ジョルダンの佐藤俊和社長
MaaS事業に力入れているジョルダンがまた新たなサービスの提供を開始した。それは同社が4月27日に発表した顔認証とポイントを活用し、乗り物への乗車や施設への入退を実現するまちづくりクラウドサービス「JorudanStyle(ジョルダンスタイル)3.1」だ。これによって、現金やICカードを持たなくても、いわゆる“顔パス”でバスや電車に乗ったり、映画館などに入場できるわけだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)
ジョルダンが開催した記者会見の様子
時代の流れに合わせてコンテンツを拡大
「主力商品の『乗換案内』の開発がスタートしたのが1992年で、もうじき30年になる。その間にPC、インターネット、ガラケー、スマホと世の中の流れが変わっていく中で、その流れに合わせて、いろいろとコンテンツを拡大してきた。いまMaaSの流れに入っていこうとしているが、またちょっと面白い機能が出てきたので、大きな流れがつくれるのではないかと始めた」
佐藤俊和社長は4月27日の記者会見で、これまでの歴史を振り返りながらこう話し始めた。「乗換案内」については、詳しく説明するまでもないが、おそらくスマートフォンユーザーの多くがアプリとしてダウンロードしているのではないだろうか。いまや月間検索回数で2億回以上、月間利用者で約1400万人にのぼるという。同分野のサービスの中では、ユーザー数や検索回数において他を圧倒的に引き離し、リーダーの地位を確立していると言っていいだろう。
ジョルダンの東寺浩執行役員
また、ジョルダンは2003年に旅行業に参入し、ホテル、宿泊予約、各種チケット手配を行う「ジョルダントラベル」や海外格安航空券の予約が可能な「イーツアー」などの旅行サービス業をはじめ、グルメサイト「美味案内」やクーポンサイト「ジョルダンクーポン」も運営している。そのほか、法人向けの「危機管理ツール」や自治体、鉄道、バス事業者向けに「MovEasy(ムーブイージー)」などのパッケージサービスやソリューションを提供している。
そんな同社が注目しているのがMaaSで、そのビジネスとして展開しているのがまちづくりクラウドサービスの「ジョルダンスタイル」だ。これは地域のイベントや観光情報、ハザードマップなどの地域情報から、公共交通のルート検索、バスの位置や遅延情報まで、住民から旅行者まであらゆる人々がさまざまな情報をワンストップで活用できるサービスとして、2015年1月に提供を開始したサービスである。
認証購入利用の流れ1
千葉県佐倉市ユーカリが丘で実証実験
「ジョルダンスタイルは、段階的なバージョンアップにより、さまざまな機能を追加してきた。20年4月にリリースした3.0では、エッジコンピューティングにより、閉域網でのLTE接続を実現し、より安全に高速なサービスを提供できるようになった。また、カメラを活用した混雑状況の確認などコロナ禍に対応した機能も搭載した。そして今回、これまでの機能に、チケット管理、非接触認証連携、キャッシュレスサービスが追加された最新バーション『ジョルダン3.1』の提供を開始することになった」と企画営業本部長の東寺浩執行役員は説明する。
認証購入利用の流れ2
ジョルダン3.1は、パナソニックの顔認証技術と連携し、バスや鉄道などの公共交通への乗車はもちろん、各種施設の入退出、予約を非接触かつ無人で行うことができる。マスクをしていても、しっかりと本人を認識するそうだ。利用者は事前にクレジットカードでジョルダンポイントを購入する必要があるが、余ったジョルダンポイントは連携する他社のポイントや電子マネーに交換することが可能だ。
この4月から千葉県佐倉市ユーカリが丘エリアで、山万が運営するコミュニティバスにおいてジョルダンスタイル3.1の実証実験が行われており、5月10日からは一般から募集したモニターを対象にサービスの提供が始まる。そして夏には、バスに加えて鉄道の実証実験も開始する予定だ。
ジョルダンでは、ユーカリが丘以外の地方自治体や交通事業者、各種施設への導入、さらにはMaaSやスマートシティの構築・実現に向けて積極的に参画していく方針だ。