インド市場の回復遅れ、新型コロナウイルス感染症の影響が響き減収減益に
スズキが5月26日発表した2020年3月期連結決算(日本基準、2019年4月~2020年3月は、主力のインド市場の回復の遅れや新型コロナウイルス感染症の影響が響き減収減益となった。一方で、年間配当金は創立100周年の記念配当11円を加えて、1株当たり85円に増やす。2021年3月期の業績予想および新中期経営計画は現状、算出困難として公表を見送った。(佃モビリティ総研・松下次男)
新型コロナ感染症が世界的に広がったことでスズキの各工場も操業停止を余儀なくされたが、パキスタンの四輪車工場を除き全て操業を再開。主力のインドでは3月23日から工場の生産をストップしていたが、5月25日までにすべて生産を再開した。
また、新型コロナの感染拡大防止支援策として、浜松の伝統織物「遠州綿紬」を表生地に使用した布マスクを社内配布したほか、地元自治体へ感染防止の間仕切りを装着した車両を支援した。インドでも人工呼吸器やマスク、防護服製造の支援などに取り組んでいる。
当期純利益1342億円で同24・9%減。減収は3期ぶり、減益は2期連続
2019年度の連結業績は売上高が3兆4884億円で前期比9・9%減、営業利益が2151億円で同33・7%減、当期純利益が1342億円で同24・9%減となった。減収は3期ぶり、減益は2期連続。
新型コロナの感染拡大が影響した2019年第4四半期は売上高が8623億円、営業利益が447億円とそれぞれ前年同期比16・5%減、34・2%と落ち込んだ。通期の営業利益のうち、新型コロナの感染拡大によるマイナス幅は128億円と試算した。
2019年度の世界販売台数は四輪車が285万2千台で前年度比14・3%減、二輪車が170万8千台で同2・1%減となった。四輪車はインド、日本、パキスタンなどで減少。二輪車はインドで増加したものの、インドネシアなどで減少した。
主要地域の四輪車販売台数をみると、日本は67万 2千台で同7・3%減となった。軽自動車と登録車の内訳は55万4千台、11万8千台で同6・6%減、10・3%減となった。上期の検査体制再構築による減産影響に加え、台風や消費税増税などが響いた。
インドは上期、全体市場の回復が遅れたのに加え、期末の新型コロナ感染拡大の影響もあり、143万6千台と同14・3減の落ち込みとなった。
現時点で合理的な予想値の算出が困難なため20年度の業績見通しは未定とした
ちなみにマルチ・スズキ・インディアの2019年度の業績は円換算で売上高が1兆1114億円で前期比16・3%減、営業利益が587億円で同54・1%減の実績。インドの足元の4月販売台数は政府の指示に従い生産拠点を閉鎖したため、ゼロという。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の5か国(インドネシア、タイ、フィリピン、ミャンマー、ベトナム)の2019年度の販売台数は17万8千台で前年度比0・1%増となった。
インドネシアとタイでは10万5千台、2万5千台と同5・7%減、同11・4%減と落ち込んだものの、フィリピン、ミャンマー、ベトナムで逆に伸ばした。とくにベトナムは同55・9%増と大きく成長した。
二輪車は主要市場であるアジアの販売台数が140万3千台と同2・3%減となった。インドでは市場が減少する中で増加したが、期末に発生した新型コロナのカ感染拡大により中国などで減少した。
2019年度の生産台数は四輪車が296万7千台で前年度比12・6減、二輪車が172万9千台で同1・0%減となった。インド、日本、ASEAN5か国、欧州それぞれで四輪車生産台数が前年割れとなった。
2020年度の業績見通しについては未定とした。新型コロナの感染拡大により日本、インド、パキスタン、ハンガリー、フィリピンなどの工場の稼働に加え、世界での販売に影響が出ており、現時点で合理的な予想値の算出が困難としているためだ。