東急は5月11日、新たなサービス実験「DENTO」(以下「実証実験」)の結果を発表した。
この実証実験は、2021年1月13日(水)~4月28日(水)の3カ月半、田園都市線在住の都心通勤者を主なターゲットとして、状況に応じた最適な移動手段と就労場所を選択できることによるコロナ禍で変容した移動や働き方のニーズ探索と、東急線の通勤定期券を持つ人への限定サービス提供による定期券保有の新たな付加価値創造を目指したもの。
結果、LINEのお友だちは18,287名、会員は10,203名が登録、チケット総購入数は22,706枚となった。
東急は、利用実績に加え、任意のアンケートの回答内容から、以下の通り考察している。
①快適な都心通勤を実現する移動サービス:発着エリア・サービス利用時間帯の拡大が課題
田園都市線郊外と都心を結ぶ高速バス「サテライトビズライナー」は、夕方の復路ニーズも確認できた一方で、平均客席稼働率が1割弱にとどまった。また、都心から横浜市青葉区内の自宅を結ぶ「相乗りハイヤー」は、利用者の評価は高かったものの、利用総数は低迷した。アンケートでは、発着エリアやサービスの利用時間帯の拡大を希望する声が多く、また認知度向上にも課題があった。
②自宅周辺で快適に楽しくテレワークできる就労環境の提供:リピート率約50%となりテレワークニーズを確認
田園都市線たまプラーザ駅以西を中心に全8店舗にて展開した結果、田園都市線沿線在住の30~50代男性を中心に利用され、リピートユーザー率は約50%と、郊外でのテレワークニーズを確認できた。カフェや商業施設内に新設したテレワーク拠点の利用では、家族とともに施設を訪れる人も多く、これまでにない新たな働き方や施設の利用方のニーズも確認できた。
③移動目的および体験価値の提供:100円乗り放題チケットによる移動や施設利用促進効果を確認
合計2万枚以上購入された定期券保有者限定サービスである100円乗り放題チケット(東急線ワンデーパス、東急バス1日乗車券)は、購入者の48%がチケットの購入により予定外の外出を行い、また45%は東急グループ施設を利用するなど、交通費割引による移動や消費促進効果をアンケートにて確認できた。アクティブクーポンの利用も2,000枚を超え、利用アンケートから、57%の利用者が定期券保有満足度が向上したと回答したほか、100円乗り放題チケットがその向上に最も寄与したことが判明した。
全体を通し、会員登録数10,203名、リピート率50%の目標は達成し、さまざまなニーズの発掘に繋がったものの、会員登録者の6割がサービスを利用せず、また総販売数の9割以上は100円チケットであったことから、今回提供したサービスへの支持には濃淡が見られる結果となった。
東急は今後、実証実験の結果を踏まえ、ポストコロナを見据えた、郊外地区の「職」「住」「遊」をシームレスにつなぐ、移動をはじめとしたサービス開発を行うとしている。