そこで今後両社は、相互に公正かつ自由な競争が行われることを前提として、「持続可能なモビリティ社会」の実現に向け、さらなる協業の検討を継続していくと云う。
なお製品供給先のインド政府では、来る2030年までに販売車両の30%をEV化する方針を打ち出すなど、その施策の動向は今後の流れでまだまだ変動があるだろうと見られているものの、同国に於ける環境規制の方向性について、厳しさを増していくのは間違いないところだ。
このためスズキは、環境車で先行するトヨタを戦略上で利活用していく方針。
一方でこの相互の現地チャネルによる車両販売は、現地でのススキブランドの信頼感と人気を背景に、むしろススキブランドから発売されるカローラを介してトヨタブランドの市場浸透を助けていくことになり、この結果、トヨタ側のシェア拡大に少なからず貢献すると考えられる。
ただもとよりインドは、経済規模に於いてまだまだ伸び盛りゆえに、同国でシェア4割と確固たる地位を築いたスズキとしては、トヨタの経済力・技術力を利用していく方が、自社にとって未来に向けて事業拡大の可能性が高いと見ているのだろう。
またトヨタとしても、日本陣営がインド市場で安定的な立ち位置を確保していくという目的を踏まえると、他国ブランドのインド国内マーケット参入の可能性を前提に、むしろマーケットリーダーのスズキと共に同国市場を攻めていく方が戦略的効果が高いと見ていると考えられる。
今後、インドの自動車市場は、既に成熟した先進諸国の事情とは異なり、先のマーケットシェア云々以前に、伸張していく自動運転車やコネクテッドカーの台頭で、これまでとは全く異なるモビリティ社会が出現する可能性がある。
従ってトヨタとしては、当姉妹誌である「NEXT MOBILITY」最新号のインタビューでスズキの鈴木俊宏社長が答えた様に「今後もパーソナルカーに注力する」ということであれば、変革する新時代のモビリティ社会に向けて、既存の市自動車マーケットとは異なる領域で、新たな活路を切り拓いていく可能性は大きいだろう。
加えてそもそも相互に、同じ地域で織機事業から始まったという事業背景。双方の経営トップに立ち続けている創業家の信頼関係も強いことから、両社の協業は、この東アジアの大国であるインドを軸に新たなビジネス領域を切り拓いてく可能性も秘めている。(MOTOR CARDSより転載 ・坂上 賢治)