ロールス・ロイス・モーター・カーズ(本社:英ウェスト・サセックス州グッドウッド、CEO:トルステン・ミュラー・エトヴェシュ)は英国時間の9月29日、同社で史上初となる電動完成車「スペクター(Spectre)」の公道走行試験をまもなく始動させると発表した。(坂上 賢治)
この新型車スペクターの市場投入時期は、2023年の第4四半期を想定。程なく開始される公道走行試験では、400年間の車両使用に相当する250万キロメートルに及ぶ過酷なテストを行う。
ちなみにこれは〝走行実験〟というよりもむしろ〝旅〟というべきものであり、実際に世界のあらゆる場所を尋ね、自動車が使われるあらゆる場所、あらゆる状況、あらゆる地形を極限まで走り込み、未来のロールス・ロイスに相応しい世界最高峰のクルマへと仕立てていくと言う。
なおこのスペクターは、偉大なパワーと幻影を持つ別世界の生き物に与えられる名前であり、自身が存在する空間を完全支配する存在感を持ち、ごく限られた人以外は近づけない世界で生きる乗りモノとして相応しい名前であるとして命名した。
また同社のトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOによると、実はロールス・ロイスにとって電動車の開発は全く新しい挑戦ではないと言う。同社の創業者のひとりであるヘンリー・ロイス卿は、あらゆるものの電化していく事に魅了され、 彼が手掛けた最初の事業ではダイナモや電動クレーン用モーターを開発。バヨネット式電球の特許も取得している程だったと語っている。
そこでこれを踏まえ同社では、これを契機に2030年迄にロールス・ロイスの全製品を完全に電動化する目標を打ち出し、目標達成後は内燃機関を搭載する車両の製造・販売から完全撤退すると宣言した。
そんな新型スペクターには、2017年投入のファントムと同じオールアルミ製のスペースフレーム・アーキテクチャーである「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」を採用。この柔軟性が高いとされる同スペースフレーム構造により、内燃エンジンだけでなく電動モーター搭載を含め、様々なロールス・ロイス・モデルを支える骨格になっていると説明している。
トルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOは、「スペクターを発表した今日は1904年の5月4日の創業年と並んで当社にとって重要な日でもあります。というのは、かつてこの日、当社の創業者であるチャールズ・ロールズとヘンリー・ロイス卿が初めて出会い、世界最高のクルマを作る事を誓った日だからです。
この2人の先駆者は、当時の最先端技術を駆使。交通手段としてまだ発展途上で騒音や不快感を伴っていた初期の内燃エンジン搭載車を、乗り心地も走りも当時の常識を覆すレベルに引き上げました。
彼らが作り上げたロールス・ロイスは、世界に向けクルマに乗る事でのラグジュアリー体験を提供。自動車の世界で頂点の地位を確立しました。それ以来ロールス・ロイスは1世紀を超えて、最高峰のクルマであり続けています。
それから117年を経た今日、ロールス・ロイスは世界的な電気自動車への変革を強力に後押しするため、世界で最も洗練された超高級EVを生み出します。私は、この優れたクルマの公道走行試験開始をお伝え出来る事を誇りに思います。なおこのクルマは2023年の第4四半期に最初の車両を、お客さまに向けてお届け出来る予定です」と結んでいる。