国内外の影響を受け、3年振りの減収・8年振りの減益に
スズキは11月5日、2020年3月期第2四半期(2019年4~9月)の連結決算を発表、完成車検査体制の再構築による日本での減産やインドでの四輪車販売減などにより3年振りの減収となり、営業 利益も8年振りの減益となった。(佃モビリティ総研・間宮 潔)
低迷しているインド市場へのテコ入れで「10月以降、卸販売および末端販売が上向いている」と長尾正彦取締役常務役員は指摘しながらも「なお市場の状況を見極める」と述べ、通期業績予想は10月10日 発表の通り、期初予想に対して「下方修正」を改めて示した。スズキの第2四半期連結売上高は前年同期比9%減の1兆7554億円、営業利益は同40.2%減の1186億円、当期純利益で同41.8%減の793億円とし、数年振りの‶減収減益〝となった。当期純利益では10年振りの減益とした。
四半期ごとの業績推移をみると、売上高は2018年3月期の第4四半期(1~3月)と2019年3月期の第4四半期(同)に1兆円の大台にのせたが、今四半期(7~9月)では8479億円と、1~2年前の9000億円台を下回っ た。営業利益でも559億円で、昨年1~3月期の1165億円をピークに半減した。この結果、通期業績予想は、期初の連結売上高3兆9000億円、営業利益3300億円、当期純利益2000億円に対して、売上高を3兆5000億円、営業利益を2000億円、当期純利益を1400億円にそれぞれ下方修正した(10月10日発表済み)。
スズキは2015年度から次の100年を展望した新中期経営計画「SUZUKI NEXT 100」を展開しており、2020年3月期が最終年度にあたる。最終年度の目標は売上高3兆7000億円、営業利益率7%とするもので、結果的に未達になる見込みだが、前年度の19年3月期売上高では3兆8715億円、営業利益率8.4%(3244億円)の実績をあげている。
中計策定に柔軟性をもたせ右肩上がり一直線の計画見直しへ
鈴木俊宏社長は「残念ながら、このままでは達成できない。これらのことを加味しなが ら次の5年中期計画、あるいは長期になるかもしれませんが、もう一回数値を精査しながら計画を立てることで対処したい」とコメントした。また2020年度以降の経営について、鈴木社長は「必ず右肩上がりで行くかというとそうではないので、こういうことを含めて、これからの業績、グローバル経済がどうなるかを反映させながら次の中期計画をたてたい」と計画策定に柔軟性をもたせる考えを示唆した。
スズキの今年上半期(4~9月)四輪車世界販売は前年比17.2%減の140万8000台。うち日本市場は同4.6%減の33万3000台で、完成検査体制再構築のための減産が響いた。最大のインド市場は同26.5%減の67万5000台と昨年9月の台風被害で農村部が疲弊しており、ローン貸し渋りなど需要低迷が続いている。インドを除くアジアもパキスタン、インドネシアを中心に低調で、同19.1%減の16万2000台だ。唯一好調なのが欧州市場で同7.3%増の14万9000台となった。
一方、二輪車の世界販売は前同期比2.1%増の87万6000台と堅調で、低迷するインドでスクーターが人気となり、33万9000台で14.9%の伸びを示した。逆に中国は16万3000台で17%減となった。
事業別業績(上半期)では、主力の四輪事業がOEMを含め売上高が1兆5814億円(前年度上期比10.2%減)、営業利益が1061億円(同42.8%減)と減収減益となった。これに対して二輪事業は売上高が1265億円(同0.2%増)、営業利益が17億円(同56.8%増)となり、マリンその他事業も売上高が475億円(同13.6%増)、営業利益が108億円(同20.2%増)と共に増収増益となった。
なお決算会見で、スズキは国内における完成検査再発防止策の状況を10月18日に国土交通省に報告、来年3月までに対策を完了させ、生産を正常化させるとした。また改善効果を上げるため、検査部門だけでなく製造品質や設備管理の改善にも広げる点を指摘した。来年4月以降の第二段階では、検査ラインのレイアウト変更など最適化を図る。カメラとAIによる合否の判定の自動化、チェックシートの電子化なども推進し、より完成度の高い検査体制を構築する方針を示した。
またスズキがトヨタ自動車と資本提携したことに関連し、トヨタ子会社のダイハツ工業が新型SUV(ロッキー)を発売するなど競合が激しくなることが懸念される点について、鈴木社長は「ダイハツとの棲み分けをスズキが考えるということはあり得ません。スズキが今やっているバリーエーションの中でしっかりクルマを仕立てていく、自主展開している。互いに競争しながら技術を伸ばしていかないと意味がない。スズキらしさで勝負していきたい」と強調した。