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2024年11月28日【新型車】

TGR、スープラを一部改良&特別仕様車を追加

坂上 賢治

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写真の上段はスープラ(3.0L)一部改良モデル(日本仕様・プロトタイプ)/下段は特別仕様車 スープラ “A90 Final Edition”(日本仕様・プロトタイプ)

 

TOYOTA GAZOO Racing( TGR )は11月28日、3.0Lモデルのスープラを一部改良した。また併せて特別仕様車の〝A90 Final Edition〟も追加発表した。当該特別仕様車は、グローバルで300台の限定販売としている。

 

スープラは、1978年の初代誕生以降、直列6気筒エンジンのFR車という特徴を継承し進化し続けてきた。2020年および2022年には一部改良モデルを発売。またモータースポーツ参戦車両としてSUPER GT参戦の他、スープラをベースとしたレース専用車両のGR Supra GT4も世界で活躍している。

 

スープラ(3.0L) 一部改良モデル(日本仕様、プロトタイプ)

 

そんなスープラは2019年、マスタードライバーのモリゾウこと豊田会長の強い想いで17年ぶりの復活を果たしたクルマだ。発表に際し豊田会長は、「ニュルブルクリンクでの運転訓練で長い時間を一緒に過ごしたスープラは、自分にとって特別な旧友のような存在です。

 

 

当時、ニュルブルクリンクで他のメーカーが発売前のプロトタイプカーを走らせている中、私たちは、既に生産を終了した古いスープラでしか走ることができず、とても悔しい想いをしました。スープラ復活を待ち望んでいたのは世界中の多くのファンだけでなく、私もスープラを復活させたいという想いを密かに持ち続けていました。

 

新型GRスープラは、ニュルブルクリンクで鍛えられ、生まれたクルマです。走る楽しさ以上の経験を提供できるクルマになったと、自信を持ってお伝えします」と述べた。

 

今回の一部改良モデルでは、市街地からワインディング、サーキットまで存分に走りを愉しめるよう、更なる一体感のある走りを追求。安心・安全のためブレーキ性能を向上させた上で、ボディ、サスペンション、シャシー剛性の向上およびチューニングの最適化、空力性能の改善を施した。

 

 

また、先の通り現行スープラが、世界中のファンから支持を得ていること。世界各国のGTカーレース、ドリフト競技、およびNASCARなど様々なモータースポーツの現場でも多くのチームに採用されていることに対する感謝を込め、現行スープラの集大成として台数限定特別仕様車のスープラ〝A90 Final Edition〟を設定した。

 

同車はエンジン出力・トルクを向上させ、ブレーキやボディ剛性を強化し、レーシングカーに多く採用されるKW社のサスペンションシステムやハイグリップタイヤを採用するなど、走りに関する様々な要素をアップグレード。進化に合わせた最適なチューニングを行い、究極・最高の性能・仕様を備えた特別なモデルを作り上げた。

 

同社では、スープラ〝A90 Final Edition〟を集大成として現行スープラの生産終了を予定しているが、今後もモータースポーツ活動を通じて、スープラを鍛え続けていくと述べている。

 

なお新型スープラの導入予定地域と発売予定時期は以下の通り。

 

  • スープラ(3.0L)一部改良モデル:日本、欧州、豪州などグローバルで順次導入予定 2025年春以降順次発売予定
  • 特別仕様車スープラ “A90 Final Edition” :日本並びに欧州( 日本販売は現在検討中。欧州は2025年春を予定 )

 

 

スープラ(3.0L) 一部改良モデルの車両概要

 

1. ドライブトレーン
新しいシャシーセッティングに伴いアクティブディファレンシャルの制御を最適化。旋回中のアンダーステアを抑制し、ハンドリングを改善しました。

 

2. ブレーキ
フロントに大径化したbrembo製ディスクブレーキを採用し、制動性能を強化した。

 

3. ボディ・サスペンション
状況に応じて減衰力を調整する電子制御ダンパーの特性を見直し、合わせてフロントスタビライザーも強化することで、走行性能を向上させた。

 

前後スタビライザーブラケットにアルミ強化品を採用。また、フロントコントロールアームに強化ゴムブッシュを、リヤサブフレームに強化ゴムマウントを採用することで、サスペンションとボディの一体感を高め、ロードインフォメーションをより伝わりやすくし、正確なハンドリングに貢献する。

