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2020年5月18日【エネルギー】

成長事業が見当たらないパナソニックの苦悩、営業利益が28.6%減

山田清志

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パナソニックがもがいている。構造改革も思うように行かず、業績を伸ばす成長事業も見当たらない。在任9年目に入る津賀一宏社長も頭を痛めていることだろう。5月18日に発表した2020年3月期連結決算は、売上高が前期比6.4%減の7兆4906億円、営業利益が28.6%減の2938億円、当期純利益は20.6%減の2257億円と減収減益だった。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

テレビ事業は2020年度も赤字に

 

オンライン会見を行った梅田博和CFOによると、売上高は事業ポートフォリオ改革、中国での投資需要低迷に加えて、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって減収となり、営業利益と純利益は事業構造改革費用などで減益になったとのことだ。

 

オンライン会見を行った梅田博和CFO

 

セグメント別業績では、アプライアンスは空調が増収となったが、スマートライフネットワークの減収やコロナ影響によって全体としては減収になった。営業利益は空調や日本のホームアプライアンスが堅調だったが、減販損および構造改革費用などにより減益となった。

 

なかでも懸案のテレビ事業は現在、協業先を模索している段階で、あらゆる可能性を持って協業先と協議をしているそうだ。「テレビ事業は、2019年度は100億円を超える赤字であったが、21年度の黒字化の計画に変更はない。2020年度は赤字となるが、二ケタ億円でそれほど大きな赤字にならないと見ている。固定費の改善や地域を絞り込んだ販売、そして協業先との連携により改善を図る」と梅田CFOは説明する。

 

ライフソリューションズは、売上高が配線器具などを扱う電材事業やハウジングが堅調に推移したが、パナソニックホームズの非連結化影響などで減収となったが、営業利益は住宅関連事業の増益に加え、事業譲渡益を計上したことにより増益を果たした。

 

コネクティッドソリューションズは、売上高がプロセスオートメーションやアビオニクスの減販、またコロナ影響が全事業に及んだために減収となった。営業利益はモバイルソリューションズやパナソニックシステムソリューションズ ジャパン(PSSJ)の増益、事業譲渡益があったが、減販損が響いて減益になった。

 

インダストリアルソリューションズは、売上高が米中貿易摩擦の影響やコロナ影響、また営業利益については半導体の減損などもあり、減収減益となった。

 

在任9年目に入る津賀一宏社長

 

車載関連事業は赤字幅が拡大

 

そして、オートモーティブ。パナソニックは当初、自動運転や電動化など「CASE」の波に乗って、車載電池などでメガサプライヤーになる成長戦略を描いていた。しかし、それがなかなかうまくいかず、2019年度の営業赤字が466億円に拡大してしまった。

 

「車載電池の増産投資効果があったものの、市況の減速や新型コロナウイルスの影響、車載機器の製品サイクル移行期による減販をカバーできずに減収となった。営業利益は、円筒形車載電池の北米工場が第3四半期に引き続き、第4四半期も黒字を達成し、収益性を大きく改善したが、角形車載電池の固定費や欧州充電器の開発費増、のれん減損などによって減益になった」と梅田CFOは説明する。

 

また、黒字化を果たした北米工場は20年3月末に生産能力が32GW/hに達成したが、4月はロックダウンのために生産が落ち込んだそうだ。しかし、すでに35GW/hに向けた設備は入っていて、今後は材料のレシピの改善と技術革新の取り組みを行っていく。「今後の生産拡大に向けては、テスラからは強いデマンドがあり、協議しているところだ」と梅田CFO。

 

とは言っても、赤字幅は拡大したわけで、早急に車載機器の開発費の抑制や円筒形車載電池の増販、生産性の改善に取り組む必要があるのは言うまでもない。「経営環境は、新型コロナウイルスの感染拡大などで不透明性を増しているが、低収益体質からの脱却に向けた取り組みは着実に進めていく」(梅田CFO)とのことだ。

 

こうしてパナソニックの事業を見渡してみると、リストラやコスト削減が必要な事業が多く、売り上げを大きく伸ばすような成長事業が見当たらない。それがパナソニックの大きな問題と言っていいだろう。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。