ソニーは9月6日、車載LiDAR(ライダー)向け積層型直接 Time of Flight(dToF)方式のSPAD距離センサー『IMX459』を商品化したことを発表した。
この製品は、10μm角の微細なSPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素と、測距処理回路を1チップ化し、1/2.9型と小型ながら高精度かつ高速な測距を実現。先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)の普及に伴い求められる、車載LiDARの検知・認識性能の向上および、それによる安心・安全なモビリティの未来に貢献するという。
撮像例(ポイントクラウド)
車載カメラやミリ波レーダーなどのセンシングデバイスに加え、道路状況や、車両、歩行者など対象物の位置や形状を、高精度で検知・認識が可能なLiDARの重要性が高まっている。一方で、LiDARが市場において広く普及・拡大するには、測距性能のさらなる向上に加え、使用環境や条件を問わない高い安全性や信頼性、小型・低コスト化に向けたソリッドステート化など、技術的な課題を解決すべくさまざまな取り組みが行われている。
SPAD画素は、LiDARの測距方式のうち、光源から対象物に反射して戻ってくるまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで距離を測定するdToF方式の受光素子の一つとして用いられている。この製品は、ソニーがCMOSイメージセンサー開発で培ってきた裏面照射型、積層型、Cu-Cu(カッパー・カッパー)接続などの技術を活用することにより、SPAD画素と測距処理回路を1チップ化する独自のデバイス構造を採用。これにより、10μm角の微細な画素サイズを実現し、1/2.9型で有効約10万画素となる小型・高解像度に加え、光子検出の高効率化と応答性能の向上を図ることで、遠距離から近距離までを、15cm間隔で高精度かつ高速に測距が可能となった。また、車載用途に求められる機能安全規格に準拠することによるLiDARの信頼性の向上や、1チップ化することによるLiDAR自体の小型・低コスト化に貢献する。
SPAD ToF方式距離センサーの積層構造イメージ(上部:SPAD画素、下部:測距処理回路)
また、ソニーは、この製品を搭載したメカニカルスキャン方式のLiDARをリファレンスデザインとして開発し、顧客やパートナーに向けて提供開始。これにより、顧客・パートナーのLiDAR開発における工数削減や選定デバイスの最適化によるコスト削減に貢献するとしている。
メカニカルスキャンLiDARのリファレンスデザイン
■1/2.9型(対角6.25mm)有効約10万画素車載LiDAR向けSPAD ToF方式距離センサー『IMX459』
サンプル出荷時期(予定):2022年3月
サンプル価格(税込み):15,000円
■主な特長
– 10μm角のSPAD画素と測距処理回路の積層構造による、高精度かつ高速な測距性能
この製品は、裏面照射型のSPAD画素を用いた画素チップ(上部)と、測距処理回路などを搭載したロジックチップ(下部)を、Cu-Cu接続を用いて積層し、一画素ごとに導通している。画素部の下に回路部を配置することで、10μm角の微細な画素サイズながら開口率を維持できることに加え、光の入射面に凹凸を設けることで入射光を回折させて吸収率を高めている。これにより、車載LiDARのレーザー光源として広く普及している905nmの波長に対して、24%の高い光子検出効率を実現。例えば遠方にある反射率の低い対象物でも、高い解像度と距離分解能で検知することができる。また、画素ごとにCu-Cu接続した回路部に、アクティブ・リチャージ回路を搭載し、一光子あたりの応答速度を通常時約6ナノ秒に高めている。この独自の積層構造により、遠距離から近距離までを、15cm間隔で高精度かつ高速に測距することが可能になり、車載LiDARの検知・認識性能の向上に貢献する。
– 車載用途に求められる機能安全規格に準拠し、LiDARの信頼性向上に貢献
自動車向け電子部品の信頼性試験基準「AEC-Q100」の「Grade2」を取得予定。さらに、自動車向け機能安全規格「ISO 26262」に準拠した開発プロセスを導入し、故障検知、通知、制御などの機能安全要求レベル「ASIL-B(D)」に対応している。これにより、LiDARの信頼性向上に貢献する。