ステランティス傘下のランチア( Lancia )は2月14日( 欧州発 )、新型イプシロン( Ypsilon )を発表した。このイプシロンは、ステランティスグループにとってもプレミアムBセグメント初のハッチバックであり、同車の登場に伴いランチアは、自らの新時代の到来を高らかに宣言した。( 坂上 賢治 )
ランチアのブランドCEOを務めるルカ・ナポリターノ氏は「私たちは、この新型イプシロンを携えてイタリアからの再出発を果たします。装いも新たになったイプシロンは、輝かしい過去からのデザイン哲学を忠実に受け継ぎながらも、シンプルかつ直感的なブランドテイストを盛り込むことに成功しました。
そんなイプシロンのデザイン哲学は、トリノのデザイン拠点〝チェントロ・スティーレ(Centro Stile)〟のクリエイターと手を取り合い、カッシーナ( Cassina / 17世紀にイタリアで誕生した高級家具メーカー )とのコラボレーション体制を結んだことで成立しました。
そうした結びつきにより、イタリアらしさ溢れる暖かなリビングルームを想わせる空間設計が実現されています。そうした経緯から、新型イプシロンの初期ロットには、ブランドとしてのランチアが誕生した1906年にちなんだ1906台限定のランチア・イプシロン〝エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ( Lancia Ypsilon Edizione Limitata Cassina )〟が用意されます」と述べている。
この限定車によってカッシーナとランチアの両ブランドは、自動車づくりと家具づくりで共にイタリアンデザインを貫く互いの結びつきの強さを確認し合うものになったという。またこれは〝ランチア プーラHPE( Lancia Pu+Ra HPE )〟 のインテリアづくりから始まった新たな旅の始まりだと話している。
そうしたカッシーナとランチアが共に共有しているブランド哲学は、〝過去から未来へと変わらぬ伝統を結びつけること〟に敬意を示す共通の価値観を持つもの同士であること。また、それぞれが独特のデザイン言語を使いつつも、伝統から革新を生み出すことを大切にしていることにある。
従って、双方のコラボレーションによって生まれた限定車のランチア・イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナは、デザイン・機能・快適さの追求にあたってイタリアらしさを貫いたクルマになった。
特に室内空間は、新型ランチア・イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナのエレガントさを表現するための格好のフィールドであったとしている。その取り組みを象徴するデザインアイコンは、カッシーナ製の多機能〝タボリーノ( ミニテーブル )〟だという。
これはバイオベースのプラスチックとサドルレザーの張り地で作られた手仕事的要素溢れるミニテーブルなのだが、それが居心地の良い〝おもてなしの空間〟を作り出すための印であるという。この〝タボリーノ〟があることで、イプシロンのキャビン・スペースは、イタリアらしさ溢れる真のリビングルームとなり、調和のとれたエレガントな空間を演出するのだとしている。
それは、イタリアの精神を大切にし、快適さを忘れず、伝統を受け継ぐための再解釈の精神であり、ランチアの伝統を再設計することを意味する。またそれは革新的なリサイクル素材やリサイクル可能な素材を使用して、未来を生きるランチアを再設計することを意味しするともいう。
それゆえイプシロンのリビングルームは、ランチアの未来を今後も織り上げていくための象徴的な素材を使用することが必須なのであり、100%リサイクル糸を使用した柔らかなランチアブルーのベルベットが〝カネロニパターン〟とのダブルステッチによってシート全体を包み込み、ドアパネルとダッシュボードのアクセントにも同じブルーがあしらわれるなどで、エレガントなインテリア空間を作り出すことに腐心した。
イプシロンのインテリア空間には、インストゥルメンタルパネルに2つの10.25インチ スクリーンが配されており、ドライビング情報と共に新内空間の制御システムが組み合わされて表示され、そのレイアウトと共に色味の両方を自分好みにカスタマイズできる。そうしたキャビンづくりで柱となるものは、ランチア独自のインテリジェントインターフェイスを示すSALAがある。
イタリア語でSALA は〝リビングルーム〟を意味する語句であるが、ランチアにとってSALAは、サウンド・エアライト・オーグメンテーション( Sound Air Light Augmentation )の略を指している。つまり、オーディオ、空調、照明の機能を統合したインフォテインメントシステムをそう呼んでいる。
また先のインテリアの表皮素材で使われたランチアブルーは、エクステリア側のボディワークにも採用されている。アルミ合金製の17インチアロイホイールは、クロムメッキを施さない地肌とブラック処理を組み合わせて、イプシロンの足元に視覚的インパクトをもたらす。
加えてそのボディシルエットでは、まず旗、盾、槍、銘板を現代的に再解釈。フロントグリルデザインを3つの光が重なるディティールとした。また反対のリアセクションは、ランチアストラトスからインスパイヤした丸いLED テールライトとしている。
パワーユニットにテーマを移すと、1906台限定のランチア・イプシロン〝エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナでは100%電気モーターが搭載される。
同ユニットは、WLTP複合サイクルで最大403kmの航続距離が可能で、急速充電を利用すれば24分で搭載バッテリーの蓄電レベルを20%から一気に80%へと高めることができる。また10分の時間さえあれば、100 kmの走行に十分な蓄電量が蓄えられる。当該車両の燃料消費量は100kmあたり14.3~14.6kWhとなる。
またこのクルマは。冒頭にも記したようにステランティス グループ全体のプレミアム B セグメント初のハッチバックであり、広々とした客室をセールスポイントの中心に据えているクルマだ。
そんな新ランチア・イプシロンのターゲット顧客は、若年層から中堅世代を対象としており、彼らは自身のスタイルを維持し続けることと共に、技術革新に伴う環境問題への配慮。最新のトレンドへの敏感さを重視しており、それゆえ生活の足となるクルマは顧客そのものを体験するライススタイルツールとなる。
最後にランチアが目指す電動化戦略は、ステランティスの「Dare Forward」戦略計画に沿って、隔年で少なくとも1台ずつ、3つの新しいモデルを発売することを目指す。従って新型ランチア・イプシロンはBEVバージョンで発売されることになる。
新型ランチア・イプシロン
全長:4.08メートル
車幅:1.76メートル
全高:1.44メートル
車重:1,584kg
セグメント:プレミアムBセグメントハッチバック
パワーユニット:出力115 kW/156 馬力、トルク260Nm
充電時間:DC/24分(20%~80%)
エネルギー消費:100kmあたり14.3~14.6kWh
航続距離:最大403km