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2024年10月19日【新型車】

ポルシェ、25周年の911GT3に最新パッケージ

坂上 賢治

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今回ポルシェは911 GT3の各バージョンの性格をより明確に再定義した

 

独ポルシェAGは10月19日、モデルチェンジした911 GT3(GT3&GT3ツーリングパッケージ)を日本国内市場に向けて明らかにした。車両販売価格は追加オプションの仕様により異なるが¥2,814万円から。GT3並びにGT3ツーリングパッケージいずれのモデルもトランスミッションは7速PDK/6速MT。予約受注開始は2024年内を予定しているという。( 坂上 賢治 )

 

 

911 GT3は、クローズサーキットでの走行に適したコンペティティブなモデル。1999年のデビュー以来、世代毎にレースの遺伝子と日常の使いやすさという究極の組み合わせを求めてパッケージングされてきた。

 

今回は誕生から25周年を記念し、リアウイングを備えたサーキット重視のスポーツ仕様と、ツーリングパッケージで架装したより控えめなモデルの2つのバージョンが同時デビューしている。またヴァイザッハパッケージ、テーラーメイドパッケージ、その他の多様なオプション設定により、両バージョン共にオーナーの好みや用途に合わせて更なるカスタマイズにも応える。

 

まずエクステリアでは、フロントとリアのデザインがシャープになり、エアロダイナミクス性能が改良されている。両バージョン共にフロントディフューザーの輪郭変更、スポイラーリップの形状改良、アンダーボディのフィンの改良がダウンフォースを増加させ、エアフロー性能を最適化した。

 

 

911 GT3用に再設計されたLEDマトリックスヘッドライト(ホワイトアクセントリングをオプション装備)は、必要とされる全てのライト機能を兼ね備えているためフロントエプロンに追加のライトは不要。これによってエアインレットエリアが拡大した。リアでは、ディフューザー、エアインレット、リアリッドのデザインを変更。リアウイングには角度のついた新しいサイドプレートが装備される。

 

なお今回のモデルチェンジにより、ポルシェは911 GT3の各バージョンの性格をより明確に定義させている。911 GT3ツーリングパッケージは固定式リアウイングを廃止し、伝統の911を彷彿とされるエレガントなスタイリングとしつつも、ティアオフエッジを備えた伸長式リアスポイラー、有名なガーニーフラップ、アンダーボディに適応されたフィンデザインデエアロダイナミクスのバランスを保つ仕様となった。

 

 

強力なエンジンと車体の軽量設計でパワーウエイトレシオは2.8kg/PS

 

搭載されるパワーユニットは、375kW(510PS)/450N・mを発生する4.0リッター水平対向自然吸気エンジンを搭載。車体各部も大幅な軽量化処理がなされている。この自然吸気エンジンは、現在の非常に厳しい排気ガス基準に合わせて2つのパティキュレートフィルターと4つの触媒コンバーターが装備される。

 

先のエンジンの出力は、流量を最適化した各スロットルバルブと最適化されたオイルクーラーを採用した上でシリンダーヘッドを改良。911 GT3 RS譲りのシャープなカムシャフトを組み込んだことで実現されている。

 

これは、搭載エンジン出力で1kWあたりの仕事量が、最も軽い車両構成では、僅か3.8kg(2.8kg/PS)だけを動かせばよいことを意味する。また7速PDKと6速GTマニュアルトランスミッションの最終減速比は、先代モデルよりも8%短縮されている。

 

どちらのトランスミッションも、911 GT3と911 GT3ツーリングパッケージの両方で選択可能。PDK仕様車は3.4秒で100km/hまで加速し、最高速度は311km/hに達する(マニュアルギアボックス仕様車は3.9秒、313km/h)。

 

 

その走りを支える足まわりでは、ダブルウィッシュボーンのフロントアクスルにエアロダイナミクスに優れた専用開発のティアドロップ型トレーリングアームを採用。これが高速走行時にホイールアーチのダウンフォース増加とブレーキ冷却の改善に寄与する。

