東京電力ホールディングスと日産自動車は、12月13日から2018年1月末まで、電気自動車(EV)を活用したバーチャルパワープラント(仮想発電所=VPP ※1)実証試験を開始する。
低炭素化社会の実現にむけた再生可能エネルギーの大量普及が見込まれる中、このエネルギーを安定的かつ有効に活用するために、分散配置された使用者側のリソースを統合制御するVPP構築事業が進められている。
VPP構築事業においては、EVについても、系統運用者の指令に従って充放電を制御(※2)可能とすることで、リソースの一つになると期待されている。
今回の実証試験には、日産の商用タイプEV「e-NV200」のモニターの東電HD社員30人と「日産リーフ」を所有する日産社員からの応募者15人の計45人が参加。
仮想EVアグリゲーターとして東電HDが、ユーザーに系統電力需要の小さい時間帯を情報提供、指定された時間帯に充電を行ったユーザーには充電電力量に応じてインセンティブが支払われる仕組みだ。
この実証試験を通じて、「一定規模のEVユーザーがどの程度の比率で充電時間のシフトを実施するか」検証を行うことで、将来EVが大量普及した際の調整力の予測が可能となり、今後のビジネスモデルの評価に重要な指標を得ることができると、両社は考えている。
また、この実証試験では、既存のシステムインフラを活用。大がかりなシステムを構築することなくEVを電力系統運用の調整力とするのが最大の特長となっている。
具体的には、EVの情報監視・制御に日産のテレマティクスシステム(※3)を、ユーザーインタフェースと情報の収集管理には充電スタンドの検索サービスアプリ EVsmart(※4)をそれぞれ活用。
これらはいずれも、現在サービスが提供されているシステムで、実証事業に参加するEVユーザーはスマートフォンにアプリをインストールするだけで、新たな装置やコスト負担なしに実証試験に参加することができると云う。
東電HDは、今後、多様な自動車メーカーの多様な電動車両に対応可能なシステムとなるよう開発を進めていくとコメント。
より調整力を高めるために、EVからの放電としてV2H(※5)など、様々な充放電装置に対応可能なシステムの開発も進めていく考えだ。
日産は、EVを活用したVPPを創造するため、実証プログラムを通じて電力会社とグローバルに提携し、新しいスマートエネルギー社会に貢献してきたいとしている。
なお、本実証試験の評価結果は、資源エネルギー庁の「平成29年度 需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業」の一環として報告される予定だ。
※1 バーチャルパワープラント:アグリゲーター(電力使用の需要量を制御し、その需要と供給のバランスを保つために、電力会社と使用者の間に立ち、バランスをコントロールする事業者)が使用者側のエネルギーリソース(太陽光発電、蓄電池、EVなど)を統合・最適遠隔制御することで、あたかも一つの発電所(仮想発電所: Virtual Power Plant)のように機能させるもの
※2 EVの充放電制御:例えば、太陽光発電の出力が大きく系統電力における余剰電力の発生が見込まれる場合は、余剰が発生する時間帯にEVへ充電し、不足電力の発生が見込まれる場合は、EVへの充電を停止するとともに、家庭へ電力を供給(放電)すること
※3 テレマティクスシステム:EVユーザーに提供している車両状態の監視、充電制御をスマホアプリで遠隔制御できるサービス
※4 EVsmart:アユダンテ株式会社が提供する充電スポット検索アプリ。EVやPHEVユーザーが長距離・長時間外出するときに、現在地周辺、あるいは目的地付近に存在する充電スポットを簡単に検索できるサービス
※5 V2H(Vehicle to Home):EVへの充電に加え、家庭へ電力供給を可能とする装置