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2024年8月2日【新型車】

TGR、進化したGRカローラを世界初披露

坂上 賢治

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進化型GRカローラ(米国仕様)

 

TOYOTA GAZOO Racing( TGR )は8月2日、米国カリフォルニア州の現地時間8月1日、モータースポーツ参戦からの学びを生かして進化したGRカローラを初披露した。北米以外の地域への導入は検討中としている。

 

 

カローラシリーズは、トヨタのWRC初優勝( 1973年に米国で開催されたプレス・オン・リガードレス・ラリーにて初優勝 )を飾った「TE25カローラ」や、その後1000湖ラリー( 現ラリーフィンランド。1975年に初優勝 )を制した「TE27カローラ・レビン」など、モータースポーツ参戦を通じて鍛え、その走りを進化させてきたモデル。

 

 

一方で、顧客の多様な使い方、時代と共に変化する要望を受けるなかで、セダンやワゴン、ハッチバック、クーペや SUVと様々な形へ進化し続けることで、多くの支持を得てきた。

 

そうしたなかでGRカローラは、「カローラのスポーツカーとしてのDNAを呼び覚まし、顧客を虜にするカローラを取り戻したい」とのモリゾウこと会長の豊田章男氏の想いのもと生み出されたモデルになるという。2022年の初代GRカローラ発表後も、モータースポーツ参戦を継続し、昨年にはその学びを生かした改良モデルを届けている。

 

今回の進化型GRカローラでは、スーパー耐久シリーズなどのモータースポーツに参戦するなかで得た学びを生かし、高速コーナーでの旋回性能、加速性能や冷却性能などを改良した他、進化型GRヤリスにも採用した新開発8速AT のGAZOO Racing Direct Automatic Transmission( 以下、GR-DAT )を追加設定。

 

 

石浦宏明選手らプロドライバー、社内の評価ドライバー、そしてマスタ―ドライバーのモリゾウからのフィードバックを基に、限界領域および日常使いに於いてもずっと乗っていたくなる爽快さ追求した。

 

TGRでは、今後もGRカローラを用いたモータースポーツ参戦を通じて意のままの走り、ドライバーを魅了する野性味を追求していくと述べている。

 

主な改良内容

 

1. 更なる野性味の追求

 

【旋回性能の進化】
前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵し、旋回時の車両姿勢と内輪の接地荷重特性を改善することで旋回中の車両安定性を向上した。

 

 

リヤアクスルの回転中心であるトレーリングアーム取付点を上げることで加速時のリヤの沈み込みを低減。アクセル操作に対する車両姿勢変化を抑えることで、駆動力の応答性を向上させるとともに安定した姿勢でのコーナーリングを実現する。

 

 

リヤのコイルスプリングとスタビライザーのばね特性を見直し、それぞれのロール剛性の分担率を最適化することで、旋回時のリヤタイヤの接地性を向上させ、車両コントロール性を高めた。

 

【加速性能の進化】
スポーツ走行でのエンジン使用領域を分析し、コーナーでの立ち上がり加速に重要な中速域でのエンジントルクを現行型に対して30N・m増加させ、最大トルクを400N・mまで高めた。

 

 

進化型GRヤリスにも採用した、世界トップレベルの変速スピードを目指した新開発8速ATのGR-DATを搭載。

 

従来は減速度や車両速度などの車両状態に基づき変速させていたところを、よりドライバーの意図を反映するために、ブレーキの踏み込み方・抜き方、アクセル操作まで細かくモニタリング。

 

その運転状況を先読みし、プロドライバーによるシフト操作と同じようなタイミングでのギヤ選択を実現。シフト操作に気を取られず、ステアリング、アクセル、ブレーキの運転操作に集中できることにより、スポーツ走行の楽しさを広げたという。

 

GAZOO Racing Direct Automatic Transmission(GR-DAT)

 

【冷却性能と空力性能の進化】
GR-DAT搭載車にはエンジン始動時の暖気促進も兼ねる水冷式ATFウォーマー&クーラーに加え、空冷式ATFクーラーを標準装備。またスポーツ走行を考慮して、エンジン冷却を強化するためにサブラジエーターを設定( 米国仕様は[Core/Premium/ Premium Plus]の3グレード設定。Premium Plusに標準装備、Core ・Premiumにメーカーオプション )として設定した。

