
最終損益3677億円、10~12月の営業利益は271億円へと黒字転換
日産自動車が2月9日発表した2021年3月期第3四半期(4~12月期)連結決算は、最終損益が3677億円の赤字となったものの、10~12月の3か月ベースで営業利益が271億円と黒字転換した。内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は事業構造改革であるニッサン・ネクストに「着実に取り組んでいる成果」と決算説明会で述べ、2020年度通期見通しの利益も上方修正した。(佃モビリティ総研・松下次男)
一方で、新型コロナウイルス感染症の再拡大が進んでいることや半導体供給不足から通期見通しの新車販売台数計画を前回見通しから15万台引き下げ、401万5千台(前年度実績493万台)へと下方修正した。
これに伴い2020年度通期業績見通しの売上高も前回見通しから2400億円引き下げ7兆7000億円(前年度比22・1%減)へと下方修正した。
通期業績見通しの営業損益は前回見通しから赤字幅を1350億円縮小し2050億円、最終損益は同850億円縮小し5300億円の赤字へとそれぞれ上方修正した。
内田社長は利益水準が改善していることについてニッサン・ネクストの進展を強調し、同計画で目標に掲げていた2021年度までの2年間(2018年度比)での固定費の3000億円削減を「3300億円」に上乗せする方針を示した。すでに12%の削減を達成しているとも説明した。
2020年度4~12月の連結業績は売上高が5兆3174億円で前年同期比29・2%減、営業損益が1316億円(同543億円の黒字)の赤字となった。前年同期の当期純利益は393億円だった。
グローバルの販売動向をみると、10~12月の第3四半期の3か月の販売台数は108万1千台と第2四半期の105万6千台から2・4%増となった。中国、日本、欧州で減少したものの、ほくべい、その他市場で拡大した。
4~12月の9か月では278万台で前年同期比24・8%減となった。市場別では、中国が98万5千台で同9・7%減、日本が31万5千台で同17・3%減、北米が84万5千台で同34%減、欧州が28万1千台で同28・9%減、その他市場が35万2千台で同35・6%減となった。
また、販売活動ではデジタルをきっかけとした販売成約が拡大しており、第3四半期までの累計で21万1千台(全販売台数の11・6%)に達した。
販売の質の向上では、課題となっていた米国の販売活動で10~12月期、台当たり販売価格が対前同期比で5%アップし、在庫が同27%減少。台当たり販売奨励金の対売上高比率でも同2ポイント減少、フリート比率は同12ポイント下がった。
ニッサン・ネクストによる活動では、第3四半期累計の台当たりの売り上げが前年同期に比べて1・7%改善し、レンタル比率が同6ポイント低下、在庫を同25%削減、販売奨励金の対売上高比率も同0・7ポイント下がった。
コストの最適化では、生産費用が同9%減少、研究開発費、デザイン費用が同8%減少、マーケティング・セールス費が同27%減少した。一般管理費も同9%下がった。
2020年度通期の地域別の販売台数見通しは、中国145万7千台(前年度比5・8%減)、日本49万1千台(同8・1%減)、北米118万台(同27・2%減)、欧州36万7千台(同29・6%減)、その他市場52万台(26・6%減)を予想。
内田社長はニッサン・ネクストの進捗とともに来期、SUVとEVを融合したアリアをはじめパスファインダー、フロンティア、フェアレディZ、インフィニティQX55、QX60、キャシュカイなどの新車効果を掲げて、事業構造改革で目標に掲げる「2021年度末の営業利益率2%達成」に自信を示した。
また、アップルカーの生産打診の可否では「新たな価値創造に向け、様々なところとのコラボレーションもあり得るだろう」との表現にとどめた。