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2021年9月29日【自動車・販売】

トヨタ、販売店の総点検結果と今後の取り組みを発表

山田清志

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トヨタ自動車・ロゴ

トヨタ自動車は9月29日、トヨタ・レクサス販売店の総点検結果と今後の取り組みについてオンライン会見を開催。総点検では、販売会社11社12店舗で車検の不正行為があったと発表した。対象となる台数は調査のきっかけとなったクルマを含め累計で6659台に上った。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

全国で11販社、12店舗で不正が判明

 

「この度の不正車検では、オーナー、弊社の多くのお客さま、そして広く自動車整備業界の皆さまにご心配とご迷惑をおかけしたことをお詫びする」

 

会見はトヨタモビリティ東京の関島誠一社長による謝罪から始まり、レクサス高輪(東京都港区)への処分について報告した。レクサス高輪は自動車整備事業の指定を取り消され、検査員は資格の解任となった。「合わせて弊社の懲罰に基づく社内処分も実施した」と関島社長は話し、自身を含めた役員、およびレクサス高輪の関係者を対象にしたという。

 

トヨタモビリティ東京の関島誠一社長

 

トヨタ・レクサスの販売店ではこれまで、レクサス高輪のほかにネッツトヨタ山梨本社セイリア店(山梨県甲府市)、ネッツトヨタ愛知プラザ豊橋店でも不正車検が行われていたことが発覚している。これを受けて、トヨタでは7月20日から全国販売店の4852拠点で総点検を行った。

 

総点検では、トヨタの社員約530人も販売店の現場に入り込み、販売店の従業員への聞き取りをはじめ、資料・帳票などを確認しながら、指定整備に関係する法令が遵守されているかをチェックした。その結果、全国で11社、12店舗で不正が判明したのだ。

 

「12件の内訳は自社で発見できたのが8件、残りの4件は各運輸支局の監査により判明した。うち6件はレクサス高輪と同様、検査の未実施、検査数値の改ざんという故意、残りの6件は過失のよるものだった」とトヨタ自動車国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は説明し、対象となる車両は合計で1345台だった。これらの車両については、それぞれの販売店が無償で再検査をしているそうだ。

 

まずは標準作業の明確化と負荷の標準化

 

総点検から見えてきた課題として、トヨタでは「サービス現場における過大な業務量と、エンジニアの人員不足」「車検制度への役割認識と遵法意識の不足」「経営層・管理者と現場作業車の風通しの悪さ」「指定整備における監査機能の不備」をあげた。

 

また、メーカー側の課題として、「販売店の活動へのサポートが不十分」「表彰制度による助長」をあげた。トヨタは販売店各社の売上台数によって表彰する制度を設けるなど、売上第一主義が定常化し、販売と整備の現場の状況をしっかりと把握できない状況になっていたというわけだ。

 

トヨタ自動車国内販売事業本部の佐藤康彦本部長

 

また、トヨタの2021年4~6月期の営業利益は9974億円と過去最高を達成し、営業利益率は12.6%と高収益を誇るが、そのしわ寄せが販売店などの第一線にいっているのかも知れない。

 

これらの課題に対する改善策は、まず標準作業の明確化と負荷の標準化を進め、エンジニアが本来作業へ集中できるようにすること。これまでは入庫予約や当日受付、洗車などエンジニアが担当していたが、それらの作業は営業スタッフや専門スタッフに任せる。

 

そのほか、現場担当者に対する教育、販売店代表者や経営陣が現場を回り現場の困りごとをしっかり聞くこと、サービス機器の更新などを進めるとともに、不正を誘発する背景となり得る要因をなくすように働く環境の改善や職場風土づくりにも取り組んでいく。

 

また、必要な人材の増強では、深刻な人手不足から外国人留学生や技能実習生を含めた多様な人材の登用も考えていく。そして、エンジニアに対し検査員手当など処遇面の見直しもしていくそうだ。

 

一方、トヨタ側の取り組みとしては、販売店の販売スタッフや整備スタッフをトヨタの生産現場に招いて研修して、TPS(トヨタ生産方式)を通じた人材育成を行う。さらに、販売店との向き合い方や制度の見直しも進めていく。

 

「1店舗1店舗、ひとつひとつの課題に向き合い、現地、現物、現場に寄り添った取り組み改善をスタートし、やり抜く覚悟だ」と佐藤本部長は強調する。

 

トヨタの販売店は、地域の名士が経営し、独立意識が強いところもあり、トヨタとの距離感もばらつきがある。そこで、トヨタの基本的なプログラムに則ったうえで各社独自のスタイルで販売や修理を行うという体制を長年にわたり続けてきた。

 

100年に一度を言われる自動車の大変革時代を迎え、メーカーだけでなく販売店も変わる必要に迫られている。トヨタは20年からすべての販売店で「全車種併売」を開始した。そのうえ、サブスクリプション(定額制)といった新しいサービスも登場した。今回の販売店による不正車検は、トヨタが販売店と連携を強化するいいチャンスかも知れない。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。