NEXT MOBILITY

MENU

2018年1月9日【シェアリング】

トヨタ自動車、多目的電動モビリティのイーパレットコンセプトをCESで発表

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

みなさん、おはようございます。
本日はご来場いただきありがとうございます。

 

私のようなカーガイがCESに来ることができ、とても光栄です。

昨年、TRIのCEOギル・プラットから、TRIが引き続きトヨタの自動運転、ロボット、材料開発をリードしていくと聞かれたかと思います。

私が初めてギルに会ったとき、なんと背が高いんだ…と思いました。
そして、天才だとも思いました。
彼が私のオファーを承諾してくれたとき、本当に嬉しく思いました。

彼は、不可能に思えることでさえ、どうしたら可能になるかを考える、トヨタに数多くいる研究熱心で知性あふれる人物の一人です。

 

 

トヨタはもともと自動車ではなく自動織機の発明により創業した会社であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。
私の祖父である豊田喜一郎は、当時多くの人が不可能だと考えていた、織機を作ることから自動車を作ることを決意しました。

 

私は豊田家出身の3代目社長ですが、世間では、3代目は苦労を知らない、3代目が会社をつぶすと言われています。

そうならないようにしたいと思っています。

 

私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました。私たちができること、その可能性は無限だと考えています。

私は、お客様がどこにいようとも、新たな感動を提供し、お客様との接点を増やす新たな方法を作り出す、と決心しました。

技術は急速に進化し、自動車業界における競争は激化しています。私たちの競争相手はもはや自動車会社だけではなく、グーグルやアップル、あるいはフェイスブックのような会社もライバルになってくると、ある夜考えていました、なぜなら私たちも元々はクルマを作る会社ではなかったのですから。

 

データは新しい通貨だと言われており、ソフトウェアは極めて重要です。しかし、さらに、ソフトウェアからプラットフォームに移行しているのではないかと思います。

自動運転やカーシェアリングなど私たちが実現したい数多くのモビリティサービスの屋台骨となるのはプラットフォームです。

2年前、マイクロソフトと協力し、ここ米国にトヨタコネクティッド(ノースアメリカ)を立ち上げたのも、ビッグデータを活用し、何百万もの世界中のお客様とつながり、新たなモビリティサービスを生み出したいと考えたからです。

 

トヨタは信頼できるハードウェアメーカーとして知られています。しかし、私たちが、トヨタコネクティッドといった、自動運転車や様々なコネクティッドサービスに必要なモビリティサービスプラットフォームをつくる会社にもなりたいと思っています。

私たちが提供するモビリティサービスプラットフォームにより、お客様のためになるデータやコンテクストサービスを提供したいと考えています。私たちは、クルマを携帯やパソコンからシームレスに拡張させたものとし、人工知能を通じてお客様の要望を予測できる車内のパーソナルアシスタントにしたいと思っています。

私たちのモビリティサービスプラットフォームは、ハワイやサンフランシスコで実証を行っているカーシェアリングのテストマーケティングの原動力となっています。

将来は、自動運転同様に電動化がオンデマンドのモビリティやモビリティサービスを支えていくでしょう。

 

現在、トヨタは90か国以上で37車種の電動車を提供しています。2020年前半までには全世界で10車種以上のEVを提供し、2025年までには全てのレクサス車・トヨタ車にEVあるいは電動車のオプションを設定いたします。

昨今、多くの人々が、電池技術、あるいは電気自動車を話題にしています。

 

一方でそれほど話題になっていないのが、今日米国では電気自動車の販売台数が1%にも満たないということです。お客様の電気自動車への関心を高めるためにすべきことはたくさんあります。

そして、私たちは、全固体電池の開発にも取り組んでいるのです。この技術は、電池をより小さく、そして軽くでき、何よりお客様と自動車メーカー双方にとってより手軽な価格にすることができると考えています。