 

高速走行からのブレーキング時であっても、フロントアクスルとリアアクスルのダウンフォースバランスが保たれるように、サスペンションエンジニアはピッチング(アンチダイブ)の低減に腐心した。そのためにロアトレーリングアームのフロントボールジョイントがフロントアクスルのより低い位置に設定している。

 

こうしたサスペンションの動きを支えるため、タイヤにはウェットグリップが向上した255/35 ZR 20(フロント)と315/30 ZR 21(リア)のスポーツタイヤが標準装備されてる。また希望ればオプションで、公道も走行が可能なサーキット用タイヤも用意される。

 

 

車体の軽量化を求める飽くなき追求は車載バッテリーにまで及ぶ

 

なお、このような俊敏さを支える役割はタイヤのみならず、常にダイレクトなハンドリング性能を保証する軽い車重が大きく貢献しているは自明のこと。新型911 GT3では、先代を超える更なる軽量設計に拘った。

 

シルバーカラーの新型軽量アルミニウムホイールは、バネ下重量を先代モデルより1.5kg以上軽減させる。ヴァイザッハパッケージまたはライトウェイトパッケージのマグネシウムホイールもオプションとして用意されており、これにより更に9kgの軽量化が実現する。

 

その効果は、車載のバッテリーにまで及んでおり、新しい40Ahのリチウムイオン軽量バッテリーだけで約4kgの軽量化を実現。その他も含め最も軽量な仕様での重量は1,420kgとなる。

 

 

インテリアでは、上質なレザーインテリアがクラシックでスポーティな雰囲気を与える。またこの911 GT3ツーリングパッケージにはリアシートシステムも初めてオプションとして用意されている。

 

更にドライビングシートでは、可倒式バックレストとCFRP製シートシェルを備えた新しい軽量スポーツバケットシートがオプションで用意される。このシートには胸部エアバッグが内蔵され、高さ調節は電動式、前後調節は手動式となっており、オプションで3段階のシートヒーターも選択できる。ヘッドレストパッドの一部は取り外し可能だ。併せてスポーツバケットシートに代えて、アダプティブスポーツシートプラス(電動18way調整機能付)を選択することもできる。

 

 

シートに着座してドライビングポジションを取ると、前面にポルシェの流儀に沿ったインストルメントパネルが広がる。それらは現行911モデルをベースにしているが、エンジン始動には、カレラモデルのようなボタンによるものではなくロータリー式のイグニッションスイッチが採用されている。

 

サーキットで個性が活きるヴァイザッハパッケージも新設定へ

 

中央のデジタルメーターパネルは、コントラストの効いた配色により、レブカウンターとストップウォッチは瞬時に読み取れることに腐心されたもの。「トラックスクリーン」モードでは、レブカウンターの左右にあるデジタルディスプレイが縮小されて、タイヤ、オイル、水、燃料に関する主要なデータが表示され、シフトフラッシュによってドライバーに最適なシフトタイムを示す。

 

 

必要であればレブカウンターのディスプレイを回転させ、9,000rpmのカットオフスピードを12時の位置に表示することもできる。もちろんコンペティションカーに準じたモデルであるからオプションでロールオーバー・バーを選ぶこともできる。

 

その他の装備パッケージでは、今回初めてサーキットでその個性がより活きるヴァイザッハパッケージが設定されたことがニュースのひとつだ。この仕様ではリアアクスルのアンチロールバー、カップリングロッド、シアパネルは、ルーフ、リアウイングのサイドプレート、エクステリアミラートップシェル、ミラートライアングル、フロントエリアのエアブレードなどがCFRP製になる。

 

加えてダッシュボード上面は、初めて反射防止のRace-Texで覆われる。CFRP製ドアハンドルと収納ネットにより、軽量化するためにインテリアドアパネルを最適化し、CFRP製ロールケージやマグネシウム軽量鍛造ホイールもオプションで用意されている。

