進化型GRカローラ(米国仕様)
TOYOTA GAZOO Racing( TGR )は8月2日、米国カリフォルニア州の現地時間8月1日、モータースポーツ参戦からの学びを生かして進化したGRカローラを初披露した。北米以外の地域への導入は検討中としている。
カローラシリーズは、トヨタのWRC初優勝( 1973年に米国で開催されたプレス・オン・リガードレス・ラリーにて初優勝 )を飾った「TE25カローラ」や、その後1000湖ラリー( 現ラリーフィンランド。1975年に初優勝 )を制した「TE27カローラ・レビン」など、モータースポーツ参戦を通じて鍛え、その走りを進化させてきたモデル。
一方で、顧客の多様な使い方、時代と共に変化する要望を受けるなかで、セダンやワゴン、ハッチバック、クーペや SUVと様々な形へ進化し続けることで、多くの支持を得てきた。
そうしたなかでGRカローラは、「カローラのスポーツカーとしてのDNAを呼び覚まし、顧客を虜にするカローラを取り戻したい」とのモリゾウこと会長の豊田章男氏の想いのもと生み出されたモデルになるという。2022年の初代GRカローラ発表後も、モータースポーツ参戦を継続し、昨年にはその学びを生かした改良モデルを届けている。
今回の進化型GRカローラでは、スーパー耐久シリーズなどのモータースポーツに参戦するなかで得た学びを生かし、高速コーナーでの旋回性能、加速性能や冷却性能などを改良した他、進化型GRヤリスにも採用した新開発8速AT のGAZOO Racing Direct Automatic Transmission( 以下、GR-DAT )を追加設定。
石浦宏明選手らプロドライバー、社内の評価ドライバー、そしてマスタ―ドライバーのモリゾウからのフィードバックを基に、限界領域および日常使いに於いてもずっと乗っていたくなる爽快さ追求した。
TGRでは、今後もGRカローラを用いたモータースポーツ参戦を通じて意のままの走り、ドライバーを魅了する野性味を追求していくと述べている。
主な改良内容
1. 更なる野性味の追求
【旋回性能の進化】
前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵し、旋回時の車両姿勢と内輪の接地荷重特性を改善することで旋回中の車両安定性を向上した。
リヤアクスルの回転中心であるトレーリングアーム取付点を上げることで加速時のリヤの沈み込みを低減。アクセル操作に対する車両姿勢変化を抑えることで、駆動力の応答性を向上させるとともに安定した姿勢でのコーナーリングを実現する。
リヤのコイルスプリングとスタビライザーのばね特性を見直し、それぞれのロール剛性の分担率を最適化することで、旋回時のリヤタイヤの接地性を向上させ、車両コントロール性を高めた。
【加速性能の進化】
スポーツ走行でのエンジン使用領域を分析し、コーナーでの立ち上がり加速に重要な中速域でのエンジントルクを現行型に対して30N・m増加させ、最大トルクを400N・mまで高めた。
進化型GRヤリスにも採用した、世界トップレベルの変速スピードを目指した新開発8速ATのGR-DATを搭載。
従来は減速度や車両速度などの車両状態に基づき変速させていたところを、よりドライバーの意図を反映するために、ブレーキの踏み込み方・抜き方、アクセル操作まで細かくモニタリング。
その運転状況を先読みし、プロドライバーによるシフト操作と同じようなタイミングでのギヤ選択を実現。シフト操作に気を取られず、ステアリング、アクセル、ブレーキの運転操作に集中できることにより、スポーツ走行の楽しさを広げたという。
GAZOO Racing Direct Automatic Transmission(GR-DAT)
【冷却性能と空力性能の進化】
GR-DAT搭載車にはエンジン始動時の暖気促進も兼ねる水冷式ATFウォーマー&クーラーに加え、空冷式ATFクーラーを標準装備。またスポーツ走行を考慮して、エンジン冷却を強化するためにサブラジエーターを設定( 米国仕様は[Core/Premium/ Premium Plus]の3グレード設定。Premium Plusに標準装備、Core ・Premiumにメーカーオプション )として設定した。
空冷式ATFクーラー前のロアグリルに冷却用の開口を設定。フロントバンパー側面のサイドダクトに空気の排出用の開口を設けることで冷却用の空気をスムーズに排出できる構造を採用した。
