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2020年11月6日【イベント】

トヨタ、前回予想上方修正/最終益1兆4200億円見込む

間宮 潔

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トヨタ自動車・ロゴ

 トヨタ自動車は11月6日、2021年3月期第2四半期(4~9月累計)連結業績と通期の業績予想を発表した。新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んでいた新車販売が7~9月期、北米を中心に回復しているため、通期売上高を前回(8月時点)予想に2兆円上積む26兆円に上方修正した。営業利益も8000億円上積む1兆3000億円、最終益も6900億円上積む1兆4200億円にそれぞれ修正した。(佃モビリティ総研・間宮潔)

 

 通期の連結販売台数(ダイハツ、日野ブランドを含む)は、前回公表の720万台に30万台上乗せする750万台とした。回復への期待を織り込みながらも、前期に比べ145万5000台弱、率にして16.2%減を見込んだ。

 

上期(4~9月累計)の連結販売台数は308万6000台で前年同期比33.7%減の実績だ。第1四半期(4~6月)は、新型コロナウイルスによる影響をもろに受けて115万8000台と半減したのに対し、直近の第2四半期(7~9月)では192万8000台と8割水準まで持ち直した。

 

この結果、第2四半期(4~9月累計)の連結売上高は、前年同期比25.9%減の11兆3752億円、営業利益は同62.8%減の5199億円、当期利益は同45.3%減の6293億円と黒字を確保した。

 

連結営業利益の増減要因は次の通り。前年同期の営業利益(1兆3992億円)に対して、販売面での影響で9700億円、為替変動による影響で1200億円の減益要因をあげる。
これに対し原価改善努力で500億円、労務費・減価償却費など諸経費低減努力で1150億円、またスワップ評価損益で458億円の増益を図った。

 

期首に掲げた通期「営業利益5000億円」の目標(基準)は上期でクリア、通期予想を上方修正することができた。
特に上期後半(7~9月)の3カ月の業績は様変わりし、主要な新車市場である日本、北米で9割水準まで戻し、北米での営業利益は前年を上回った。

 

足元の9月生産状況も北米で108%、欧州で120%、日本国内で104%と回復している。
下期(10~3月)連結販売計画は前年を2.7%上回る441万4000台に策定している。主要市場である北米で140万台(前年同期比10.5%増)、日本国内で111万9000台(同1.7%増)の増販を見込んでいる。

 

欧州でも下期53万5000台、前年同期比7.2%増を見込む。回復が遅れているアジアでも73万4000台(同2.7%減)、オセアニアその他で62万6000台(同7.4%減)を計画する。

 

この結果、通期の連結売上高は、前期比12.9%減の26兆円、営業利益は同45.8%減の1兆3000億円、当期利益は同30.3%減の1兆4200億円とそれぞれ上方修正した。

 

決算説明にあたった近健太執行役員は前半を振り返り、「期首に800万台、営業利益5000億円の見通しを掲げたものの、本当に見通しの立たない厳しい状況だった」と指摘。
「(上期)利益をあげることができたのは販売店さん、仕入先さんが1台でも多くお客様に届けるのだと頑張ったおかげ」と述べ、全員で自動車産業を支えている実感を噛みしめた。

 

下期について、近氏は「新型コロナウイルスの第2波、第3波のリスク等を考えると、今後は予断を許さない」と指摘、ロックダウンやコロナ拡大の影響を注視するとした。
全社を挙げた収益改善活動を推進する一方、「将来に向けた種まきはしっかりと継続し、モビリティ・カンパニーへの変革を加速させていく」と説明を締めくくった。

 

「幸せの量産」「可動性を社会の可能性に変える」を新トヨタ・フィロソフィーに

 

 オンライン決算発表の第2部として、豊田章男社長が中間決算のタイミングで初めて出席、メッセージを発した。「コロナ危機という先が見えない時だからこそ、トヨタの見通しが自動車産業の道標(みちしるべ)になるとして本年5月、全世界800万台、今期営業利益5000億円の見通し(基準)を発表した」と思いを語り、「有事」を強調した。

 

豊田社長は「基準を作ったことにより、異常管理ができるようになり、現場は変化に柔軟に対応することができた」として、この6カ月間の社員の頑張りと、リーマンショック以降積み上げてきた地道な取り組みが貢献した。
資金面(3兆円から10兆円への積み上げ)や収益構造が強くなっただけでなく、「一番はトヨタで働く人たちが強くなった」と強調した。

 

2009年のリーマンショック時、トヨタの販売台数は、全体市場(80%水準)より4%(ポイント)少ない76%にとどまったのに対し、今期のコロナ危機では市場の77%に対して3%(ポイント)多い80%と健闘した。

 

「CASE革命によって、自動車産業は100年に一度の大変革時代を迎えている」ことから、豊田社長は企業の使命について言及。豊田綱領から続く現代版トヨタ・フィロソフィーとして新たに「幸せの量産」を掲げた。

 

織機から自動車につくるモノは変わっても商品を使う人の幸せ、その仕事に関わるすべての人の幸せを求めることに変わりないとして、幸せを定義付けた。
自動車からモビリティ・カンパニーへの転換を目指す中、新ビジョン「可動性を社会の可能性に変える」も打ち出した。社員(グローバル37万人)一人ひとりの行動の大切さを訴えた。

 

また豊田社長は環境に配慮したSDGsの精神に沿った経営を目指し、国際社会にも貢献していくことを誓った。
なお非連結の中国事業などを含むトヨタグループ世界販売は942万台(前期比9.9%減)、ダイハツ・日野ブランド車を除くトヨタ・レクサスブランド車販売は860万台(同10.1%減)に策定している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。