車格や車両価格などを度外視
して、すべてのSUBARU車が
安全面で最高評価であることは、ごくあたりまえのことだった
また今やSUBARUの金字塔となっている安全技術『アイサイト』は、同社拠点がある群馬の開発拠点で、延べ20年間も続けられてきた基礎研究がその源流になっている。
実は吉永社長はある日、まだ『アイサイト』実用化で自身がプロジェクトのゴーサインすら出していなかった頃に、そんな群馬の開発拠点で黙々とアイサイトの基礎研究を続ける技術陣に対して、ひとつの質問をした。それはこうだ。「今、生涯掛けて取り組まれている今の開発テーマは、いつ報われるか判らない。
そんな中で皆さんは、この研究開発に対して、何をモチベーションに取り組んでいるのですか」と、あえてその『答え』を訪ねたのだと云う。
そして、そこで得た答えこそがSUBARUの現在の立ち位置につながっており、ひいては、その結果が米国の自動車安全基準である「Top Safety Pick(当地の自動車安全基準の最高評価)」の全車種獲得につながっているとした。
吉永氏によると、この時、彼らは以下ような趣旨のことを語ったのだと云う。「SUBARUの技術陣にとしては、数あるSUBARU車のなかで特定のクルマだけが最高評価を受けること自体が異常で恥ずかしいことです。自分たちが開発して世に送り出すクルマは、車格や車両価格などを一切問わず、どのクルマであっても、全車が最高評価であることが、ごくあたりまえの事なのです。我々はクルマの安全性に対して、こうしたあたりまえの努力をしているのであり、これについては一切妥協したくありません」と。昨夏の壇上で吉永社長は、この技術者からの回答を終盤で披露してスピーチを結んでいた。
そんな吉永氏の語りかけは、なんらかのモノ造りメーカーの経営者であれば誰もが感激し、羨むばかりの自社従業員達の熱く・静かな「こころざし」である。しかしその想いは、本当に車両製造の最終段階の現場にまで確実に浸透していたのか、いや浸透していたのにも関わらず、わずか数年の間に、何かが、その高い達成目標を瓦解させてしまったのだろうか。
筆者は、昨夏、吉永社長から訊いたSUBARUの強みや企業哲学は、まだまだモノ造りの現場に息づいていると信じているし、プレミアムメーカーを切り拓く道もまだ半ばだ。混迷にある現状を抜け出し、もう一度、強固なブランド価値を打ち立てて欲しいと切に願っている。(会見取材を経て、記事内容を刷新しました。MOTOR CARSより転載 )
同社より公表された測定値等のデータは以下の通り