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2024年10月16日【新型車】

スズキ、クーペスタイルのSUV「新型フロンクス」を発売

坂上 賢治

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スズキ代表取締役 社長の鈴木俊宏氏

 

スズキは10月16日、東京都内に報道陣を招き、コンパクトSUVの新型「フロンクス」の発表・発売を明らかにした。目標販売台数(月間) は 1,000台。販売価格は2WDが254万1000円、4WDが273万9000円。先行予約は先の8月1日に開始して主要販社を巡回、既におよそ9000台の受注を獲得したとしている( 坂上 賢治 )

 

スズキ商品企画本部 四輪B・C商品統括部チーフエンジニアの森田祐司氏 スズキ商品企画本部 四輪デザイン部の加藤正浩氏

 

同社によると新型「フロンクス」は、扱い易いクーペスタイルのコンパクトSUVを日本市場で訴求するべく、洗練されたスタイリングと力強さを兼ね備えた車体、並びに仕様として仕立て上げられたモデルだという。

 

発表会見の壇上で鈴木俊宏社長は「新型フロンクスは、世界の70カ国以上での好調な販売実績を持つ世界戦略車です。従ってBセグメントに属する小型SUVの競争が激化する日本市場に於いても、新たなユーザーを獲得して当社のマーケットシェアを拡大してくれるものと確信しています」と述べた。

 

ここで一旦、そんなフロンクスの源流を遡ると2015年登場のバレーノに行き着く。バレーノ自体もモデルチェンジを繰り返しつつ長きに亘り成長を続けたクルマだ。

 

新型フロンクスは、そうしたベースモデルのクーペコンセプトを承継しつつも、より洗練度を高めてスポーツフィーリングに磨きを掛けたモデルとなっている。従って新型フロンクスも長きに亘り、バレーノが生産されてきたインドのグジャラート工場から日本国内に向けて出荷される。

 

スズキ日本営業本部  本部長の玉越義猛氏 

 

同社によると出荷車両は、日本向け仕様車として繊細なチェック工程を受けて送り出され、搭載装備も他国向けの仕様とは大きく異なっている。従ってスズキとしても日本のユーザーが新型フロンクスをインド生産車と捉えることなく、世界のいずれの地域で作っても同一品質を誇るスズキ製品だと捉えて欲しい。当社としても出荷車両については、万全の自信を持って送り出していると話している。

 

実際、今やメーカーを問わず、多くのプロダクトが国家の枠組みを超えて出荷される時代であり、もはや、どの国で作られても心を込めて生産されたスズキ車であることに、疑う余地はないだろう。

 

さて各部を見ると、まずエクステリアは、流麗なクーペスタイルを保ちつつ存在感のあるフロントマスクと2段式のヘッドライト、ダブルフェンダーを設けたことによって力強い演出感が加味されている。それだけ都市の交通環境に於いて、コンパクトSUVが溢れ返る中であっても独自の個性を主張できることに拘ったとしている。

 

 

外寸の実測は、全長3,995mm×全幅1,765mm×全高1,550mmと、後席の足元空間に配慮して横幅に比較的余裕を持たせたサイズとしつつ、最小回転半径は4.8mに収めて日常での使い勝手に配慮した。

 

インテリアは、レーザー調のシート素材に華やかなボルドーの配色を施した上で、内装パネルの一部に金属素材を思わせる高輝度シルバー塗装の加飾を施し、ドライバーを含む乗員に車両の精悍さと強靱な骨格イメージを訴求するものとなっている。

 

 

室内騒音への配慮では、プロペラシャフトの共振を低減させるダイナミックダンパーを装着。フェンダー内部にエンジンの透過音とロードノイズを低減できるポリウレタン樹脂製の隔壁を搭載。4WD車の後輪駆動系に防振ゴムを追加する。併せて前部ドアガラスに加えて後部ドアガラスの厚さを増やす。フェンダーダッシュインナーサイレンサーや遮音壁などを随所に採用するなどで静粛性を高めて、車室内の会話が通り易い環境に配慮している。

 

 

また日常の使い勝手では、手持ちのスマートフォンを手軽に充電するためのワイヤレス充電台を設けたり、スマートフォン自体と連携できるナビゲーション機能を搭載。日本の交通環境下で重宝される電動パーキングブレーキも日本市場向けの専用仕様として標準搭載している。

 

走行性能面では、1.5L K15C型エンジンとマイルドハイブリッドに6AT(6速オートマチックトランスミッション)を組み合わせた上で、日本国内の専用仕様として4WD車が追加設定されている。

 

 

その他での日本国内専用仕様としての装備は数多く、例えば路面状況に合わせて使い分けができる「スノーモード」「グリップコントロール」「ヒルディセントコントロール」の3つのモードも専用搭載されている。

 

またパドルシフトと「スポーツモード」により、エンジンレスポンスが活発化され、更にスポーティな走行も愉しめる仕様だ。そもそも新型フロンクスは、インドで生産して各国へ出荷する世界戦略車であるゆえ、各地域のマーケットに適応させたベース仕様がある。

