電動マイクロモビリティのシェアサービスなどを手掛けるLuup(ループ、岡井大輝社長兼CEO)と新宿副都心エリア改善委員会(伊藤滋理事長)は9月24日、「西新宿地区のスマートシティ化推進」に向けた連携協定を結び、日本初の電動キックボード公道実証実験を実施すると発表した。(佃モビリティ総研・松下次男)
新宿副都心エリア環境改善委員会と西新宿版スマートシティ推進で連携協定を結ぶ
この取り組みは、西新宿のスマートシティ化への取り組みは国家戦略特区として選定されたプロジェクトの一つ。同環境改善委員会の小林洋平事務局長は今回の電動キックボードなどのパーソナルモビリティに続き「自動運転をはじめとした次世代モビリティ実証実験にも取り組む計画だ」と記者発表会で述べた。
同日、ループと環境改善委員会が締結した内容は「電動キックボードシェアリングを用いた実証実験と将来的な電動キックボードシェアリングサービスの導入」「シェアサイクルサービスの導入」「スマートシティ化への相互協力」を西新宿地区で実施するものだ。
これにより、ループは産業競争力強化法に基づく「新事業特例制度」を用いた電動キックボードの公道での実証実験を2020年10月中旬以降から実施する予定。また、将来的に小型電動アシスト自転車のシェアサービスも同エリアに導入する。
岡井社長兼CEOは今回の実証実験から「車道に加え、新たに普通自転車専用通行帯でも走行が可能になった。成長戦略にも電動キックボードの普及が盛り込まれる」と強調した。電動キックボードの走行実証実験は「ヘルメット着用、免許帯同、ナンバープレート付き」などの走行条件で実施する。
なお新事業特例制度によるループの電動キックボードの公道における実証実験は東京の千代田区や新宿区、渋谷区、世田谷区でも行う予定だ。
特例制度を用いた実証実験としてはこれまでも約3か月間にわたり横浜国立大学敷地内で実施した事例がある。この時は、私有地内のみの走行だったが、走行エリアは自動車も入る敷地内での実験だ。ループはこのほか半年間かけて、全国約30か所で実証実験し、機体の安全性などを調査、チェックしたという。
国家戦略特区、新事業特例制度を活用し自動運転など多様なモビリティの実証実験も
今回、公道実証実験を行う西新宿エリアは、オフィスだけでなく、美術館やホテル、飲食店・大学・病院・住宅など多様なカルチャーが融合する街区。いわゆる超高層ビルの老舗街であり、初期の高層ビルが完成してほぼ50年が経過した。
このため、「待ちの賑わいや回遊性、防災機能の向上」が求められるなど、新たな街づくりに向けて取り組むべき課題は少なくない。そこで同エリアを「つながる街」西新宿版スマートシティへと再生することを目指して、地域の企業などが参加した同改善委員会を2010年6月に立ち上げた。
さらに2014年3月に新宿区とともに「西新宿地区まちづくり指針」を策定し、同4月には一般社団法人を取得した。この年の10月には東京圏国家戦略特別区域会議構成員へ選定された。
今回、用いられる電動キックボード車両の仕様は実証認定後に最終確定されるという。
再生を目指す西新宿区域は96ヘクタール。改善委員会に参加する企業は小田急電鉄や京王電鉄の鉄道会社、損害保険ジャパン、大成建設、都市再生機構、三井不動産、さらに大学などを含む19社・団体だ。
整備活用方針として、官民オープンスペースの一体的な活用や地域全体を一体的に回遊できる歩行者空間形成に向けた交通体系の実現などを目指しており、その手段として新たなモビリティ導入の検討を始めた。
改善委員会によると、電動キックボードをはじめとしたパーソナルモビリティ・シェアリングの実証実験がその第1弾となり、引き続き自動運転などの次世代モビリティの実証実験も計画する。自動運転の実証実験ではすでに数社からコンタクトを寄せられているとし、実験内容も「西新宿にふさわしい取り組みを実施したい」という。
岡井社長兼CEOはパーソナルモビリティの取り組みについて「すべてのエリアに10分で行けるのがループの目指すところ」と述べ、将来的に多様なモビリティサービスを展開させたい意向を示していた。