通期業績見通しはインドでの数値算出が困難として前回に続き公表見送り
スズキが8月3日発表した2021年3月期第1四半期(4~6月)連結決算は、期の儲けを示す営業利益が前年同期比97・9%減の13億円と大幅な減益となった。新型コロナウイルス感染症の影響で主力のインドで生産、販売が大きく落ちこんだことなどが響いた。2021年3月期の通期業績見通しはインドでの数値算出が困難として前回に続き公表を見送った。(佃モビリティ総研・松下次男)
第1四半期の売上高は4253億円で前年同期比53・1%減と半減した。主力のインドで四輪車販売が8割強減少するなど、新型コロナの感染拡大により全地域でマイナスとなったのが響いた。
当期純利益は18億円と同95・6%減となった。グローバルの四輪車販売台数は26万3千台で同64・3%減。四輪車の生産台数は23万2千台で同69・3%減となった。
インドは4~6月の生産台数は前年同月比86・8減、四輪車販売台数も同82・1%減
地域別にみると、インドでは新型コロナ感染症に伴うロックダウンが3月末から2か月以上に及び、その後も段階的な解除にとどまり、感染者数も7月中旬には100万人を超えた。
さらに感染者は依然、増加しており、収束の目途が立っていないという。こうした中で、販売店では5月初旬から徐々に稼働を開始、生産についてもマネサール工場、グルガオン工場、グジャラート工場をそれぞれ5月12日から25日にかけて段階的に再開した。
しかし、生産、販売への打撃は大きく、4~6月の生産台数は5万4千台と前年同月比86・8減にとどまり、四輪車販売台数も6万6千台と同82・1%減となった。
この結果、マルチ・スズキ・インディア社の第1四半期業績は当期純損益が円換算で38億円の赤字(前年同期219億円の黒字)に転落。売上高も526億円(同2979億円)と大幅減収になった。
なお、マネサール工場は6月29日から、グルガオン工場は7月6日から2勤交替制を再開しており、グジャラート工場も8月中に2勤交替制を再開する予定。また、工場では出勤時の消毒、体温測定やフェイスシールドでの勤務、さらにパーテーション・アクリル板設置などの新型コロナも感染防止対策を施して生産活動に乗り出しているという。
日本は4~6月期の四輪車販売台数が36・5%減。ASEANも大幅減で影響は全地域に
日本の4~6月期の四輪車販売台数は10万6千台で同36・5%減となった。内訳は、軽自動車が8万8千台で同35・4%減、登録車が1万8千台で同41・4%減の実績。四輪車生産台数は14万7千台で同35・3%減となった。
インドネシア、タイ、フィリピン、ミャンマー、ベトナムのASEAN(東南アジア諸国連合)5か国の四輪車販売台数は各国で新型コロナ感染拡大防止策が実施されたこともあり、1万9千台と同53・6減の大幅な落ち込みとなった。
ASEAN最大のインドネシアでは9千台と同62・8%減、フィリピンも2千台と同70・1%減の落ち込みとなった。タイは5千台で同29・5%だった。
四輪事業の営業利益はゼロ、二輪事業は30億円の赤字、マリン事業他は43億円の黒字
二輪車は新型コロナ感染症の影響を受け、主要市場のアジアでほぼ半減するなど生産、販売とも大きく落ち込んだ。生産台数は18万9千台で同56・0%減となった。販売台数は27万4千台で同39・8%減。うちアジアでは19万9千台と同46・2%の販売台数減となった。
一方で、中国では9万4千台と同8・3%増、北米でも1万9千台と同59%増と二輪車販売を伸ばした。
事業別の業績をみると、四輪事業は営業利益がほぼゼロで、二輪事業は30億円の赤字、マリン事業他で43億円の黒字を達成した。
2020年度の通期業績予想については、インドで新型コロナの感染が依然拡大していることから、現時点で見通しを合理的に算出することが困難とし、前回の2020年3月期決算発表時に続いて未定とした。