より安定した制動力を確保するブレーキダクトを採用。フロントブレーキローターに直接風を導いて冷却効果を向上することで、ブレーキ温度の上昇を抑制する。
A: サブラジエーター/B:ブレーキダクト/C:ラジエーターグリル/D:インタークーラー/E:空冷ATFクーラー[GR-DATに標準装備]
A: サブラジエーター
B: ブレーキダクト
C: ラジエーターグリル
D: インタークーラー
E: 空冷ATFクーラー[GR-DATに標準装備]
バンパーコーナー部へ安定的に小さな乱気流を発生させる小さな段差を設定し、バンパーコーナー部からの空気の剥離を抑制。冷却性能強化のため必要な各機構を追加しつつ、操縦安定性を確保した。
空気をスムーズに排出するサイドダクトを設定。ATFクーラーから排出された空気がサイドの空気の流れを乱すことなく後方へ流れるよう計算された突起形状を採用した。
【減速性能の進化】
限界領域でも安全安心で懐の深いクルマに近づけるためABSを改良。上下Gセンサーにより、ABS作動輪の接地荷重をモニタリングすることでABS作動時の安定した制動力を実現した。
【クルマとの一体感の進化】
ステアリングコラムとインストルメントパネルリインフォースメントの締結部に締結剛性の高い溝付ワッシャーボルトを採用。直進安定性とステアリング操作に対するダイレクト感を向上させた。
ステアリングコラム(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)
シャシー部品の締結ボルトの一部に締結剛性の高い特別なボルトを採用。ロアアームとロアボールジョイントの締結部はステアリング操作に対する応答性を、リヤショックアブソーバーとボディの締結部はステアリング操作に対するリヤのグリップ感を向上させた。
ロアアーム×ロアボールジョイント(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)
リヤショックアブソーバー×ボディ(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)
クラッチシステムのトータルレバー比やクラッチカバー、ターンオーバースプリングの荷重特性を最適化することで、クラッチペダルの操作性を向上。ピーク踏力を高めに設定。
これにより踏みごたえのあるペダル操作フィーリングとした他、ピーク踏力以降は、ペダルストロークでの踏力を減少させることでペダルの踏み切り感を向上させている。
更にスポーティーな操作感となるようにクラッチ特性を最適化し、戻し側の荷重増加による足への追従性、半クラッチストロークの短縮による操作性を向上した。
▼進化型GRカローラ Premium Plus(米国仕様)主要諸元
全長: mm 4,410
全幅: mm 1,850
全高: mm 1,480
ホイールベース mm :2,640
トレッド(フロント・リヤ) mm: 1,590/1,620
乗車定員: 5
車両重量 kg: 1,500(GR-DAT搭載モデルは1,520)
エンジン: 直列3気筒インタークーラーターボ
型式: G16E-GTS
内径×行程 mm: 87.5 X 89.7
総排気量 L: 1.618
最高出力 kW(PS)/rpm :224(304)/6,500
最大トルク Nm(kgf-m)/rpm: 400(40.8)/3,250~4,600
トランスミッション: iMT(6速マニュアルトランスミッション) or GR-DAT(8速オートマチックトランスミッション)
駆動方式: スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”電子制御多板クラッチ式4WD(3モード選択式)
差動装置:
フロント: トルセン®LSD※5
リヤ: トルセン®LSD(トルセン®は株式会社ジェイテクトの登録商標)
サスペンション: フロント マクファーソンストラット式
リヤ ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ:
フロント ベンチレーテッドディスク(18インチアルミ対向4ポットキャリパー)
リヤ: ベンチレーテッドディスク(16インチアルミ対向2ポットキャリパー)
ホイール :18インチ マットブラック 15スポークキャストアルミホイール
タイヤ(フロント・リヤ) :235/40R18 ミシュラン Pilot Sport 4
燃料タンク容量 L :50