日産自動車は4月25日、同日開催の北京モーターショー2024( 北京国际汽车展览会 / BEIJING INTERNATIONAL AUTOMOTIVE EXHIBITION )で4車種のNEV( 新エネルギー車 / New Energy Vehicle / ここでは中国が規定するPHV、EV、FCVの総称を指す。なお当地でHV・低公害車は省エネ車として別区分となる )のコンセプトカーを初披露した。( 坂上 賢治 )
日産では中国市場に向けて、同4車種に1車種を加えた5車種のNEVを2026年度までに投入する。加えて中国市場の独自ニーズに応えるべく、現地の人工知能( AI )企業と連携することも明らかにした。
より具体的には現地ユーザーが望む〝クルマの電動化〟策を推し進めるなかで、併せて〝クルマの知能化〟も推進する計画を打ち出した。これに沿って、日産が設けた自社ブースでは、自社最新の電動化技術を搭載した中国市場向けに特化した電動車両を展示した。
この日、披露されたうちの2車種が電気自動車( EV )、2車種がプラグインハイブリッド車( PHEV )となっている。車種タイプはコンセプトカーの項で後述する。
なお先の通り、〝クルマの知能化〟については、中国最大の検索エンジン提供企業( 国内ネットユーザーの7割・6億人を検索シェアを持つ )の百度の人工知能(AI)技術を活用。車内の情報表示技術「スマートコックピット」分野で共同開発を検討する。
同ショーのプレスデーに登壇した日産の内田誠 社長兼CEOは、「変化の激しい中国に於いて持続的な成長を果たすため、日産は新経営計画〝The Arc( 20〜23年度計画の〝Nissan NEXT〟と、長期ビジョン〝Nissan Ambition 2030〟を繋ぐ追加計画を指す。具体的には、26年度末迄に年販売100万台・初業利益率6%超、更に30年迄に新規売上2.5兆円など )での発表通り、中国市場向けの最適化戦略に取り組みます。
本日公開したコンセプトカーをベースとして開発する新エネルギー車を皮切りに、競争力の高い多様な新車を投入することで、バランスの取れた商品ラインナップを構築します。そして、中国のお客様一人ひとりに、もっとワクワクするモビリティ体験を提供していきます」と述べた。
4車種のコンセプトカー
今回、初披露したコンセプトカーのうち、2車種の電気自動車(EV)にあたる車両は、セダンタイプの「エポック・コンセプト」と、多目的スポーツ車(SUV)タイプの「エピック・コンセプト」の2車種となる。
まず「エポック・コンセプト」は、都市や郊外の走行を楽しみ、最新のデザインとテクノロジーで、ライフスタイルを向上させたい活動的な人に向けたEVセダンであると説明した。
この「エポック・コンセプト」は、AIで機能拡張したバーチャル・パーソナル・アシスタントを備えている。車内では、バーチャルパーソナルアシスタントと感情豊かなコミュニケーションを通じて、より快適な移動空間が実現できるとした。
もう1台のEV「エピック・コンセプト」は、週末に冒険を楽しむ都市部のカップルを想定したSUVで、市街地でも高速道路でも自動運転が可能なクルマだという。車内では、キャンプ場やパーティー会場、ユーザー自身が持ち込んだ電化製品の電力供給を行い、リラックスした車室空間を演出するとした。
残りの2車種はプラグインハイブリッド(PHEV)となる。その1車種はSUVタイプ「エラ・コンセプト」は、クルマを第二の家と考える若いビジネスパーソンのためのクルマとしている。
このプラグインハイブリッドSUVの「エラ・コンセプト」には、車室内で活躍するエンターテイメントシステムと、ゼロ・グラビティシート( 独自の乗車姿勢の検証と人体筋骨格モデルを組み合わせて、筋肉と背骨の負荷が最小となる着座面形状を実現したサーポト機能付き無重力シートというコンセプトから命名された )を備えている。
加えて日産の開発陣が進化させたe-4ORCE( 4輪別々に出力調整できる電動モーター駆動の強みを活かし、個々の駆動力を自在にコントロールできる電動4輪駆動制御を指す )と、アクティブエアサスペンションも搭載。これによって快適で安心な長距離ドライブも愉しむことができると謳っている。
最後のプラグインハイブリッド車「エヴォ・コンセプト」は、先進の運転支援技術と安全性能を備えたプラグインハイブリッドのセダン。より具体的には、先のエポックと同様、AIで機能拡張したバーチャル・パーソナル・アシスタントを搭載しており、例えば週末の旅行であれば、移動中でも家族全員の特別な思い出づくりに貢献するとしている。
その他の展示車
なお今年の北京モーターショーでは、昨年のジャパンモビリティショーに出展したEVコンセプトカーの「ニッサン ハイパーフォース」と「ニッサン ハイパーパンク」も中国で初披露した。
「ニッサン ハイパーフォース」は究極のドライビングプレジャーを追求しながら、高い環境性能と日常での快適性を兼ね備えたクルマ。サーキットでの刺激を求めながら、環境意識も高いレース愛好家やゲーマーに最適化された車両となる。
またデジタル展示した「ニッサン ハイパーパンク」は、バーチャルとリアルの世界での自己表現を刺激する趣向。AIやヘッドレストのバイオセンサーで読み取ったドライバーの気分に沿って、最適な音楽や照明を自動で選択し、活力や創造力を高めるもの。
電動車でレース参加している自社の独自性を強く打ち出すべく、北京ショーでもABB FIAフォーミュラE世界選手権に参戦している日産フォーミュラEのGen3マシンを展示。自社のEV技術を示しつつ、単に静かでエコだけではないEVならではのワクワク感も、中国のユーザーに向けて訴求していきたい考えを打ち出している。
中国戦略
日産は近年、売上が大きく落ち込んだ中国市場をテコ入れするべく、「中国で、中国のために」という指針のもと、当地に於いては企業価値と競争力を高める戦略に一層集中する。
そのために中国市場での存在感を高めていくべく、「イノベーションの力で人々の生活を豊かにする」という日産からメッセージを強めるため、新ブランドキャンペーンの「Excitement by Ni」とするコンセプトワードを広めていきたい考えだ。
そもそも中国国内の顧客は若年層( 元より当地には、若年層が形成する大きな消費市場がある )を中心に、これまでのクルマの愉しみ方とは異なる全く新しいクルマ生活をイメージしている。
例えば、移動することや運転( 自動運転も含む )に関しても、旧態依然としたfun to drive( ファントゥドライブ )ではなく、移動空間内からの外部との繋がりや、エンタテインメント機能など、自宅で居る時よりも、もっと個人的なパーソナルスペース感を愉しみたいとする指向がある。
従って中国市場に於いては、知能化と電動化によるセールスポイントを中国ユーザーの日常生活を刺激したり、長距離ドライブなど、日常から離れた〝ハレの日を演出する〟パーソナライズ体験の提供に注力していく。
また、そのために先の通りで、中国国内での消費市場の開拓に長けた知能化技術技術企業とパートナーシップを結び、中国で成功したマーケット戦略を見つけることができた暁( あかつき )には、その成功を元としたAI戦略を世界市場へも活かしていきたい考えのようだ。
日産では、「変化の激しい中国市場に於いて、〝人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける〟というコーポレートパーパスのもと、知能化と電動化を更に推進し、中国のパートナーと共に、もっとワクワクするモビリティ体験をお客様に提供していきます」と結んでいる。