トヨタ・モビリティ基金は6月2日、ドイツ西部ビットブルク市で新型コロナウイルス感染拡大により困りごとを抱える高齢者と支援ボランティア対するモビリティ向上プロジェクトを展開すると発表した。(坂上 賢治)
欧州の中山間地域では日本と同様に高齢化や過疎化が進んでいる。このため公共交通が縮小。通院・買い物など日々の生活に欠かせない移動のみならず、行政サービスの維持にも支障を来すケースが発生しており、そうした過疎対策が大きな課題となっている。
そこで、一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(Toyota Mobility Foundation。以下「TMF」)は、過疎化が進むドイツ中山間地域の典型的な都市〝ラインラント=プファルツ州ビットブルグ市〟を舞台に同地域の市政府と連携。
デジタルソリューションを通じた住民の生活向上。さらに地域の産業競争力向上にも繫がるプロジェクトを開始した。同プロジェクトでは、まずデジタルプラットフォーム(都市OS)を構築して行政サービスの維持向上や多様なモビリティサービスの提供を目指す。
具体的には地域の高齢者が、新型コロナウイルスの感染を避けるために外出を控え、日常生活に於ける困りごとが増しているという現状況を踏まえ、モビリティサービスの提供に先行して現在構築中のデジタルプラットフォーム機能を活用。支援を必要とする高齢者と支援者をマッチングするサービスを発表同日より開始した。
その流れは、「支援を要望する人が必要なサービスをスマートフォンから検索」、それを受けてあらかじめ用意したマッチングソリューションが、近隣に住み、支援希望者が欲しいサービスを提供できるボランティア(支援したい人)を候補として提案する。
この際、スマートフォンの利用が難しい人、インターネットに接続できない人のためコールセンターも併せて開設して電話でも受け付けができるようにした。
このTMFが協力して敷いた同プラットフォームでは、最終的には「行政サービス」、「医療サービス」、「地域産業支援サービス」、「モビリティサービス」など対象地域で必要とされる様々なサービスを連携・統合して提供するのだという。TMFでは、この支援者マッチングサービスを中山間地域の生活を支えるためのデジタル化戦略の第一歩と捉え、今後、近隣の地域に展開していく予定だ。
ちなみにTMFは2014年8月に設立。以来、豊かなモビリティ社会の実現とモビリティ格差の解消に貢献することを目的に、タイ、ベトナム、インド、ブラジルでの交通手段の多様化。
さらに日本の中山間地域に於ける移動の不自由を解消するプロジェクトへの助成。加えて障害者向けの補装具開発を支援するアイデアコンテストの実施だけで留まらず、水素研究の助成、人工知能による交通流最適化の共同研究など、世界のモビリティ分野に係る様々な課題に取り組んでいる。