三菱ふそうトラック・バスの小型EVトラック、2023年春に発売、順次グローバル展開へ
三菱ふそうトラック・バス(MFTBC、カール・デッペン社長・CEO、本社・川崎市)は9月7日、フルモデルチェンジした電気小型トラック「eCanter(イーキャンター)」次世代モデルをパシフィコ横浜(横浜市)でワールドプレミアムした。2023年春発売の予定。海外モデルも順次、展開する。(佃モビリティ総研・松下次男)
同社は2017年に現行モデルの小型EV(電気自動車)トラックを業界に先駆けて発売した。それから5年、ユーザーの意見、要望を吸い上げ、使い勝手の良い小型EVトラックへと全面改良し、市場投入する。
新モデル発表に当たりデッペン社長は輸送業界のゼロエミッションに向け、これまでの「お試しから、次のステージへ」とステップアップできる小型EVトラックになったと強調。本格的なEV普及への期待をにじませた。
インターネット販売の普及もあり、このところ輸送量の拡大とともに、物流ニーズも多様化。日本国内でトラックが運ぶ荷物の数はこの10年間で約1・4倍に増え、輸送トラックへの依存度が高まっている。
と同時に、輸送部門のCO2(二酸化炭素)排出量の約4割を占めるトラックのゼロエミッション化への対応が実用域で迫られており、EVトラックの普及、拡大への期待が膨らんでいる。
新たに自社開発のeアクスルを採用、リース販売に加え、買い取りも可能へ
実際に、この間トラックメーカーや物流事業者から、EVトラックの発表や小型EV導入を表明する動きも相次いでいる。これに対し、MFTBCはEVトラック先行の知見を活かし、拡販を目指す。
そこで発表したeCanter次世代モデルは、現行モデルが1タイプだったのに対し、国内向けモデルは28型式、海外市場モデルは約80型式のシャシラインアップを展開する。
現行モデルに使われているプロペラシャフトを廃止し、後軸にモーターを統合した自社開発のeアクスルを新たに採用。これによりドライブトレインをコンパクトな構造にし、シャシラインアップの大幅な拡充を可能にした。
この結果、国内モデルは車両総重量が5トンクラスから8トンクラス、海外モデルは4トンクラスから8トンクラスまでの幅広いバリエーションを展開できるようになった。ちなみに現行モデルは7・5トンクラス。
さらに次世代モデルは、動力取り出し装置「ePTO」も装備し、ダンプ、リアクレーン、ごみ収集車、冷蔵車、脱着車などの多様な架装にも対応する。
モジュール式採用で、航続距離80km、140km、200kmのバッテリーが選択可能
また、搭載バッテリーもホイールベースや使い方に合わせて3タイプが選べるモジュール式バッテリーを採用。41キロワットアワー(kWh)バッテリー1個を搭載するSバッテリー、2個(83kWh)搭載のMバッテリー、3個(124kWh)搭載のLバッテリーを用意する。
1充電当たりの走行距離(JE05モード)はSバッテリーで約80キロメートル、Mバッテリーで約140キロメートル、Lバッテリーで約200キロメートルの試験数値を達成。利用にあわせて、搭載バッテリーが選択できる仕組みにした。バッテリーは中国CATLから調達する。
eCanter次世代モデルは、現行モデル同様に日本を皮切りに、アジア・大洋州、北米、欧州などグローバル展開する計画だ。海外向けは当初、日本から輸出するが、将来的に欧州で生産する可能性も示唆した。
また、販売形態については、リース販売を基本としながらも、オプションとして「買い取り」も可能にすると述べた。
車両価格は、発売直前に発表する予定だが、車両のバリエーションが増える分、「価格帯が広がる」と話す。MFTBCはダイムラートラックグループの中で、EVトラックのうち、小型EVトラックを担当するが、コンポーネントは共用するもののも多いという。