 

空冷式ATFクーラー前のロアグリルに冷却用の開口を設定。フロントバンパー側面のサイドダクトに空気の排出用の開口を設けることで冷却用の空気をスムーズに排出できる構造を採用した。

 

より安定した制動力を確保するブレーキダクトを採用。フロントブレーキローターに直接風を導いて冷却効果を向上することで、ブレーキ温度の上昇を抑制する。

 

A: サブラジエーター/B:ブレーキダクト/C:ラジエーターグリル/D:インタークーラー/E:空冷ATFクーラー[GR-DATに標準装備]
A: サブラジエーター
B: ブレーキダクト
C: ラジエーターグリル
D: インタークーラー
E: 空冷ATFクーラー[GR-DATに標準装備]

 

バンパーコーナー部へ安定的に小さな乱気流を発生させる小さな段差を設定し、バンパーコーナー部からの空気の剥離を抑制。冷却性能強化のため必要な各機構を追加しつつ、操縦安定性を確保した。

 

 

空気をスムーズに排出するサイドダクトを設定。ATFクーラーから排出された空気がサイドの空気の流れを乱すことなく後方へ流れるよう計算された突起形状を採用した。

 

 

【減速性能の進化】
限界領域でも安全安心で懐の深いクルマに近づけるためABSを改良。上下Gセンサーにより、ABS作動輪の接地荷重をモニタリングすることでABS作動時の安定した制動力を実現した。

 

【クルマとの一体感の進化】
ステアリングコラムとインストルメントパネルリインフォースメントの締結部に締結剛性の高い溝付ワッシャーボルトを採用。直進安定性とステアリング操作に対するダイレクト感を向上させた。

 

ステアリングコラム(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)

 

シャシー部品の締結ボルトの一部に締結剛性の高い特別なボルトを採用。ロアアームとロアボールジョイントの締結部はステアリング操作に対する応答性を、リヤショックアブソーバーとボディの締結部はステアリング操作に対するリヤのグリップ感を向上させた。

 

ロアアーム×ロアボールジョイント(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)

 

リヤショックアブソーバー×ボディ(画像はプロトタイプのため、最終仕様と異なる可能性があります)

 

クラッチシステムのトータルレバー比やクラッチカバー、ターンオーバースプリングの荷重特性を最適化することで、クラッチペダルの操作性を向上。ピーク踏力を高めに設定。

 

これにより踏みごたえのあるペダル操作フィーリングとした他、ピーク踏力以降は、ペダルストロークでの踏力を減少させることでペダルの踏み切り感を向上させている。

 

更にスポーティーな操作感となるようにクラッチ特性を最適化し、戻し側の荷重増加による足への追従性、半クラッチストロークの短縮による操作性を向上した。

 

▼進化型GRカローラ Premium Plus(米国仕様)主要諸元

全長: mm 4,410
全幅: mm 1,850
全高: mm 1,480
ホイールベース mm :2,640
トレッド(フロント・リヤ) mm: 1,590/1,620
乗車定員: 5
車両重量 kg: 1,500(GR-DAT搭載モデルは1,520)
エンジン: 直列3気筒インタークーラーターボ
型式: G16E-GTS
内径×行程 mm: 87.5 X 89.7
総排気量 L: 1.618
最高出力 kW(PS)/rpm :224(304)/6,500
最大トルク Nm(kgf-m)/rpm: 400(40.8)/3,250~4,600
トランスミッション: iMT(6速マニュアルトランスミッション) or GR-DAT(8速オートマチックトランスミッション)
駆動方式: スポーツ4WDシステム“GR-FOUR”電子制御多板クラッチ式4WD(3モード選択式)
差動装置

フロント: トルセン®LSD※5
リヤ: トルセン®LSD(トルセン®は株式会社ジェイテクトの登録商標)
サスペンション: フロント マクファーソンストラット式
リヤ ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ

フロント ベンチレーテッドディスク(18インチアルミ対向4ポットキャリパー)
リヤ: ベンチレーテッドディスク(16インチアルミ対向2ポットキャリパー)
ホイール :18インチ マットブラック 15スポークキャストアルミホイール
タイヤ(フロント・リヤ) :235/40R18 ミシュラン Pilot Sport 4
燃料タンク容量 L :50

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。