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2019年12月25日【トピックス】

スズキ 軽乗用車「ハスラー」を全面改良

松下次男

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 スズキは12月24日、軽クロスオーバーの「ハスラー」をフルモデルチェンジし2020年1月20日から発売すると発表した。軽ワゴンタイプの乗用車とSUVを融合した新ジャンルの人気車種で6年ぶりの全面改良となる。新車発表会で鈴木俊宏社長は、同車を投入することにより「厳しい(2020年の)市場を刺激し、販売を活性化させたい。たくさんのワクワクを提供できるスズキでありたい」と強調した。(佃モビリティ総研・松下次男)

 

 

新型ハスラーの月販目標は先代モデルより1000台多い6000台に設定

 

 厳しさを増す国内市場の中で、ハイトワゴン、SUVは数少ない成長市場。このため、新型ハスラーの月販目標は先代モデルより1000台多い6000台に設定した。もっと強気な目標も期待されたが、鈴木社長は「必達目標」と述べ、まずはこの目標を着実にクリアーすることを掲げた。

 

広い室内空間の軽ワゴンと、SUVを融合させた新ジャンルの軽クロスオーバー〝ハスラー〟を国内市場に初投入したのは2014年1月。以降、販売目標を上回る存在感を見せ、累計販売台数は48万台に達する。

 

今回刷新した新型ハスラーは「もっと遊べる!もっとワクワク!もっとアクティブな軽クロスオーバー」をコンセプトに、より新しい楽しさ、ワクワク感を追求。一目でハスラーとわかる個性的なデザイン、タフで力強いスタイルを醸し出す。

 

 加えて、技術進化にあわせて、安全装備を大幅に充実させた。夜間の歩行者も検知する衝突被害軽減ブレーキ「デュアルカメラブレーキサポート」、後退時の衝突被害軽減ブレーキ「後退時ブレーキサポート」を標準装備し、前後の安全性能を向上した。

 

さらにターボ車にはスズキの軽初となる全車速での追従機能を備えたアダプティブクルーズコントロール(ACC)や車線逸脱抑制機能を装備する。

 

 

ボディー全体の剛性を高めることにより、優れた操縦安定性と乗り心地を実現

 

 車体骨格周りでは、軽量と高剛性を両立させた新世代プラットフォーム「ハーテクト」と環状骨格構造を採用。使用鋼鈑は、590MPa級鋼鈑の使用を減らし、1.2GPa級と980MPa級の鋼鈑を積極的に活用。ボディー全体の剛性を高めることにより、優れた操縦安定性と乗り心地の実現を目指した。

 

 車両寸法は、全長3395×全幅1475×全高1680mm、ホイールベースは2460mmで先代車に比べ全高を15mm高く、ホイールベースを35mm長くした。全長と全幅は先代車と変わらない。
一方、車内寸法は、長さ2215×幅1330×高さ1270mm。これは先代車に比べ車内長が55mm長く、車内幅は35mm広く、車内高は20mm高くなった計算となる。これはホイールベースの増加分を車内長の拡大に使ったことが理由で、前後の乗員間距離は前代車より35mm長い1035mmを確保している。

 

本格クロスオーバー車として走行性能に影響する前部バンパーの下端と前輪の接地点をつないだ直線角度の〝アプローチアングル〟は29度。後部バンパー下端と後輪の接地点をつないだ直線角度の〝デパーチャーアングル〟は50度である。これは先代車に比べ前者の角度を1度、後者の角度を4度大きくしたことになり、SUVに求められる悪路走破性が高まっている。

 

 パワートレインでは、新開発の自然吸気ガソリンのR06D型エンジン(NA)と、新開発CVTを組みあせることにより、実用速度域での燃費性能と軽快な走りを実現するのに加え、マイルドハイブリッドを全車に搭載した。

 

またロングストローク化させた「R06D」の最高熱効率は約37%に向上させている。これらの結果、WLTCモード走行でハイブリッドGとXグレードの2WD車は、1リットル当たり25キロメートルをの燃費実績を達成。この2車種は50%のエコカー減税(重量税)の対象車となっている。

 

三菱電機製のISG(モーター兼発電機)も出力を、1.6kWから1.9kWに高めて低速域の燃費性能の向上に配慮した。

 

 

スズキの自動ブレーキ昨日搭載車で夜間の歩行者に対応させたのは同新型車で5車種目

 

 安全面では、先進安全運転支援システム(ADAS)を搭載し予防安全性能を改良。同システムの主要機能である自動ブレーキを夜間の歩行者に対応させている。また標識認識と自動ハイビームの機能も追加されている。

 

ちなみに先代車は、日立オートモティブシステムズから調達した自動ブレーキ用のセンサーとしてステレオカメラを使っていた。しかし旧タイプは昼間の車両や歩行者に対応、夜間の歩行者には弱点があった。

 

 そこでスズキは、小型車「ソリオ」、軽商用車「エブリイ」、軽トラック「キャリイ」に準じた新型ステレオカメラを採用して夜間の歩行者に対応させた。スズキの自動ブレーキ昨日搭載車で夜間の歩行者に対応させたのは同新型車で5車種目となった。

 

新たに搭載した同機能は、機械学習による高精度を実現したのに加え、取得データの処理速度を高速化。また搭載チップ数の削減で低コスト化を実現させ、比較的低価格となる軽自動車に対する実装のハードルを低くした。

 

 販売価格の高いターボ搭載車では、コスト面で追加機能搭載の余地があるここと、高速道路での長距離走行が場面が多いと予測。同社製軽自動車で初搭載の全車速対応の先行車追従機能。ステレオカメラで左右の白線を検知して車線逸脱を抑制する機能も搭載している。車線の中央を維持して走行する機能は備えていない。

 

 

スズキは新型ハスラーの投入で2020年の新車販売に弾みをつけたい考え

 

 安全面では、後部バンパーに4個の超音波センサーを搭載。後退時に後方障害物があるのにシフトを「R」に入れ間違えてアクセルペダルを強く踏んだ時にエンジン出力を抑制する。さらに後方障害物と衝突の危険があるとシステムが判断した場合は自動でブレーキを掛ける機能も追加した。

 

 スズキはこの新型ハスラーの投入を初売りと連動させることにより、2020年の新車販売に弾みをつけたい考えだ。鈴木社長は2020年の軽市場について「景気の減速感もあり、なかなか厳しい市場だ」と予測する一方で、「アンテナを高くして、どのようなクルマを(ユーザーが)求めているかを探ることも重要」との考えを示した。

 

 昨今は同ジャンルに係る市場成長によって競合車種の投入も相次ぐ。しかし同社は「ライバルと切磋琢磨することで、さらなる市場活性化が図られ、販売が伸びることを歓迎する」と述べた。新型ハスラーは湖西工場で生産。月間6000台の販売を目指すべく、すでに受注分を順次、納入できるよう生産を始めている。
 価格(税込)は、NAエンジン車が136万5100円から(ADAS非搭載車は128万400円)、ターボエンジン車が145万9700円から。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。