上海を世界のAIテックのハブ地点に据えて行くという中国政府の目論見で展開されている世界人工知能会議オンライン大会(WAIC/World Artificial Intelligence Conference)が、現地時間の7月9日上海で開幕した。これは昨年、リアルイベントとして開催された世界人工知能大会2019に続く第3回目にあたるもの。(坂上 賢治)
ちなみに第1回目の大会は2018年、中国政府の国家発展改革委員会・科学技術部・工業信息化部・国家インターネット情報弁公室・中国科学院・中国工程院が主催して9月に初開幕。40の国と地域から200以上のAIのリーディングカンパニーや専門家が集結。開幕式では劉鶴副首相がスピーチし、李強上海市書記が習近平国家主席の祝賀メッセージを代読した。
また2回目となった前回は、上海人民政府が承認する民間パードナーシップ「上海AI投資ファンド(Shanghai AI Investment Fund)」による100億人民元(13億9000万米ドル/当時の実勢レート)の投資を行うコミットメントと共に同じく9月に閉幕している。
今年はコロナ禍のなか、時期を早め〝知能の世界、共同の家〟をテーマに掲げて、初のホログラフィック投影技術を用いる合唱ミュージックビデオなどの最新AI技術を披露。オープニングはビデオメッセージ形式を中核に据え、米国からはイーロン・マスク米テスラCEOが登壇した。
マスク氏は「完全自動運転(レベル5)が、もう少しで実現するという最終目標の達成に強い自信があります。実際、レベル5に係る基本機能は、今年中に完成すると考えています」と語った。
また昨年、WAIC2019の壇上で、このマスク氏と対談を行ったアリババグループ創業者の馬雲氏は「感染症によって世界にもたらされる変化は、自然と未来からのメッセージです」と述べ、この変化がもたらす未来の行く末に明るい身通しを示した。
写真はWAIC2019年の時のもの
馬雲氏は「人類の情報処理技術と大きく進展していますが、協力と交流の知恵が今も不足しています。そもそもAI技術の進化に境界線はなく、デジタル技術によって私たちの暮らしが改善されれば、きっと未来の暮らしは早期に改善されます」とも語り、国際的な経済問題をやんわりとかわした。
実際、自動運転技術の実現に関しては、世界レベルで要素技術は修練されており、物理的な自動運転車実走の可能性は、中国のみならず各国でも可能性は高い。但しその実現は、もはや技術的な集積が「鍵」ではなく、法体系の整備や市民が自動運転をどのように受け入れるかなどの倫理的な環境整備実現の是非に移っている。そうした意味で、一党独裁体制の中国や広域な国土を強制的に区切って自動運転ゾーンを設定するななど、力技が通用する米国等に於ける実現性は確かに高そうではある。
なおバイドゥの李彦宏氏、テンセントの馬化騰氏など同国IT業界の旗手の他、感染拡大防止専門家の張文宏氏らもWAIC2020大会に出席するなどで華々しい開幕を演出したが、足元の米中対立に関する直接的な見方や見解については触れられなかった。