 

リヤ床下ブレースの構造を強化することでボディ剛性を高め、ダイレクト感やグリップ感、コントロール性を向上させた。また今回の進化点に併せEPS制御を最適化し、ダイレクト感のあるステアリングフィールを実現。コントロール性能を向上させている。加えて前後のキャンバー角を見直し、グリップを高めてコーナリング時の安定性を向上させている。

 

4. タイヤ・ホイール
ホイールカラーにマットブラックを採用し、精悍なスタイリングに磨きをかけました。

 

5. 外装
ダックテールタイプのカーボンリヤスポイラーを採用。フロントにはホイールアーチフラップを追加し、フロントタイヤスパッツの高さを拡大することで前後の空力バランス、ダウンフォースを最適化し接地性とハンドリング性能を向上しました。

 

6. 内装
ドライバーシートにはGRロゴ刺繡を施したアルカンターラ®+本革シート表皮を使用。シフトノブのリングおよびステッチ( 6速マニュアルのみ )、シートベルトに赤色を採用しスポーティーさを強調させている。

 

 

 

特別仕様車 スープラ “A90 Final Edition”の車両概要

 

1.パワートレーン
吸気経路を見直し、低背圧触媒を採用することで圧力損失を低減。それに合わせてエンジン制御を最適化することで出力を285kW(387PS)から320kW( 435PS )へ、トルクを500N・m(51.0kgf/m)から570N・m(58.1kgf/m)へ向上させ、加速性能とレスポンスを向上させた。

 

エンジンオイルパンにバッフルプレートを追加。コーナリング性能向上に伴う高G域でのオイルの偏りを防止した。

 

エンジン性能向上に伴い、冷却性能を強化。ラジエーター冷却ファンを強化すると共にサブラジエーターを追加し、さらに、ディファレンシャルギアカバーの冷却フィンを大型化した。

 

 

新しいシャシーセッティングに伴いアクティブディファレンシャルの制御を最適化。旋回中のアンダーステアを抑制し、ハンドリングを改善させた。加えてアクラポヴィッチ製チタンマフラーを採用し、迫力のあるエンジンサウンドを実現した。

 

2:ブレーキ
フロントにbrembo製19インチブレーキと高μブレーキパッドを採用し制動性能を強化。更に前後にフローティング構造のドリルドディスクを採用し、スポーツ走行時に於いても優れた制動力を確保した。

 

またステンレスメッシュのブレーキホースを採用し、制動時のホース膨張による圧力伝達損失を押さえ、強化したブレーキシステムの性能を最大限引き出した。

 

3.ボディ・サスペンション
GR Supra GT4が採用しているKW製サスペンションを採用。伸び側16段、縮み側12段の減衰力調整を備えて様々な使用状況に対応した他、前後スタビライザーを強化することで、限界性能を向上させている。

 

フロントロアアームに強化ゴムブッシュ、フロントコントロールアームにピロボールジョイントを採用し、リヤサブフレームをGR Supra GT4と同じアルミリジッドマウントとすることで、サスペンションとボディの一体感を向上。ロードインフォメーションがより伝わりやすくなり、正確なハンドリングに貢献する。

 

フロントカウルブレースを強化した上で、フロント床下ブレースを追加。リヤ床下ブレースの構造を強化し、室内には強化ラゲージクロスバーを採用することでボディ剛性を高め、ダイレクト感やグリップ感、コントロール性を向上させた。

 

今回の進化点にあわせ、EPS制御を最適化し、ダイレクト感のあるステアリングフィールを実現し、コントロール性能を向上した。前後のキャンバー角を見直し、グリップを高めてコーナリング時の安定性能を高めた。

 

4.タイヤ・ホイール
10mm拡幅したハイグリップタイヤ「MICHELIN PILOT SPORT CUP 2」を採用。コーナリング時の安定性および限界性能を向上させている。フロント19インチ、リヤ20インチの軽量ホイールにはTGRのロゴを刻印している。

 

特別仕様車 スープラ “A90 Final Edition”(日本仕様、プロトタイプ)

 

5.外装
GR Supra GT4の開発を担当するTOYOTA GAZOO Racing Europe(以下、TGR-E)が空力性能開発を担当。TGR-Eの持つモータースポーツ参戦を通じて得た知見と、風洞実験施設を用いてテストを重ねた。

