トヨタ自動車は9月29日、トヨタおよびレクサス販売店における指定整備違反を受けた全4,852拠点総点検の結果と今後の再発防止への取り組みを報告した。
これら総点検などによる結果、これまで販売店11社12店舗にて不正車検が行われていたことが判明。不正車検が判明した店舗においては、いずれも顧客へ謝罪の上、当局の指示を仰ぎながら、再検査等を順次実施している。
このような不正車検が行われた背景には、販売店の人員や設備が、仕事量の増加に追い付かないことによる負荷や、車検制度への認識、販売店の幹部と現場との風通し・風土、作業を監査する機能など、様々な課題がある。
また、メーカーとして、現場の実態や要望を十分に把握できずに、入庫台数や売上などの数値目標を中心とした方針や表彰制度を展開してきたことは、メーカーの責任であり、要因の一つとなったとしている。
■全店舗総点検の実施結果と今後の取り組みについて
– 全店舗総点検 実施概要(実施期間:7月20日~)
・対象・体制
全国トヨタ・レクサス販売店 全拠点(指定・認証工場、車検センター 4,852拠点)
トヨタ自動車社員約530名も訪問し確認
・項目・方法
指定整備・法令項目に加え、会社の仕組みや風土を含め58項目。
本部・マネージャー・スタッフ・エンジニアを対象に、直近の資料・帳票等を、適宜確認しながら聞き取り・現場確認を実施
– 総点検・調査結果
一部の販売店にて指定整備違反が判明し、顧客対応を実施すると共に、管轄運輸支局へ報告した。レクサス高輪と同様に一部検査の未実施、検査結果の改ざんが確認されたほか、検査員による整備作業の実施、一部確認作業の未実施等の違反をおこなっている店舗が「11社・12店舗」存在した。(今回の総点検も含め自社での発見が8件、国土交通省 各運輸支局による監査にて4件が判明)
<総点検結果から見えてきた課題>
①サービス現場における過大な業務量と、エンジニアの人員不足
・作業手順や作業内容が決まっていない、または見直しが不十分
・エンジニアが納車引取りや洗車作業等、付随する業務に追われていたこと
②車検制度への役割認識と遵法意識の不足
・経営層・管理者や検査員本人が、国の業務を代行している認識の甘さ
・サービスと営業間のコミュニケーション不足、サービスへのしわ寄せ
③経営層・管理者と現場作業者の風通しの悪さ
・経営層と管理者が目標や実績のみを管理し、現場の実態を把握できていないこと
・エンジニアが働く環境、ストレス、処遇等の悩み・不満を言いづらい雰囲気
④指定整備における監査機能の不備
・監査の目的や内容への理解が不足し、帳票類の確認に留まるなど監査手法が不十分
・完成検査が正しくおこなわれたかを、第三者が確認する手段がないこと
⑤車検を正しくおこなうための顧客への確認や説明の不足
・車種・年式等問わず、1台当りの作業時間が一律に固定され時間が目的化していたこと
・車からの荷物降ろし、来店時間等、お願いすべき事項が出来ていないこと
<販売店における今後の取り組み>
①「過大な業務量と工員不足」への対応
・標準作業の明確化とTPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善活動
・エンジニアを本来業務に集中させる対応(作業の切り分けや専用スタッフ配置など)
・エンジニアの採用促進(外国人留学生や技能実習生を含め多様な人材登用など)
・土日などの車検整備の入庫集中を回避するため、平日入庫、他拠点での対応を促進
②「車検制度に対する役割認識と遵法意識の不足」への対応
・代表者や店長、営業スタッフ、エンジニアに対する指定事業の重要性の教育強化
③「経営層・管理者と現場作業者の風通しの悪さ」への対応
・代表者や経営層が現場をまわり「現場の困り事」に対応する活動の継続実施
・困りごとを相談できる窓口の設置と従業員への周知
④「指定整備における監査機能の不備」への対応
・監査内容の見直し(従来の記録簿点検のみならず、作業実態も確認)
・定期的な自主点検・店舗間のクロスチェック
⑤「顧客への説明不足」への対応
・顧客への周知(入庫前の車両状態確認、荷物降ろし、追加作業発生時の延長等)
<トヨタ自動車における今後の取り組み>
①TPS(トヨタ生産方式)に基づいた改善活動・販売店活動の支援
・車検標準作業手順書のひな型や作成ツールの配付、教育コンテンツの提供
・改善や風土改革のノウハウを有するトヨタ自動車 工場現場の社員の派遣
・トヨタ自動車の工場現場における店舗マネジメント研修
②販売店との向き合い方・制度の見直し
・全国一律の方針・目標管理から1店舗1店舗の困り事をベースとした働き方へ見直し、販売店表彰制度、販売店契約の見直し 等