 

対して911 GT3ツーリングパッケージには、ライトウェイトパッケージの用意もある。この仕様では、ルーフがエクステリアカラーと同色に塗装され、スタビライザー、カップリングロッド、リアアクスルのシアパネルがCFRP製になる。マグネシウム軽量鍛造ホイールと軽量ドアパネルもパッケージの一部だ。

 

併せて標準装備の6速GTスポーツギアボックスとの組み合わせで、911 S/Tの短縮ギアレバーが使用される。この仕様では、ギアレバーの前の“Leichtbau”と刻まれたプレートがパッケージを示す。

 

専用クロノグラフも用意「手首にまとうスポーツカー」を表現

 

またこれらリアウイングを装備した911 GT3には、サーキット走行用のクラブスポーツパッケージが追加料金なしで利用できる。リアにはボルトで固定されたスチール製ロールケージ、ドライバー用の6点式シートベルト、手持ち式消火器が含まれている。但し同パッケージに仕立て上げるにはオプションの軽量スポーツバケットシートが必須なる。

 

 

なお911 GT3と911 GT3ツーリングのオーナーは、スポーツカーのデザインと性能を手首に反映させたポルシェ デザインの腕時計も用意される。911 GT3クロノグラフと911 GT3ツーリングクロノグラフは、フライバック機能を備えたCOSC認定の精密なポルシェデザインムーブメントWERK 01.200が搭載されたいる。

 

超軽量チタン製ケース(オプションでブラックチタンカーバイドコーティングを施すことも可能)は、スポーツカーのデザインと現代の時計製造技術を融合させたもの。イエローのアクセントと六角形の構造を備えたGT3デザインの文字盤は車両のメーターパネルを想起させ、巻き上げ式ローターはGT3のリムのデザインに基づいている。

 

ダイヤルリングは、911 GT3とツーリングパッケージのすべてのエクステリアカラー、およびPaint to Sampleプログラムのカラーがある。オリジナルのポルシェインテリアレザーと糸を使用して作られたストラップは、それぞれの車両の構成にマッチしたものとなっている。

 

さて最後に、この新しい911 GT3について、ポルシェのブランドアンバサダーを務めるWRCチャンピオンのヴァルター・ロール選手は、「特に曲がりくねったワインディングロードでは、ステアリングが先代モデルよりもさらに巧みに調整されていることがはっきりと感じられます。ダイレクト感を失うことなく、センターポジションからより穏やかに反応するので、車に対する信頼感がさらに高まります。ギア比が短くなったことで、ドライビングの楽しさも大幅に向上しました」と語った。

 

ロール選手と同じくブランドアンバサダーを務めるポルシェワークスドライバーのイェルク・ベルクマイスター選手は、「新型911 GT3は、最適化されたダンパーのチューニングにより、バンプや縁石を乗り越える際の安定性とハンドリングが向上しているため、サーキットではさらに優れた制御が可能になります。アンチダイブシステムは、ブレーキング時のピッチングを著しく軽減します。その結果、あらゆる状況下で車両のバランスが大幅に安定します」と話している。

 

ポルシェAGのGTカー部門責任者を務めるアンドレアス・プレウニンガー氏は、「新型911 GT3は、より爽快で個性的になりました。私達は細部まで徹底的に調査し、お客様が望む多くの機能を実現しました。これによりGT3をドライバーの目的や好みに応じて最適化させることができます」と結んでいる。

 

新型911 GT3価格(2024年10月19日現在)
車種:911 GT3
トランスミッション:7速PDK/6速MT
ハンドル:右/左
希望小売価格(消費税込):¥28,140,000-

 

車種:911 GT3ツーリングパッケージ
トランスミッション:7速PDK/6速MT
ハンドル:右/左
希望小売価格(消費税込):¥28,140,000- 

 

ポルシェ コンタクト 0120-846-911 / HP: https://www.porsche.com/japan/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。