11月8日、スペインのサーキット・リカルド・トルモで開催されたMotoGP第13戦ヨーロッパGPの決勝において、チームスズキエクスターは、ジョアン・ミルがMotoGPクラス初優勝、またチームメイトのアレックス・リンスが2位を記録し、「完璧な日曜日」を達成した。
チャンピオンシップランキングで2位と14ポイント差でヨーロッパGPを迎えたランキングトップのミルは、プレッシャーを見事にコントロールし27周のレースを制した。決勝を5番手グリッドからスタートしたミルはオープニングラップでポジションをひとつ上げ4番手に。ミルはその後も果敢に攻め、ポジションを3番手、そして2番手に上げる。
ウェットパッチの残るサーキットで数人のライダーが転倒する中、ミルは驚異的なレースペースで17周目の11コーナーでチームメイトのアレックス・リンスをオーバーテイクする。その後ミルは後ろを振り返ることなく20周目にはファステストラップを記録し、最後まで猛チャージを繰り返す。ラスト5ラップでは後続と1秒の差をつけ、ミルはMotoGPクラス初優勝を飾った。
一方のアレックス・リンスはグリッド2番手からロケットスタートを切り、安定したハイペースでレースをリード。リンスは17周目まで常にレースをリードし続けるが、ギヤのシフトミスにより17周目にチームメイトにオーバーテイクを許す。3番手を走行するポル・エスパルガロ(KTM)の激しい追い上げのプレッシャーに遭うも、リンスは最後までポジションをキープし、2位でチェッカーを受けて今季3度目の表彰台を獲得した。リンスは今日の結果により、ランキングトップのチームメイトのミルから37ポイント差のファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)と同ポイントの3位となった。
チームスズキエクスターは、3戦連続のダブルポディウム獲得となったが、スズキの1-2フィニッシュは1982年ドイツGPのランディ・マモラ、バージニオ・フェラーリ以来の記録となる。またチームスズキエクスターはコンストラクターとチームチャンピオンシップでもトップポジションとなっている。
チームメンバーのコメントは以下の通り。
■ 河内 健 テクニカルマネージャー
「今日はチームにとってパーフェクトな結果となりました。ジョアンに優勝おめでとう!と心から言いたいです。アレックスも前戦に続いて連続で2位表彰台を獲得してくれ、素晴らしい結果なのですが、多分彼は優勝をしたかったと思うので、悔しい気持ちでいっぱいなのではないかと思います。このようにチームがふたりで競い合って好成績を出すというのが理想の形だと思うので、それを満足に思っています。今週はドライコンディションがあまりなく難しいレースだったのですが、良い結果を出すことができて本当に嬉しいです。来週もここでもう一度レースがありますので、同じ結果を再現できるように頑張りたいと思います。チーム、ライダー、そして日本で開発してくれているスタッフの皆さん、どうもありがとうございました」
■ ダビデ・ブリビオ チームマネージャー
「スズキがMotoGPで1-2フィニッシュをするという展開を長いこと夢見ていましたが、今日それを実現することができて本当に誇りに感じています。このような素晴らしい結果を生むために日々努力を続けてくれたチームとライダー、開発スタッフに心から感謝します。スズキは現在コンストラクター、チーム、ライダーの全てのチャンピオンシップでトップに立っており、この夢のような状態がシーズン最後まで続いて欲しいと願っていますが、あと2戦残っているので気持ちを緩めることなく、最後まで集中して挑戦したいと思います」
■ ジョアン・ミル
「本当に嬉しい!としか言いようがないよ。今週末はチームと僕で完璧な仕事ができたと思う。タイトル争いの渦中にいる時はいつも以上に慎重にならなければならないから、100%の力を出し切って走るのは容易ではないけど、今日は初優勝のチャンスが見えたからなんとしてでもそのチャンスを手に入れたかった。マシンのフィーリングは完璧だったから絶対にいける!と思ったしね。MotoGPクラスで優勝する喜びは一言では言い表せないくらい本当に何とも言えない思いだよ。今週末は天候が不安定で、決勝に向けては不確定な要素も多かったから、その難しい状況で優勝できたなんて本当に夢のようさ。タイトル争いはまだ終わっていないから、来週末もとにかく集中して、自分がやるべきことをしっかりやっていくよ」
■ アレックス・リンス
「レースの大部分をリードできたし、そのまま最後までリードしてゴールしたかったんだけど、17周目の11コーナーでギヤのシフトをミスしてしまってワイドラインになってしまった時にジョアンにオーバーテイクされてしまった。ジョアンがトップに立ってからは彼のペースが本当に速くて、自分も全開で追いかけたけど敵わなかったよ。自分自身は優勝できなかったから完璧なレースだったとは言い難いけど、ジョアンは念願の優勝を手にし、スズキは1-2フィニッシュ。そして僕自身はチャンピオンシップで20ポイントを加算してランキングが上がり、チームにとって最高の1日になってとても嬉しいよ。残り2戦、まだまだ獲得できるポイントは沢山残っているから、最後まで諦めず、来週もできるだけ多くのポイントを獲りにいくよ」