これらの電動化技術、トヨタコネクティッドによるモビリティサービスプラットフォーム、TRIによる自動運転技術が、私たちの将来のモビリティサービス、モビリティ事業に向けたビジョンにおける非常に重要な構成要素なのです。

 

その一つの例がeコマースやそれを超えたモビリティソリューションのコンセプト、e-Paletteです。

e-PaletteはAutono-MaaSビジネスアプリケーションに対するトヨタのビジョンを示した一例です。

e-Paletteは電気自動車であり、ショーファーモードによる自動運転によって制御されます。またパートナー企業の希望によっては、代わりに各社独自の自動運転ソフトウェアを搭載することも可能です。

いずれの場合でも、e-Paletteはセーフティネットとしてのガーディアン機能をもちます。

ライドシェア、物流、輸送、リテールから、ホテルやパーソナルサービスに至るまで様々な用途をサポートするオープンかつフレキシブルなプラットフォームです。

 

現在は、お店まで行かなくてはいけませんが、将来はe-Paletteにより、お店があなたのもとまで来てくれるのです。

様々なe-Paletteを1か所に集めることで、医療からエンターテイメントやフェスティバルといった様々なサービスのモバイルハブができあがり、ビジネス、あるいはコミュニティを簡単に形成することができます。

 

また、e-Paletteは1日で様々な仕様に変えることができます。モビリティサービスプラットフォームにより運用され、私たちの販売ネットワークにてサービスを受けることができます。

私たちはこのコンセプトの将来性を信じ、eコマースモビリティをサポートすることに前向きなOEMや企業とe-Paletteアライアンスと呼ぶアライアンスを組んでいきたいと思っています。

そのために、私たちの持つモビリティサービスプラットフォームをパートナー企業が新たなモビリティビジネスを行うための共通のプラットフォームにしたいと考えました。

 

プラグ&プレイ(接続するだけですぐに使える)オープンプラットフォームだと考えてみてください。

フレキシビリティとオープンスタンダードがお客様に最善のサービスを提供するカギだと考えています。

本日この場でe-Paletteアライアンスの初期メンバーとなる企業を発表したいと思います。それはAmazon、DiDi、Mazda、Pizza Hut、そしてUberです。

 

私たちの新たなるモビリティ社会への船出に共感し、参加していただく各社の皆様に心から感謝いたします。

私たちは、e-Paletteを始めとした現在開発中の多くのモビリティ技術により、東京2020オリンピック・パラリンピック大会の成功に貢献していきたいと考えています。

 

先日私たちが発表したグローバル企業チャレンジ「Start Your Impossible」は、多くのオリンピック、パラリンピック、そしてスペシャルオリンピックスのアスリートの皆さんを支援するトヨタの決意を表しています。

私個人にとって「Start Your Impossible」は、なにか使命のようなものにも感じるのです。なぜなら、私は「それは不可能だ」と言われることが大嫌いだからです。
だから私は51歳という年齢にもかかわらずニュルブルクリンクでマスタードライバーになるための訓練を受ける決意をしました。私の父を含め、多くの人々からばかげていると言われましたが、私はこの経験がもっといいクルマを作るために必ず役立つと確信していました。

 

 

私は健全な競争を信じています。一方で、一番に商品を出すことよりも、良いものを正しく出すこと、そしてできる限り技術の恩恵を授かることのできる道を見つけることこそが最も重要なことだと考えるのです。

e-Paletteはその一例です。

 

 

本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。皆様とお会いできて光栄に思います。ぜひトヨタが新たな機会を、可能性を創っていくためにも皆様からフィードバックをいただければと思います。

お別れする前に、皆様のような方々とお会いできるチャンスも少ないので、もしよろしければ一緒に自撮り写真を撮ってもよろしいでしょうか。よろしいですか?

 

 

ありがとうございます。

 

それでは、2018年も皆様にとって素晴らしい一年となるようお祈りしております。

皆様とともに不可能と思えることにぜひチャンレジしていきたいと思います。

 

ありがとうございました。

1 2 3 4
CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。