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2024年2月15日【新型車】

ステランティス、新型ランチア・イプシロンを初披露

坂上 賢治

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ステランティス傘下のランチア( Lancia )は2月14日( 欧州発 )、新型イプシロン( Ypsilon )を発表した。このイプシロンは、ステランティスグループにとってもプレミアムBセグメント初のハッチバックであり、同車の登場に伴いランチアは、自らの新時代の到来を高らかに宣言した。( 坂上 賢治 )

 

 

ランチアのブランドCEOを務めるルカ・ナポリターノ氏は「私たちは、この新型イプシロンを携えてイタリアからの再出発を果たします。装いも新たになったイプシロンは、輝かしい過去からのデザイン哲学を忠実に受け継ぎながらも、シンプルかつ直感的なブランドテイストを盛り込むことに成功しました。

 

 

そんなイプシロンのデザイン哲学は、トリノのデザイン拠点〝チェントロ・スティーレ(Centro Stile)〟のクリエイターと手を取り合い、カッシーナ( Cassina / 17世紀にイタリアで誕生した高級家具メーカー )とのコラボレーション体制を結んだことで成立しました。

 

そうした結びつきにより、イタリアらしさ溢れる暖かなリビングルームを想わせる空間設計が実現されています。そうした経緯から、新型イプシロンの初期ロットには、ブランドとしてのランチアが誕生した1906年にちなんだ1906台限定のランチア・イプシロン〝エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ( Lancia Ypsilon Edizione Limitata Cassina )〟が用意されます」と述べている。

 

 

この限定車によってカッシーナとランチアの両ブランドは、自動車づくりと家具づくりで共にイタリアンデザインを貫く互いの結びつきの強さを確認し合うものになったという。またこれは〝ランチア プーラHPE( Lancia Pu+Ra HPE )〟 のインテリアづくりから始まった新たな旅の始まりだと話している。

 

そうしたカッシーナとランチアが共に共有しているブランド哲学は、〝過去から未来へと変わらぬ伝統を結びつけること〟に敬意を示す共通の価値観を持つもの同士であること。また、それぞれが独特のデザイン言語を使いつつも、伝統から革新を生み出すことを大切にしていることにある。

 

 

従って、双方のコラボレーションによって生まれた限定車のランチア・イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナは、デザイン・機能・快適さの追求にあたってイタリアらしさを貫いたクルマになった。

 

特に室内空間は、新型ランチア・イプシロン・エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナのエレガントさを表現するための格好のフィールドであったとしている。その取り組みを象徴するデザインアイコンは、カッシーナ製の多機能〝タボリーノ( ミニテーブル )〟だという。

 

これはバイオベースのプラスチックとサドルレザーの張り地で作られた手仕事的要素溢れるミニテーブルなのだが、それが居心地の良い〝おもてなしの空間〟を作り出すための印であるという。この〝タボリーノ〟があることで、イプシロンのキャビン・スペースは、イタリアらしさ溢れる真のリビングルームとなり、調和のとれたエレガントな空間を演出するのだとしている。

 

 

それは、イタリアの精神を大切にし、快適さを忘れず、伝統を受け継ぐための再解釈の精神であり、ランチアの伝統を再設計することを意味する。またそれは革新的なリサイクル素材やリサイクル可能な素材を使用して、未来を生きるランチアを再設計することを意味しするともいう。

 

それゆえイプシロンのリビングルームは、ランチアの未来を今後も織り上げていくための象徴的な素材を使用することが必須なのであり、100%リサイクル糸を使用した柔らかなランチアブルーのベルベットが〝カネロニパターン〟とのダブルステッチによってシート全体を包み込み、ドアパネルとダッシュボードのアクセントにも同じブルーがあしらわれるなどで、エレガントなインテリア空間を作り出すことに腐心した。

 

 

イプシロンのインテリア空間には、インストゥルメンタルパネルに2つの10.25インチ スクリーンが配されており、ドライビング情報と共に新内空間の制御システムが組み合わされて表示され、そのレイアウトと共に色味の両方を自分好みにカスタマイズできる。そうしたキャビンづくりで柱となるものは、ランチア独自のインテリジェントインターフェイスを示すSALAがある。

 

イタリア語でSALA は〝リビングルーム〟を意味する語句であるが、ランチアにとってSALAは、サウンド・エアライト・オーグメンテーション( Sound Air Light Augmentation )の略を指している。つまり、オーディオ、空調、照明の機能を統合したインフォテインメントシステムをそう呼んでいる。

 

 

また先のインテリアの表皮素材で使われたランチアブルーは、エクステリア側のボディワークにも採用されている。アルミ合金製の17インチアロイホイールは、クロムメッキを施さない地肌とブラック処理を組み合わせて、イプシロンの足元に視覚的インパクトをもたらす。

 

 

加えてそのボディシルエットでは、まず旗、盾、槍、銘板を現代的に再解釈。フロントグリルデザインを3つの光が重なるディティールとした。また反対のリアセクションは、ランチアストラトスからインスパイヤした丸いLED テールライトとしている。

 

 

パワーユニットにテーマを移すと、1906台限定のランチア・イプシロン〝エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナでは100%電気モーターが搭載される。

 

 

同ユニットは、WLTP複合サイクルで最大403kmの航続距離が可能で、急速充電を利用すれば24分で搭載バッテリーの蓄電レベルを20%から一気に80%へと高めることができる。また10分の時間さえあれば、100 kmの走行に十分な蓄電量が蓄えられる。当該車両の燃料消費量は100kmあたり14.3~14.6kWhとなる。

 

またこのクルマは。冒頭にも記したようにステランティス グループ全体のプレミアム B セグメント初のハッチバックであり、広々とした客室をセールスポイントの中心に据えているクルマだ。

 

 

そんな新ランチア・イプシロンのターゲット顧客は、若年層から中堅世代を対象としており、彼らは自身のスタイルを維持し続けることと共に、技術革新に伴う環境問題への配慮。最新のトレンドへの敏感さを重視しており、それゆえ生活の足となるクルマは顧客そのものを体験するライススタイルツールとなる。

 

最後にランチアが目指す電動化戦略は、ステランティスの「Dare Forward」戦略計画に沿って、隔年で少なくとも1台ずつ、3つの新しいモデルを発売することを目指す。従って新型ランチア・イプシロンはBEVバージョンで発売されることになる。

 

 

新型ランチア・イプシロン
全長:4.08メートル
車幅:1.76メートル
全高:1.44メートル
車重:1,584kg
セグメント:プレミアムBセグメントハッチバック
パワーユニット:出力115 kW/156 馬力、トルク260Nm
充電時間:DC/24分(20%~80%)
エネルギー消費:100kmあたり14.3~14.6kWh
航続距離:最大403km

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。