更なる事業の投資効率の適正化、新技術への継続投資、企業文化の改革を断行
日産自動車の内田誠社長兼CEOは2月13日、横浜本社で2020年3月期第3四半期決算発表会見を開き、通期業績見通しの下方修正および改善策を発表した。北米や欧州などの「販売減少が響いた」と述べ、足元の業績を踏まえた事業再生プランとなる中期計画見直しを早急にまとめ5月に公表する考えを表明。更なる事業の投資効率適正化や企業文化の改革などを断行する方針を示した。(佃モビリティ総研・松下 次男)
通期業績見通しを2度目の下方修正へ
20年3月期連結決算の通期業績予想の下方修正は昨年11月に続き2度目。売上高を前回見通しから4000億円引き下げ10兆2千億円(前期比11・9%減)に、営業利益、当期純利益をそれぞれ650億円、450億円引き下げ、850億円(同73・3%減)、650億円(同79・6%減)の見通しに修正した。
内田社長は業績見通しについて世界市場が想定以上に厳しさを増しているのに加え、日産独自の要素として競合他社に比べ「商品車齢が古くなっている」ことを要因に掲げた。
ただし、米国などで進めている事業改革の方向性は「間違っておらず、これをぶれずに進めることが重要」と強調、2020年度から計画する新車の大幅な刷新が進めば、「業績は上向く」との考えを示した。
通期の新車販売見通しについても足元の世界市場動向などを反映し前回見通しから19万台、3・6%引き下げ、505万台(前期比8・4%減)へ下方修正した。日本で3・6%、中国で0・8%、北米で3・2%、欧州で2・6%、その他地域で10%それぞれ前回見通しから引き下げた。
北米、欧州で想定を超える販売減が響く
修正後の主要地域の通期販売計画は日本55万5千台(前年比6・9%減)、中国154万7千台(同1・1%減)、北米165万5千台(同12・8%減)、欧州55万5千台(同13・7減)。
今回の業績修正には中国で発生した新型肺炎の影響を織り込んでいない。内田社長は中国での生産再開が2月の半ば以降になることから、更なる販売台数や利益面への影響は避けられないとの見解を示した。
さらに部品調達などのサプライチェーンによる国内生産への影響についても九州工場などで2月中に2日程度の稼働停止を計画しているが、これについては3月以降に休日振替による生産を実施し、挽回する考え。
第3四半期ベースの純利益が赤字に
2019年度第3四半期累計(4~12月)の業績は売上高が7兆5073億円で前年同期比12・5%減、営業利益が543億円で同82・7%減、当期純利益が393億円で同87・6%減となった。グローバル販売台数が369万7千台と同8・1%減と落ち込んだのが響いた。
第3四半期(10~12)ベースの当期純損失は261億円(前期704億円の黒字)の赤字。このため、期末の株主への配当金は見送る予定。
内田社長はこうした厳しい足元の業績、市場環境を見据え、2022年までの中期経営計画を見直し、5月に公表する方針を示した。考え方として、仏ルノーとのアライアンスを活用しながら、「大胆な資源の集中と選択を断行する」と表明した。
2022年までの中期計画の見直しを5月に公表
2022年度までの中期経営計画の見直しは西川廣広元社長時代から着手しており、生産ライン、人員の削減、新興国でのダットサンブランドの廃止などに取り組む方針を打ち出していた。
内田社長はこれを遂行フェーズへと進展させる方針を示すとともに、想定を超える業績悪化からさらに踏み込んだ合理化策が必要との考えを表明。具体的には、更なる事業と投資効率の適正化や次世代の成長につなげるCASEをはじめとした新技術への継続投資、企業文化の改革などを掲げた。新型EV(電気自動車)についても、日本を皮切りに順次、投入拡大する方針だ。
一方、業績回復の見通しについてはこれまで19年度を底に2020年度からV字回復を目指すとしていたが、「(回復までに)少し時間がかかる」と一段と厳しさが増しているとの認識をみせた。
また、中期経営計画の見直しや事業再生を担う役割だった関潤前副COOが退社し、日本電産社長に就任することになったことについては「残念だ」としながらも、事業活動の継続はできており影響は小さいと述べた。