電動マイクロモビリティのシェアサービスを展開するループ(Luup、本社・東京都渋谷区)は4月15日、東京都内で記者会見を開き、電動キックボードのシェアサービスを4月下旬から開始すると発表した。岡井大輝社長兼CEO(最高経営責任者)は実証実験の形で実施しながらも「まずは100台からスタートし、順次、導入機体を増加する」と述べた。(佃モビリティ総研・松下 次男)
「新事業特例制度」による実証実験で東京の6区で実施
サービスは「新事業特例制度」を用いた実証実験として実施。電動アシスト自転車のシェア事業「LUUP」に電動キックボードを導入する形でスタートさせる予定で、展開エリアは渋谷、新宿、品川、世田谷、港、目黒の東京都心部の6区を予定。
東京展開ののち、電動アシスト自転車のシェアサービスを展開する大阪(キタ、ミナミの2エリア)への導入も計画する。サービス開始は実証計画認可後となる。
岡井社長によると、今回の実証実験では道路交通法の区分が「小型特殊自動車」となり、ヘルメット着用が任意となるほか、車道に加え、自転車道の走行も認可予定という。
一方で、最高時速が時速15キロメートルに制限され、これまで実証実験で展開してきたいわゆるバイク、原動付自転車(原付)の最高時速20キロメートルから低下する。
この最高速度が減速になる点について、岡井社長は「電動アシスト自転車でも最高時速は24キロメートル。道路走行のなかで、この速度をどのように感じるか、少し懸念がある」とやや不安視する見方を示した。
シェア実証は「安全検証、ニーズ確認、正しいルールの訴求」が目的
ともあれバイク(原付)でない形でのサービス開始は国内初となる。
また、今回の実証実験にあわせ、導入する機体スペックを大幅にアップデートした。タイヤのサイズを8インチから10インチに広くし、安定性を向上。ボード部も広くし、安定性の高い姿勢での走行を可能にした。
このほか、ボディーをより頑丈な構造に変更し、耐久性を向上。さらに、これまでで最も高性能のモーターを搭載し、坂道での走行性をより高めた。加えて、サスペンションの性能も向上させ、段差での衝撃性を大幅に緩和した。
利用料金は、実証期間特別価格として電動自転車のシェアサービスと同じ初乗り100円(最初の10分)、それ以降1分当たり15円の設定となっている。
ただし、電動キックボードのシェアサービスを利用するには、乗車前に免許証の登録とテスト受講が必要だ。
今回の電動キックボードのシェサービスの実証実験について、岡井社長は「安全性の検証、ニーズの確認、正しいルールの訴求」を目的に実施するという。
例えば、自転車道やヘルメット任意などの新しい走行条件で安全性を確認するほか、日本で電動キックボードのシェアサービスのニーズがあるかなど。
2023年までに全国展開へ、高齢者向けのマイクロモビリティも検討
ルールの訴求については、「まだまだ日本では電動キックボードが十分に認識されておらず、違法走行や法律に順守していない電動キックボードも販売されている。このため、本実証実験を通じて正しいルールを普及、浸透させるのも重要だ」と述べた。
今回の実証実験の期間は半年間。その後の展開について岡井社長は「実証実験は延長可能だ。ニーズが高ければ、本格的にビジネス展開へ移行する。もし、問題が生じるようであれば、撤退の検討もあるだろう。様々な可能性がある」と述べ、実証実験を通じて今後の方向性を探る考えを示した。
岡井社長は今回の実証実験について「不特定多数の人に乗ってもらって、安全性を確認する機会」と位置付ける。これを踏まえて、引き続き電動キックボードに関連した規制の適正化を目指すとともに、ループは2023年までに短距離移動インフラの全国展開を目指すとした。岡井社長はマイクロモビリティ推進協議会会長も兼ねる。
また、電動マイクロモビリティについて、電動キックボードはあくまでも「健常者用」の電動モビリティとし、今後、日本では「高齢者向けのマイクロモビリティも望まれる」との見解を示した。そこで同社が構想するユーザーの年齢に応じて椅子が起き上がる未来の電動マイクロモビリティのイメージも披露した。