帝国データバンクは9月5日、特許を取得した「個別企業間の全取引シェアを推計するモデル」に基づき新開発した「商流圏~売上高依存度推計データ」を用いて、日野自動車グループに関連する取引金額について試算・分析を行った。( 坂上 賢治 )
減産による影響は部品メーカーや周辺産業に波及していくとみられる
先に日野自動車の排出ガスや燃費の性能などを偽っていた問題に於いて以降、新たに主力の小型トラックでも不正が見つかり、同社の国内生産のうち約6割を停止すると発表。自動車産業は裾野が広く、今後減産による影響は部品メーカーや周辺産業に波及していくとみられる。
これを踏まえ帝国データバンクは、自己保有の「商流圏~売上高依存度推計データ」を元に、日野自動車並びに同社グループの計6社に対し、部品などのモノ・サービスを提供する周辺産業(商流圏)での取引規模を、2021年時点の売上高を基準に推計した。
その結果、取引額が判明した約5000社で年間最大約9796億円、月平均で816億円の取引が、同グループの商流圏内で発生していることが判明した。日野自の生産が全面的にストップした場合、取引企業や周辺産業全体で年間最大約1兆円の取引が消失するといった影響が出る可能性があると言う。
4割を占める国内販売計画の白紙で最大年1兆円の取引が消失リスクに
また企業売上高で日野自グループへの依存度をみると、同グループとの取引額が売上高全体の5%に満たない企業の割合が全体の約8割を占めた一方で、10%を超える企業の割合も全体の約1割を占めているとした。
更に地域別にみた取引額の影響では、東京都が最も多く2505億円にのぼり、このうち東京23区外の「多摩地区」が684億円を占めた。これは日野自のマザープラントとなる日野工場(東京・日野市)を中心に部品などを供給するサプライヤーが多いためと分析している。
結果、日野自動車のディーゼルエンジンの性能試験を巡る不正で、4割を占める国内販売のほとんどで車両生産計画が白紙となっている。
経営を支えきれなくなったサプライヤーの市場退出などが発生する可能性も
昨月末時点でも「不正対象車種の出荷再開時期が見通せない」状況だった中、企業からは「この先どこまで行けば終止符が打てるのか」「日野の不正申請問題で大打撃を受けている」など、日野自向けの取引が大きいサプライヤーを中心に、人員配置や原材料調達面で既に甚大な影響が及んだ。
そのなかで日野自は2022年4-6月期に於いて、仕入先に対する補償など20億円の特別損失を計上。公的金融機関などでも資金繰り支援を受け付ける相談窓口を設置するなど、生産停止の影響を受ける中小企業・小規模事業者向けのフォローが続いている。
ただ月平均で最大800億円、年間で1兆円に及ぶ取引規模の維持は中長期に及ぶほど難しく、経営を支えきれなくなったサプライヤーの市場退出などが今後発生する可能性があると結んでいる。