 

 

一方で日本国内向けの仕様車では、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせにより、検知対象を車両や歩行者、自転車、自動二輪車とし、交差点での検知にも対応した衝突被害軽減ブレーキデュアルセンサーブレーキサポートIIや、高速道路での運転をサポートするアダプティブクルーズコントロール(ACC)[全車速追従機能・停止保持機能付]、車線維持支援機能など、最新の予防安全技術についても日本国内のニーズに沿って充実した装備で固められている。

 

従って経済産業省や国土交通省などが普及を推進する「サポカーS ワイド」、国土交通省による「ペダル踏み間違い急発進抑制装置(PMPD)認定車」に適合している。

 

 

ボディカラーは、2トーンルーフ仕様車が「スプレンディッドシルバーパールメタリック ブラック2トーンルーフ」「アースンブラウンパールメタリック ブラック2トーンルーフ」「オピュレントレッドパールメタリック ブラック2トーンルーフ」「ルーセントオレンジパールメタリック ブラック2トーンルーフ」「アークティックホワイトパール ブラック2トーンルーフ」の5色展開。

 

対してモノトーンは、「スプレンディッドシルバーパールメタリック」「アークティックホワイトパール」「セレスティアルブルーパールメタリック」「ブルーイッシュブラックパール4」の4色がある。

 

 

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なお先の7月に伊豆サイクルスポーツセンターで短時間だけ試乗できたプロトタイプでは、他のライバル車に比べ、横幅のワイド感と背の低さが際立つ印象を受けた。特にブリスターフェンダーを備えた側面のプロポーションは、精悍さを備えている。

 

 

車室空間の居住性は、ヘッドクリアランスに充分な余裕があるが、フロントウインドウやリアウインドウが傾斜しているクーペボディゆえに開放感が高いと言えば嘘になる。しかし見方を変えれば、そのタイト感覚がクーペスタイルの魅力でもある。

 

着座してステアリングを握ってみると、インテリア空間の造形は、比較的コンサバティブな印象を受ける。その分、ワクワク感に欠ける訳だが、各部の操作系は判り易い配置であり、スポーティーな走りを純粋に愉しむには、ストレスなく扱える美点がある。

 

 

走行フィーリングは、伊豆サイクルスポーツセンターの曲がりくねったテストコースを走った限りは好印象だ。勇ましいサウンドと共に力強くダッシュしていく。

 

車室内空間の静かさはコースレイアウト上、中速域位までしか試すことはできなかったが、比較区的低めのギヤボジションで強引に引っ張って行っても、室内で、ボソボソとした小声で、乗員と走行状態を語り合えるほどの静粛性は確保されている。

 

また曲がりくねったコースを走って行くと、2WD(FWD)車のしなやかな走りが好印象だった。今回のテストコースは、比較的スムーズな伊豆サイクルスポーツセンターのロードコースであることを割り引かねばならないが、特にリアサスペンションの路面追従性が優れている。狭いコースを走り回っても伸びやかかつ、追従性の高さが続いた。

 

対して4WDは、リア駆動がプラスされるため車両姿勢が安定するので、ステアリングの切り始めの回頭性が高く、スレレス無く走れる。ただ一旦、旋回状態に入ってしまえば、FWDのバランスも悪い訳ではないので、価格を別にすると2WDと4WDの選択は好みが分かれる。

 

そもそもフロンクスは、爆発的なパワーを備えている訳ではないため、限られたパワーを使い切って軽快にクルマをコントロールしたい向きには2WD(FWD)の選択肢もあるだろう。

 

対してストレスなくドライビングを愉しみたいのであれば4WDとなりそうだ。その後、現段階ではプロトタイプしか乗っていない筆者ではあるが、最終製品となった新型フロンクスは、改めて、どのような印象を提示してくれるだろうか。

 

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▶メーカー希望小売価格(消費税10%込み)

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車種名:フロンクス
エンジン:1.5L DOHC 吸排気VVT(マイルドハイブリッド)
駆動:2WD
変速機:6AT
燃料消費率 WLTCモード走行(km/L):19.0
燃料消費率 JC08モード走行(km/L):21.3
価格(円):¥2,541,000-

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車種名:フロンクス
エンジン:1.5L DOHC 吸排気VVT(マイルドハイブリッド)
駆動:4WD
変速機:6AT
燃料消費率 WLTCモード走行(km/L): 17.8
燃料消費率 JC08モード走行(km/L):20.2
価格(円):¥2,739,000-

 

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▶メーカーオプション(消費税10%込み)

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メーカーオプション名:アークティックホワイトパール塗装車
価格(円):¥33,000-

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メーカーオプション名:2トーンルーフ仕様車
価格(円):¥55,000-

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メーカーオプション名:アークティックホワイトパールブラック2トーンルーフ仕様車
価格(円):¥88,000-

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。