制作を進めてきた。
そして専門家からなる審査委員会による、技術の革新性、実用性、品質・安全性、製品化の可能性、社会への影響を基準とした評価の結果、Phoenix Instinct社の自律制御電動車椅子が最優秀作品に選定された。
自律制御電動車椅子は、前輪搭載のパワーアシストとAIを活用した重心制御を組合せて車体の制御を容易にすると共に、乗り心地を改善。また下り坂を検知してブレーキシステムが作動する機構を搭載することで安全面での性能も向上させていると云う。
最優秀作品発表イベント(12月17日開催)のプレゼンターとして登壇した国際パラリンピック委員会前会長のフィリップ・クレイヴァン氏(トヨタ自動車取締役)は、「モビリティは人生における様々な制約から人々を解放し、自由をもたらす。移動の自由を実現することによって、全ての人が社会において活躍することが可能になる」と述べている。
TMFは、最優秀作品以外のファイナリスト4チームの作品についても、専門家とのネットワーキングやアドバイス等による支援を継続し、技術革新を通じて、全ての人々が自由に移動できる社会の実現に向けた活動を進めていくとしている。
*1)ピッツバーグ大学人間工学研究所:ピッツバーグ大学と米国退役軍人省が共同で開設している世界有数の障がい者向け福祉器具研究機関。
*2)NESTA:英国国立科学技術芸術基金を母体としたNPO。科学・技術・芸術における個人および団体による先駆的なプロジェクトや人材育成を支えるイノベーション推進機関。
[最終候補5チームの概要]
<Phoenix i>
– 開発団体:Phoenix Instinct(英国)
– 作品:前輪搭載のパワーアシストとAIを活用した姿勢制御を組み合わせた自律制御機能付き電動車椅子。
※タイトル写真:Phoenix Instinct社 Andrew Slorance CEO
<The Evowalk>
– 開発団体:Evolution Devices(米国)
– 作品:筋電気刺激を活用した下垂足(足首の麻痺)者向け歩行支援装置。
<Qolo>
– 開発団体:筑波大学(日本)
– 作品:利用者一人で移乗・着座の移行を可能にし、立位状態で走行できる電動車椅子。
<Quix>
– 開発団体:IHMC、MYOLYN(米国)
– 作品:路面感知、姿勢制御機能を付加した電動式の外骨格。
<Wheem-i>
– 開発団体:Italdesign(イタリア)
– 作品:車椅子ごと移乗可能な車椅子電動化ユニット。
トヨタは、幅広いプロジェクトを通じて世界中の移動課題の解決に取り組むために2014年8月に設立した「TMF」を通じ、今後も同社の技術・ノウハウの活用や多様なパートナーと協働し、SDGs(持続可能な開発目標)の考え方にも沿った活動を進めながら、人々が心豊かに暮らせる社会の実現に向けて貢献していきたいとしている。