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2020年5月29日【オピニオン】

日産の余剰削減策、バルセロナ工場とスペイン政府に飛び火

坂上 賢治

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写真は渦中の真っ只中にあるスペイン・バルセロナ工場の全景

 

 日産自動車が先の5月28日に発表した2020年3月期連結決算は、先の関連記事掲載の通り、前期3191円の黒字で踏み留まっていた純損益が、一転して11年振りで6712億円の赤字となった。世界販売も7年振りの500万台割れとなる493万台に落ち込んでいる。(坂上 賢治)

 

これを受けて同社は、国際規模での生産能力削減を筆頭に大幅な構造改革策に舵を切る。それに伴い自社生産能力から約20%余剰削減を達成するべく、インドネシアやスペインでの生産拠点の撤退を決めた。(坂上 賢治)

 

 その情報は日産がこれまで最大5,200人もの生産従事者を雇用してきたスペインへも早々に伝わり、今年末に閉鎖計画が実行される見込みのバルセロナでは、5月4日の生産再開を前に早くも無期限ストライキに突入していた工場労組による集会が行われ、バルセロナ工場前ではタイヤを燃やす、隣接の高速道路を一時占拠するなどして、抗議の意を示すシュプレヒコールを挙げた。

 

 ちなみに当地に於ける車両生産の従事者はおよそ3000人。さらに日産工場からの発注を請け負うモンカーダなどの傘下に連なる日産管理外の生産拠点を含めると、少なくとも、その影響は述べ3万人の労働者に波及する。

 

今回、日産の再編計画から免れた日産アビラ工場の全景

 

なお同国内に於ける日産の生産施設は、内陸部カスティーリャ・イ・レオン州アビラと、同国北部に位置するカンタブリア自治州にも自動車部品の生産拠点を持っているものの、これらの拠点は今回の再編計画には含まれていない。

 

 今回削減対象となったバルセロナ工場に関して日産側では、新型コロナウイルスの感染拡大前から生産稼働率が25%を下回っていたとしている。

 

対して労働者委員会のウナイ・ソルド事務局長は、撤退するよりも小規模な追加投資を行い、現地で新たな車両を生産する方が理に叶う筈だと訴え、約10億ユーロ(およそ1200億円)に上ると見積もられている解雇補償や補助金の返還を含む工場閉鎖に掛かる巨額の費用は、同氏が提案している〝雇用維持のために工場設備を刷新する手段〟よりも高くつくと述べた。

 

またスペインのレジェス・マロト産業・商務・観光相は、現地労組や生産スタッフ達の主張を受け入れ、撤退後の雇用維持を確保するべく全力を尽くすと話している。しかし日産の現地マネジメント側は、こうした働き掛け対し工場閉鎖に伴う具体的な解決策に関して、応えることは一切できないとしている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。