道路運送車両の保安基準細目を逸脱
SUBARU(スバル)は、完成検査時の燃費・排出ガスの抜き取り検査に関する再調査で新たな不正が判明したと去る6月5日発表した。測定試験の際の「トレースエラー」および「湿度エラー」を有効な測定とした車両があり、その台数は927台にのぼった。国土交通省から、事実関係を調査し報告するよう指示を受けたあと、記者会見した吉永泰之社長は相次ぐ不正発覚について「企業風土の問題] と捉え、こうした問題が二度と起こらないよう「膿を出し切る」と述べるとともに、販売面などへ影響を及ぼすブランドの失墜を食い止める決意を強調した。
また、一連の問題の責任を取るかたちで吉永社長の処遇についても6月22日の株主総会後に就く予定だった代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)の当初の人事案を撤回し、代表権を返上するとともにCEO職を新社長候補の中村知美氏に委譲することを決めた。
新たな不正発覚は、以前の測定値の書き換え問題に伴う国交省の立ち入り検査で指摘を受け、社内調査した結果、わかったものだ。これにより抜き取り調査の不正車両台数は、調査対象の2012年12月以降の6530台のうち、前回発表分とあわせて1551台となった。対象車種は、量産車両を含む多車種に及ぶ。
不正をなぜ有効な測定としたのか今はわからない
今回の不正行為は、JC08モードの燃費・排出ガス測定試験で保安基準の規定から逸脱した速度運転や試験室内の湿度を範囲外でも有効な測定として処理していたもので、前回の書き換えとはやや不正内容が異なる。実際、逸脱した速度運転では警告音が鳴るとし、「なぜ、それを有効な測定としたかは、今後の調査をみなければわからない」(大崎篤常務執行役員)とした。
不正検査車両の品質問題、リコールの可能性については、「不正測定を無効とする本来のかたちで再チェックしたところ、数値は基準内を満たした」(同)とし、現状、問題ないとの見方を示した。 また、昨年末以降は検査工程に監視員をたてるとともに、設備を更新し、システム上、不正ができない仕組みに切り替えたという。
課題は、こうした一連の不正発覚が更なる「スバル」ブランドの毀損につながりかねないことだ。水平対向エンジン、四輪駆動のAWD(4WD)に加え、近年は自動ブレーキ装置の先駆者として高性能、安全性の高いメーカーとして内外で評価を得ていただけに、販売面への影響が懸念される。
これに対し吉永社長は「外部の専門家から、現場の意見が上に上がらないということや、古い体質が残ったままという指摘を受けており、根底に企業風土の問題があると捉えている。これらを時代に即した態勢に変えていく必要がある」と強調。外部の専門家を増やし、検査工程にとどまらず、全社的な規模で企業風土を刷新し、ブランドの回復につなげる考えを示した。( 佃モビリティ総研・松下 次男 )