AWSジャパンの岡嵜禎執行役員
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は8月19日、「MaaS分野の最新動向」に関する記者説明会をオンラインで実施した。小田急電鉄が展開するMaaSアプリ「エモット(EMot)」を参考事例にMaaSサービスを支える技術要素などを紹介したもので、AWSはコネクテッドカーソリューションの機能を大幅に拡張し2020年中に公開する方針を表明した。(佃モビリティ総研・松下次男)
AWSはトヨタともモビリティサービス・プラットフォームに関し業務提携を拡大
AWSは前日にもトヨタ自動車とモビリティサービス・プラットフォームに関する業務提携拡大を発表しており、モビリティ分野への積極的なアプローチが目立つ。
AWSのMaaSの強みは「他社に先駆け2006年からクラウドサービスの提供を開始した」とAWSジャパンの岡嵜禎執行役員は強調。今や世界で数万社、日本でも670社以上とのパートナ企業を有する。
日本企業との協業の一例では、トヨタとのモビリティサービス・プラットフォームのビッグデータ蓄積・利用基盤の強化のほか、ティアフォーと自動運転向けのマネージメントサービス、ゼンリンデータコムと動画地図情報の自動更新システムを紹介した。トヨタとは包括契約の範囲を、グループ各社に広げ、グローバルで実施、展開する。
岡嵜執行役員はMaaSが登場した背景として「移動ニーズの多様化」や「過疎地/移動弱者のフォロー」「低炭素社会の実現」などの課題の顕在化と同時に、CASEに代表される自動車技術の進化やスマートフォンの普及、ビッグデータ/機械学習が台頭してきたことなどを掲げた。また実用・展開にあたっては個社から複数社、単一目的からマルチパーパスへと広がっていると指摘した。
小田急電鉄経営戦略部の西村潤也次世代モビリティチーム統括リーダー
小田急電鉄とヴァル研究所が開発した「エモット」のクラウド活用例、機能を拡充
こうした中で、AWSはクラウドで大容量のサービスを行うエッジコンピューティング、デバイスゲートウェイ、ストリーム処理、データレイク、機械学習、モバイルアプリ開発をMaaSソリューションのコア技術として提供しているという。
具体的な展開では、コネクテッド・モビリティ・ソリューション(CMS)をMaaSのリファレンス実装上のテインプレートとして提供するほか、2017年から提供するコネクテッドカーソリューションでは大幅に機能を拡張し、2020年中に公開する予定。
そこで記者説明ではAWSのソリューションを応用したMaaSアプリの一例として小田急電鉄とヴァル研究所が共同開発したエモットを取り上げ、どのような取り組みを行っているかを紹介した。
エモットは昨年10月から運用を開始。小田急電鉄経営戦略部の西村潤也次世代モビリティチーム統括リーダーは、エモットについて「日々の行動の利便性をより高め、新しい生活スタイルや観光の楽しみを見つけられるアプリ」と述べた。機能として複合経路検索、電子チケットなどを備えている。
複合経路検索では、小田急グループのほかジャパンタクシー、カーシェアリングのタイムズなど17事業者と提携、鉄道、バスにとどまらず車両を使ったルート検索が可能だ。また、地域も小田急沿線のほか、提携先の遠州鉄道周辺の浜松を含んでいる。将来的には、提供地域を増やしたい考え。
電子チケットでは、箱根をはじめとした観光地のチケットがスマホで購入でき、スマホの画面を見せるだけで周遊できる。また、現地のレストランで食事をすればバス乗車が無料になるチケットがゲットできるなどの特典を提供する。随時、機能を追加している。
ヴァル研究所の見川孝太執行役員CTO(最高技術責任者)
AWSはコネクテッドカーソリューションの機能を大幅に拡充し、2020年中に公開
エモットを共同開発したヴァル研究所の見川孝太執行役員CTO(最高技術責任者)は、AWSのプラットフォームを採用したことについて「速度優先で早く作成できる」点や「今後の変更に柔軟に対応できる」「使い慣れたクラウド」などのメリットを掲げた。
また、技術面から「機能単位で疎結合」であることをポイントとして示し、各機能の結合度を下げ、今後の拡張が用意できる点を特徴にあげた。
西村統括リーダーはMaaSの将来像として、人口減などを背景に、リアルビジネスでは陣取り合戦からネットワーキングの時代に入ると指摘。エモットのベースであるMaaS Japanをオープンな共通データ基盤として活用し、幅広く他の交通事業者や自治体などが開発するアプリとの連携することを視野に入れている。
実際に、国内では北海道や九州など採択されたほか、海外でも連携の動きが出ているという。