パナソニックは10月27日、ロボティックモビリティの新製品発表会をオンラインで開催し、追随走行機能を持った電動車いす「PiiMo(ピーモ)」を11月から子会社のパナソニック プロダクションエンジニアリング(PPE)を通して発売すると発表した。このピーモはWHILL(ウイル)のパーソナルモビリティをベースに、パナソニック独自の安全技術や制御技術を搭載して製品化した。(経済ジャーナリスト・山田清志)
20年にわたり蓄積したロボット技術を活用
ピーモは、障害物を検知すると減速、停止する「自動停止機能」、先行機体に追従動作する「自動追従機能」を搭載した新しいモビリティだ。先頭の1台を搭乗者もしくはスタッフが操作し、後続のモビリティが自動追従することで、安全に効率よくグループの移動をサポートする。
「パナソニックは2016年に技術10年ビジョンを掲げ、IoT・ロボティック領域とエネルギー領域に関する開発を進めている。その中でロボティックを領域では、ロボット技術を用いてより良い生活の実現に向けて取り組んでいる。これまでに搬送用ロボット『HOSPi
(ホスピー)』開発するなど、人と共存する環境において、安全に目的地まで移動する技術を20年にわたり蓄積してきた」とPPEの柳本努社長は説明する。
PPEはマニュファクチュアリングイノベーション本部の子会社として14年4月に設立され、パナソニックグループの生産技術ノウハウを融合したソリューションを提供している。具体的には、計測・検査、成形、精密加工、シミュレーション、ロボティクスなど12の蓄積技術を活用して、成形ソリューション、標準機ソリューション、受託開発設備ソリューション、ソフト・技術サービス・CSソリューション、新規事業インキュベーションの5つの事業を展開している。今回の電動車いすは、新規事業インキュベーションに属する。
また15年には、WHILLと超高齢社会において移動困難者の移動をサポートするロボット型電動車いすを共同開発。以来、空港や駅、展示場、商業施設などさまざまな環境で実証実験を重ねてきた。
敢えて人が介入するように開発
「もともとは東京オリンピック・パラリンピック推進本部において、どうやったらスタジアムを満席にできるかという観点から開始したプロジェクト。WHILLとの共同開発やユーザー候補者との協業を通じて、使う人たちに新たな移動体験、移動価値を提供しようと考えた」とPPE新規事業センターの安藤健プロジェクトリーダーは話す。
同プロジェクトリーダーによれば、ピーモは完全無人走行を目指したものではなく、あえて人が介入するものを目指し、人とのふれあいを大事にしたそうだ。「1台目のピーモを本体に接続したジョイスティックによって人が操縦することで、現場における顧客へのサービス提供と移動支援業務の省力化の両立を実現でき、高齢化や労働力不足といった課題解決を図ることもできる。それにピーモでは、人が横の寄り添って移動することができる」と安藤プロジェクトリーダーは説明する。
大きさは全幅592mm、全長1046mm、全高870mmで、重量が70kg。最大搭載重量が100kgで、最高速度が4km/h、連続走行距離は約16km。自動停止機能は、センサーによって周辺情報を収集し、障害物などに衝突の恐れがあると判断すれば自動停止する。自動追従機能は、前方に設置されたマーカー(追随用反射板)を後方のピーモが搭載しているレーザーレンジファインダーによって認識し、前方の軌跡を正確に追従することを可能にしている。
ピーモそれぞれに知能部を有しており、障害物などが出現した場合には自律的に回避し、Uターンのような曲がり方でもしっかりと追従走行できるという。しかも、ピーモ同士が5GHz帯を利用したWi-Fi接続による無線通信を行っており、ピーモ間で情報共有して、後方での取り残しなどにも対応している。
「利用現場では、利用者の一人がトイレに行きたいといった要望など、隊列から離れたいシーンが出てくると思う。その際にも、1台だけが独立して移動するといったように、列内での機体順番の変更、機体の追加、機体の分離が容易にできる。また、ワンタッチ操作で1台ずつの手押し操作に変更できる」(安藤プロジェクトリーダー)とのことだ。技術的には10台の追従が可能だが、5台ぐらいの追従を推奨しているそうだ。
価格は300~400万円。実証実験は非常に好評だったが、具体的な商談については「新型コロナウイルスの影響によって途絶えている状況だ。今後、新型コロナウイルスの終息に合わせて、いろいろな場面での提案をしていこうと考えている」と柳本社長は話していた。