 

カーボンフロントスポイラー、カーボンフロントカナード、フロントセンターフラップを採用。更にGR Supra GT4を彷彿させるスワンネック構造のカーボンリヤウイングを装備することで前後の空力バランス、ダウンフォース、ドラッグを最適化させることで、接地性とハンドリング性能を改善させた。

 

カーボンボンネットダクトを追加。脱着式のインナーダクトを採用し、取り外し時には冷却性能向上に寄与するようにした。

 

 

6.内装
シートパッドにアルカンターラ®素材を使用したレカロ製カーボンフルバケットシート「RECARO Podium CF」を採用。走行性能向上によりドライバーにかかるGが増加する状況に於いても、しっかりと体をホールドし正確なドライビングをサポートする。また運転席シートを赤色とし、ドライバーオリエンテッドコクピットを強調した。

 

ステアリングホイール、ドアトリム、 センターコンソールニーパッド 、センターアームレスト、シフトノブ・ブーツ、インストルメントパネル中央部の表皮にアルカンターラ®素材を使用。また、赤色シートベルト、専用カーボンスカッフプレートを採用することにより台数限定モデルの特別感を高めた。

 

 

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スープラ(3.0L)一部改良モデル、特別仕様車 スープラ “A90 Final Edition”主要諸元 (プロトタイプ、社内測定値)

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スープラ(3.0L)一部改良モデル

  • 全長 mm :4,380
  • 全幅 mm :1,865
  • 全高 mm :1,295
  • ホイールベースmm :2,470
  • トレッド( フロント・リヤ ) mm :1,595・1,590
  • 乗車定員 :2
  • 車両重量 kg:
     1,520( 6速マニュアル )
     1,530( 8速オートマチック )
  • エンジン:直列6気筒
  • 型式:B58B30O1
  • 内径×行程mm:82.0 x 94.6
  • 総排気量 L:2.997
  • 最高出力 kW( PS )/rpm:285( 387 )/5,800
  • 最大トルク Nm( kgf-m )/rpm:500( 51.0 )/1,800~5,000
  • トランスミッション:6速マニュアル/8速スポーツオートマチック
  • 駆動方式:FR( 後輪駆動方式 )
  • 差動装置:
     F: – –
     R: アクティブディファレンシャル
  • サスペンション:
     Fロント マクファーソンストラット
     Rヤ マルチリンク
  • ブレーキ:
     F; brembo製18インチアルミ4ポット対向キャリパー+374mm径ディスク
     R: フローティングキャリパー+345mm径ディスク
  • ホイール:19インチ鍛造アルミホイール
  • タイヤ( F+R ):255/35ZR19・275/35ZR19 MICHELIN PILOT SUPER SPORT
  • 燃料タンク容量 L:52

 

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特別仕様車 スープラ “A90 Final Edition”

  • 全長 mm:4,380
  • 全幅 mm:1,865
  • 全高 mm:1,275
  • ホイールベース mm:2,470
  • トレッド( フロント・リヤ ) mm:1,595・1,585
  • 乗車定員:2
  • 車両重量:1,528
  • エンジン:直列6気筒
  • 型式:B58B30O1
  • 内径×行程 mm:82.0 x 94.6
  • 総排気量:L 2.997
  • 最高出力 kW(PS)/rpm:320( 435 )/6,000
  • 最大トルク Nm( kgf-m )/rpm:570( 58.1 )/4,500
  • トランスミッション:6速マニュアル
  • 駆動方式:FR( 後輪駆動方式 )
  • 差動装置:
     F: – –
      R: アクティブディファレンシャル
  • サスペンション:
     F:マクファーソンストラット
     R:マルチリンク
  • ブレーキ:
     F:brembo製19インチアルミ4ポット対向キャリパー+395㎜径フローティングドリルドディスク
     R:フローティングキャリパー +345mm径フローティングドリルドディスク
  • ホイール:
     F:19インチ鍛造アルミホイール
      R:20インチ鍛造アルミホイール
  • タイヤ( F+R ):265/35Z1R19・285/30ZR20 MICHELIN PILOT SPORT CUP2
  • 燃料タンク容量 L:52
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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。